Project/Area Number |
23K18525
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 63:Environmental analyses and evaluation and related fields
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
原 圭一郎 福岡大学, 理学部, 助教 (10390593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 幹啓 国立極地研究所, 先端研究推進系, 特任助手 (20399356)
的場 澄人 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30391163)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
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Keywords | 海塩エアロゾル / 北極 / 海氷 / ハロゲン / フロストフラワー / エアロゾル / 季節海氷 |
Outline of Research at the Start |
地球温暖化に伴い北極海では,季節海氷域が拡大しており,季節海氷と大気間の物質交換が北極大気環境へ与える影響の理解と将来予測が求められている.しかし,季節海氷上の海塩組成分別過程,海氷域からの海塩粒子放出過程の理解は不十分であり,大気中の海塩・ハロゲンサイクルが北極域の大気環境や気候変動へ与える影響の定量的評価,北極環境の将来予測は正確に行えていない.本研究では,厳冬期の北極域の季節海氷域で現場観測を実施し,海氷上の海塩組成分別過程,海氷上から放出される海塩粒子の組成・粒径分布と風速の関係を明らかにし,モデル計算で必要となる変数・関数を明示・提供することを目的とする.
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には研究代表者・分担者が厳冬期のシオラパルク(グリーンランド)に入り,本研究課題遂行のための観測的実験であるエアロゾルチャンバー実験,海氷をくり抜きフロストフラワー形成と海塩組成分別の実験をシオラパルク周辺の海氷上で実施する予定だった.観測に使用するチャンバー資材の調達と設計を行い,使用する観測機器の調整・点検も行なった.現地でのフィールドアシスタントとして研究協力を要請した犬ぞり探検家の方が現地へ出発する前に,代表者・分担者・協力者により観測にかかる計画と予定に関する打ち合わせを行った.しかしながら,現地への機材発送の直前に研究協力者の遭難により,現地での観測作業を安全に遂行することが極めて困難な状況となった.研究分担者らと協議の上,今期のグリーンランドでの観測は断念した.その後,オンライン・対面の打ち合わせを重ね,過去に別プロジェクトによりグリーンランドで実施した類似の観測データの再解析に加え,北海道のサロマ湖上で海氷上のエアロゾルチャンバー実験を実施し,フロストフラワー・海塩組成分別過程の実験については,北海道大学の低温室・冷凍庫を使用した海水凍結の室内実験に変更することに決めた.研究遂行のための方法が変更となったが,冬季北海道の観測や室内実験でも,北極環境での進行する素過程を理解・評価することは可能であり,本研究課題遂行をする上で問題はない. 計画の変更に伴い,2月中旬~3月初めにサロマ湖上で,研究分担者・協力者らとエアロゾルチャンバー実験を実施し,非常に有効な観測データが得られた.さらに,海水凍結実験については,実験に適切な機器の仕様・構成の調査から始め,調達を実施し,実験システムとして機能することの確認まで実施することができた.また,過去にフロストフラワーを実験的に形成した経験のある研究者に実験条件やノウハウの調査も併せて行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では,厳冬期のシオラパルク(グリーンランド)周辺の海氷上で,エアロゾルチャンバー実験,フロストフラワー形成・海塩組成分別実験を実施する予定だった.現地での観測は危険な季節海氷上での活動が前提となっており,研究遂行にあたり現地に滞在する犬ぞり探検家の方にフィールドアシスタント(研究協力者)として協力を要請していた.安全な観測行動を遂行するには研究協力者の支援が欠かせない状況だったが,不慮の事故により研究協力者が遭難してしまい,現地での観測を断念せざるを得なくなった.エアロゾルチャンバー実験についてはサロマ湖上で,当初シオラパルクで実施する予定だった観測作業を実施することができたため,進捗状況は予定通りである.しかしながら,フロストフラワー形成・海塩組成分別実験については,代替えの野外観測を北海道では実施できないため,今年度は室内実験の仕様調整と動作確認のみが行えた状態であり,当初の予定と比べると若干の遅れとなっている.室内実験の場合は実験系が実環境下と比べるとシンプルな系となってしまうが,作業環境の調整や作業は野外観測と比べると行いやすいため,2年目以降に効率的な実験ができると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究活動方法は以下の2点である. (1)海氷・雪氷面からのエアロゾル放出 これまでに得られた観測データ・試料の分析を進め,海氷域から放出されるエアロゾル粒子の粒径分布と数濃度を評価することを進めていく.エアロゾル試料の分析は,走査型電子顕微鏡-X線分析装置(SEM-EDX)を用いて,個別粒子分析を行う.SEM-EDX分析は福岡大学で行う.雪氷試料については,北海道大学で主要水溶性イオンをイオンクロマトグラフで,超微量ハロゲン成分は国立極地研究所において,イオンクロマトグラフ―質量分析計を用いて実施する.気温・雪面状態が異なる雪氷面からのエアロゾル放出状況を評価するため,これまでのデータの解析に加え,再度,2-3月に冬季北海道において観測を実施する.現在の観測候補地はサロマ湖だが,より条件の良い観測場所があった際は変更する予定である.観測現場では,雪氷上にエアロゾルチャンバー実験を実施し,チャンバー内通風条件下でのエアロゾル粒径分布・数濃度の計測とエアロゾル試料のサンプリングを実施する. (2)海氷上の海塩組成分別 これまでに得られた試料の分析を進め,季節海氷上の海塩組成分別の実態を把握する.また,低温室や冷凍庫での海水凍結実験を繰り返し,海氷表面のフロストフラワーや海氷上のブラインを採取し,昇華法による前処理をした後,SEM-EDXにより各海塩の組成と分布を明らかにする.SEM-EDXは北海道大学で実施する.これにより,海水凍結・フロストフラワー形成時に進行する海塩組成分別過程と各海塩成分の局在化の詳細を評価する. これまでに得られた結果については,まとまった項目から学会での報告を始める予定である.
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