高温プロセス由来の水銀蒸気の排出制御システムの開発
Project/Area Number |
23K18529
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 64:Environmental conservation measure and related fields
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坪内 直人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90333898)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
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Keywords | 環境技術 / 環境対応 / 有害化学物質 / 表面・界面物性 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、化石資源の燃焼や廃棄物の焼却に基因する水銀の問題の解決を目指し、塩素で表面修飾した炭素質物質を用いる安価な水銀蒸気除去システムの開発を行う。初年度は提案する除去法の開発原理を確立するために必要な要素技術(高表面積・高活性サイト数の炭素質物質の調製や塩素で表面修飾した炭素ベース水銀吸着剤の製造)に関する研究を行い、最終年度は得られた結果に基づき実際の排ガス組成中での最適除去条件を明らかにする。また、水銀除去剤の再生法を確立する。最終的には、世界で最も厳しい水銀排出規制(カナダの3μg/kWh)を満足する除去技術を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
日本の鉄鋼業のHg排出ポテンシャルは、国内の総Hg排出量の30~40%%を占め、その大部分はコークス炉と焼結機の運転に基因する。そのため、環境調和型製鉄プロセスの開発には、石炭と鉄鉱石の加熱過程におけるHgの発生挙動の解明とケミストリーに基づいたHg吸着除去剤の開発が重要である。 そこで令和5年度は、鉄鉱石の加熱時におけるHgの脱離を明らかにするため、連続抽出法と昇温脱離測定の組み合わせにより、鉄鉱石中のHgの存在形態と加熱時の揮発Hg種の検討を行った。連続抽出で得られた各フラクション中のHgの存在割合は鉱石種に依存した。インドネシア産鉱石の連続抽出から得られたフラクションの昇温脱離を行った結果、水可溶なHgは低温および高温域で脱離するHg種から構成されており、少なくとも7つの種に分類された。そのうちの1形態はHgCl2である可能性がモデル化合物の昇温脱離結果との比較から推測された。一方、AcOH/HClとKClに溶解するHg種は、各々300~600℃と500~850℃の温度域に2つの脱離ピークを与えた。HNO3可溶Hg種は主に750~850℃で放出されるHgであった。HCl/HNO3可溶Hgは600~900℃で脱離し、少なくとも3種のHg種から構成されていた。上記各フラクションの昇温脱離で得られた情報から用いた5種の鉄鉱石のHg脱離挙動を波形分離した結果、いずれの試料においても950℃までに揮発するHgは大部分が水可溶Hg種であることが見出された。 本成果は、鉄鋼産業のみならず環境問題として顕在化しつつある微粉炭燃焼や廃棄物焼却からのHgの排出量極小化技術の開発やSDGsの達成に直結すると期待され、その社会的意義は非常に大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、化学的連続抽出法と昇温脱離法を高度に組み合わせる独自の手法でHgの存在状態と排出Hg形態の関係を明らかにした。このように、本課題研究は順調に進展しており、本成果は令和6年度に取り組むHg吸着除去剤開発の指針となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請者の研究に依ると、HgとClは容易に反応する。従って、炭素表面に化学的に安定なC-Cl結合を有する炭素質物質を製造できれば、既設設備では取り除けない金属HgをHgCl2として固定化できると期待できる。 そこで令和6年度は、塩素で表面修飾した炭素ベース水銀吸着剤の製造に取り組む。実験では、安価な低品位褐炭から製造した炭素質物質を既設の石英製ガス流通式固定床反応器に充填したのち、100~1000ppmHCl/HeやCl2/Heを流通させ、Clを表面にドープした炭素質物質を製造する。調製した吸着剤の性能評価には、既設の固定床と流動床反応器を使用する。焼結機ガスやコークス炉ガス中のHgの化学形態は、金属Hg、酸化水銀(HgO)ならびにHgCl2に大別されるので、反応器内に充填した吸着剤上に、Hg発生器を用いて5~100ppbの 金属Hg/He、HgO/HeおよびHgCl2/Heを流通し、出口ガスを可搬式煙道ガス水銀連続測定計でオンライン分析する。実験では温度・空間速度・Hg濃度をパラメータとして変化させる。また、実際の排ガスを模擬した雰囲気(例えばH2が50%、CH4が30%、COが5%、CO2が5%、H2Oが5%のN2バランスガス)をマスフローコントローラーで調製し、このような雰囲気下でのClドープ炭素質物質のHg吸着性能に及ぼす共存ガス成分の影響を検討する。これらのガス成分の濃度変化は、高速GC・光音響式マルチガスモニター・ガス検知管などを用いて測定し、さらに、気相中と固相中のHgの分析も推し進め、以上を総合して吸着剤の性能と寿命を決定する支配要因(例えばSO2やH2Oの濃度など)を明確にする。くわえて、石炭やバイオマスのガス化施設で発生する塩素濃縮チャーの水銀吸着剤への転換利用に関する研究も推し進める。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)