Project/Area Number |
23K18570
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 90:Biomedical engineering and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西澤 松彦 東北大学, 工学研究科, 教授 (20273592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
照月 大悟 東北大学, 工学研究科, 助教 (40821921)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | 電気浸透流 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、柔軟デバイスの局所にも適用可能な電気的な分子輸送システムを創出し、生体モジュレーション工学および細胞組織工学における、シグナル分子による制御技術を革新する挑戦である。異極性(カチオン性・アニオン性)の帯電ハイドロゲルを組合わせて用いることにより、デバイスの周辺に電流が漏出しない、電流内部ループ型の電気浸透流システムを実現する。さらに、神経筋接合部におけるシグナル分子の高速回収による初期化に倣い、ハイドロゲルの膨潤密着で形成するフレキシブルギャップ機構をを利用して、高効率な放出・回収サイクルの実現にも挑む。
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Outline of Annual Research Achievements |
微量の溶液を精密にマニピュレーション(吐出と吸引)することは、創薬のための細胞実験や、体内埋め込みデバイスによる薬剤投与など、様々なバイオ医療分野で重要な基本操作である。シリンジポンプなどを用いた外部からの圧力制御が一般的だが、昨今のバイオ医療デバイスは圧力が伝わり難い柔軟な材料で構成されるため、精密な送液制御が困難になっていた。そのため制御性に優れる電気式システムの開発が望まれており、電気浸透流(EOF)の利用は魅力的なオプションと言える。本研究では、EOFを高効率で発生するアニオン性およびカチオン性のハイドロゲルを調製し、これら両極性のハイドロゲルを接合した新構造のハイドロゲル製EOFポンプによって漏電の問題を解決した。アニオン性ハイドロゲル(PAMPS)とカチオン性ハイドロゲル(PAPTA)、および中性ハイドロゲル(アガロース)を組み合わせてシリコーン樹脂製チューブに充填してEOFによる吐出量を評価した結果、同じゲルの組み合わせでは吐出が起こらず、PAMPS/PAPTAの組み合わせにおいては片方がアガロースの場合の2倍程度の送液が起こり、期待通りの結果が得られた。PAMPSとPAPTAに発生するEOFの向きが逆であるため、イオン電流がチューブ内部をループし、接合部で同一方向の吐出が起こるというメカニズムが実証できた。さらに、柔軟な細径チューブ型ピペットを作製して性能評価を行い、一定流速の吐出・吸引が電流値で制御され、チューブを結んでも性能が変わらないことを示した。また、ヒト iPS 細胞由来心筋細胞の塊(スフェロイド)に向けて薬剤輸送を行い、自律拍動(約1Hz)への影響を評価出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アニオン性およびカチオン性のハイドロゲルに発生するEOFの向きが逆であるため、イオン電流がポンプデバイス内をループし、接合部で同一方向の吐出(もしくは吸引)が起こるという新しい送液メカニズムが確認できた。そして、柔軟な細径チューブ型ピペットを作製し、性能評価を行った結果、一定流速の吐出・吸引が電流値で制御され、チューブを結んでも性能が変わらないことを実証できた。柔軟で安定な細径チューブ型ピペットは、体内深部への薬剤送達を可能とし、ハイドロゲル電極など他の柔軟デバイスへの搭載も容易である。さらに、ヒト iPS 細胞由来心筋細胞のスフェロイドに向けて薬剤輸送を行う際、外部にも電極を設置する従来法では、電気刺激の影響を受けてスフェロイドの拍動が2倍程度に速まってしまうのに対し、新しい構造の電気浸透流ピペットでは自律拍動のままであった。これらの結果によって、外部にも電極を必要としない新型ポンプは、送液の際に脳神経や筋組織をはじめ各種細胞・組織の電気応答性(電気走性など)を刺激しないことが示された。以上の結果は、機能材料のトップジャーナル(Advanced Functional Materials)に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発した新構造の電気浸透流ピペットは、電気刺激を伴わない安全性と高い制御性、およびハイドロゲル特有の柔軟性と安定性を有する。これらの特徴を活かして、脳深部など体内局所や医療用カテーテルを通した血管内における薬剤投与、および体液サンプリングなどに広く有用だと考えられる。また、柔軟デバイスへの搭載が容易なため、コンタクトレンズからの投薬や、抗炎症剤等の徐放(少しずつ長時間放出され続けること)によって神経電極の長期埋込を支援するなど、微小液体マニピュレーションのプラットフォームとして多様な応用が期待される。今後は、これら応用の具体的な実証を進める。一方で、ここで開発した電気浸透流ポンプのメカニズムを経皮投薬パッチに展開をはかる。アニオン性およびカチオン性の多孔性マイクロニードルを組合わせ、陽極・陰極の両方から薬剤浸透を促進する仕組みを実現させることを目指す。
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