Project/Area Number |
23K18620
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郭 馳洋 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (30982996)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 章炳麟 / 井上哲次郎 / 宗教学 / 宗教批判 / 現象即実在論 / 明治哲学 / 宗教の倫理化 / 内面 / 倫理的宗教 |
Outline of Research at the Start |
本研究は清代末期の重要な学者・革命家である章炳麟(1869 - 1936)の思想と明治中後期の哲学・宗教論に焦点をあてて、19世紀末から20世紀初期の中国と日本の思想を結ぶ諸言説の動態的構造を解明するものである。思想史と比較哲学という二つのアプローチから、東アジアのみならず西洋・インドの近代思想史との関係をも視野に入れつつ、章炳麟と明治知識人(井上哲次郎、大西祝など)を取り巻く言論空間を考察するとともに、かれらの言説に通底する構造を分析したうえで、共通事象を対象化できる新たな概念を模索する。これにより、近代東アジアにおける同時代性をもつ複数の思想を捉えるための理論的枠組みの構築に寄与したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下のように研究活動を実施した。 (1)研究計画に基づき、章炳麟と井上哲次郎の哲学・宗教論を再読し、あらためて論点を整理した。とりわけ近代宗教学の成立と宗教批判およびその哲学的基礎づけ、宗教と道徳・言語の関係といった点について考察した。一次資料と先行研究への丹念で批判的な読解を通じて、新たな見解を一層明確化することができた。 (2)上記の研究成果をまとめ、中国語の論文を執筆した。査読を経て、2023年11月刊行の『章太炎研究』(章炳麟研究を中心とする中国の学術誌)創刊号に発表した。該当論文は章炳麟の哲学・宗教論を井上哲次郎の現象即実在論・倫理的宗教観と照らし合わせ、「比較」という手法の使用、人格神観念への批判、宗教の倫理化、宗教問題から言語表象問題への転換といった両者の共通点を浮き彫りにし、その背後にある宗教批判と(哲学による)新たな宗教性の構築との緊張関係を確認した。同時に、今後さらに取り組むべき課題も複数見出された。 (3)一次資料を調査していくなか、近世東アジアの学問に対する近代知識人の捉え方が、明治期のアカデミズムとりわけ宗教学・歴史学およびそれに影響を与えた近代西欧の学術と深く関連しているという事実は、章炳麟と明治思想の関係を考える上には重要であることが判明した。 (4)2024年1月、海外の明治思想史研究者を招き、東京大学でワークショップを開催した。そこで上記(2)で得た知見の一部について口頭発表を行い、参加者たちから大変有益な応答が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)予定どおり章炳麟と井上哲次郎を比較した研究の成果を海外の学術誌に発表した。 (2)海外の研究者との研究集会を開催し、そこで清代学術論と関連する明治日本の宗教学・歴史学について口頭発表を行い、その場で本研究課題にとってきわめて有意義な議論ができた。 (3)一次資料の読解・整理で予想より時間がかかったため、当初予定していた学会参加を見送ることにしたが、新しい発見につながる多くの資料を把握でき、本研究課題に関わる重要な進展が見込めるようになった。 主に上記の理由に基づき、当初の予定に若干の変更が生じたものの、本年度の研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)これまでの成果を踏まえながら、章炳麟と明治哲学における鍵概念の比較、明治・清末の学術史言説を中心に研究をさらに推し進める。研究過程で得た知見は国内外の学会・シンポジウムで口頭発表を行い、学術誌に投稿する。 (2)章炳麟と明治思想家を取り巻く言論空間をより把握するために、一次資料となる清末と明治の関連雑誌・新聞をさらに入手し、読み進めていく。 (3)章炳麟と明治仏教界のつながりを示す史料の収集・整理に取り掛かり、その成果を論文にまとめて国内外の学会で発表し、学術誌に投稿する。 (4)考察の範囲を章炳麟と井上哲次郎の周辺の知識人に広げ、近代西洋哲学と宗教論の展開をも視野に入れる。 (5)国内外の研究者と連携し、ワークショップもしくはシンポジウムを企画し、年度内に開催することを目指す。
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