Project/Area Number |
23K18652
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鄭 洲 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (70982370)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 妾表象 / 中国文学 / 家族観 / 蓄妾問題 / 中国語圏近現代文学 / 女性作家 / 自己語り |
Outline of Research at the Start |
本研究は妾の問題から近代女性文学が描いた家族の深層をえぐり出すことを目的とする。中国における蓄妾制は、民国期に法律上は消滅したものの、社会では事実上容認されていた。近代の知識人たちの多くは何らかの形で妾の問題を経験していたが、近代教育を受けた女性作家の多くは、一夫一婦という新しい道徳観が普及した後には蓄妾を恥ずべきものと考え、自らの出身家庭における妾問題に面と向かうことを避けてきた。 本研究は、蓄妾問題から中国語圏近現代文学にアプローチし、テクストの精読を通じて女性表現者と蓄妾制の複雑な関係を明らかにするとともに、蓄妾問題が文学者、さらには近現代文学にいかに影響を与えていたのかを分析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、蓄妾問題から中国語圏近現代文学にアプローチし、女性作家の内面に蓄妾の問題がどれほど深く食い込んできたのかを明らかにすることにある。本年度は、設備、資料の購入のほかに、東京の東洋文庫と国立国会図書館で資料収集と調査を実施した。主な研究成果としては、投稿論文を一本刊行し、研究会発表を二回したことである。 まずは、2023年10月の『日本中国学会会報』第75集にて、「不徹底な女たち--廬隠『象牙戒指』が描く「灰城」北京」を刊行した。本論文は、中国の女性作家廬隠の長編小説『象牙戒指』(1934)を取り上げ、舞台である北京を小説では「灰城」と呼ばれることを手がかりとして、登場人物のモデルである作家二人と廬隠との連帯を読み解き、小説に見える不徹底性と退廃性を検討したものである。五四の申し子とされる廬隠は、妻帯者と自由恋愛をし、結婚に踏み込んだ。新道徳と旧道徳の狭間を生きる廬隠は、自分をはじめ、同じ歴史の流れに置かれた女性たちの苦しみもがく姿を小説で書き留めた。 次に、同年中国文芸研究会の7月例会で、「道ならぬ恋を語る--林海音『曉雲』について」を口頭発表した。台湾女性作家林海音(1918~2001)が自らの家庭の妾事情をどのように考えるのかを問題意識とし、彼女の最初の長編『曉雲』(1959)を中心に、親世代の道ならぬ恋がいかに娘に深く影響を与えたのかについて、テクストを読み、林の内面にアプローチすることを試みたものである。 最後に、同研究会の書評の会で、2023年刊行の石島亜由美の妾に関する著書について書評を書き、口頭発表した。本書は、妾と愛人の視点から、一夫一婦制での性別規範を脱構築的に見直し、制度に潜在している構造上の問題を解読しものである。完成した書評は、『中国文芸研究会会報』第507号(2024年1月)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主軸としては、廬隠、謝冰心、凌叔華、聶華苓、林海音など一夫多妻家庭に育った女性作家の文学活動を考察することである。本年度では、主に中国近現代女性史関係図書、東アジアの家族制度・蓄妾制度関係図書の資料収集及び資料調査、論文執筆をしてきた。現段階では、廬隠について論文執筆しており、林海音については初段階の考察をした上で、口頭発表をしてきた。また、中国近現代女性史及び日本側の妾研究についての調査も行った。そのほかに、謝冰心についても資料調査をしているところである。本来の計画では、2023年度に実施する海外での資料調査は、まだ実施できてないが、2024年度の8月に実施する予定である。よって、概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度では、まずは、七月八月中に、台湾、重慶、北京などで関連作家の文学活動と資料調査を実施する。中央大学(現南京大学)について重慶と南京での資料調査に基づいて、資料不足のため途絶していた聶華苓についての論考を9月中に完成させる予定である。その後、妾の問題を中心に据えて博士論文を修正し、書籍としての出版を目指す。最後に、林海音の文学活動について論文を執筆し、投稿を行う予定である。
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