Project/Area Number |
23K18659
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大木 エリカ 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (90978678)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 日本文学 / 谷崎潤一郎 / 古典回帰 / ラジオ / JOBK / 映画 / メディア |
Outline of Research at the Start |
本研究では、1920年代後半から30年代に書かれた谷崎潤一郎(1886年-1965年)の小説=〈古典回帰〉作品を取り上げ、語りの技法・文体=〈声〉に関わる文学的実験を、同時期のラジオや映画といった〈声〉のメディアの視座から分析する。 また、以上の分析を通して、同時代における活字メディアと音声メディアの相互的な影響関係を精査するとともに、谷崎の〈古典回帰〉の内実=大衆性について検討することを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、NHK放送博物館・国会図書館・早稲田大学図書館などで1920年代後半から30年代に発表された谷崎潤一郎の文学テクストやラジオ・映画を中心とする同時代の〈声〉のメディアに関わる資料調査を行った。また、その調査内容をもとに「春琴抄」(『中央公論』48年6号、1933年6月)のラジオ化の問題について検討した。従来、「春琴抄」は「声の物語」として位置づけられながらも、島津保次郎監督の「お琴と佐助」(1935年6月)をはじめとする映画化・劇化の問題は論じられてきた一方で、ラジオとの関連については等閑視される傾向にあった。そこで、具体的には1934年12月14日にJOBK(現NHK大阪放送局)から放送された「物語 春琴抄」の台本(NHK放送博物館所蔵)と「春琴抄」の初出本文を比較し、「物語 春琴抄」の編集脚色を手がけた当時のJOBK文芸課課長・奥屋熊郎と谷崎の関係や、ラジオ放送時に語りを担当した女優・岡田嘉子の〈声〉がテクストに与える影響について分析した。そして、その研究成果を「〈声〉を取り戻す女性たち―谷崎潤一郎「春琴抄」とラジオ「物語」」(Women Recovering Their Voices: Tanizaki Jun’ichiro’s Shunkinsho; (A Portrait of Shunkin) and the Radio Adaptation “Monogatari”)と題し、早稲田大学・コロンビア大学共催のワークショップ(Columbia University-Waseda University Workshop 2023)にて発表した。「春琴抄」のラジオ化に注目することで、先行研究でも看過されてきた谷崎とラジオの関係性や、女優の〈声〉の機能といった問題点が浮かび上がり、今後谷崎の文学テクストを分析する上での大きな指針を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、NHK放送博物館・国会図書館・早稲田大学図書館などで「春琴抄」を含めた複数の谷崎の文学テクストのラジオ台本を調査することができた。今年度のうちに論文として公表するまでには至らなかったものの、「春琴抄」のラジオ化に関する研究成果をワークショップで発表するという段階までは既に達成しており、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。また、ラジオ台本を含め、谷崎の文学テクストと〈声〉のメディアの関係性を明らかにする上で重要となる様々な資料を調査できたことで、今後の研究が大きく進展することが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も引き続き、芦屋市谷崎潤一郎記念館・NHK大阪放送局・NHK放送博物館・NHK放送文化研究所・日本近代文学館・国会図書館・早稲田大学図書館などで資料調査を行い、「春琴抄」を含め、1920年代後半から30年代に発表された谷崎の文学テクストとラジオ・映画を中心とする〈声〉のメディアとの関係性についてより詳細に分析することを試みる。また、以上の調査・分析をもとに得られた研究成果を、研究論文・学術論文として発表する予定であり、国内外での学会報告も検討している。
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