宗祇の『源氏物語』注釈書群における『河海抄』享受に関する研究
Project/Area Number |
23K18662
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Nagasaki Junshin Catholic University |
Principal Investigator |
渡橋 恭子 長崎純心大学, 人文学部, 講師 (80980911)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 源氏物語 / 享受史 / 注釈書研究 / 宗祇 / 連歌師 / 河海抄 / 源氏物語不審抄出 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、『河海抄』と連歌師宗祇の注釈書・享受資料とを比較することで、宗祇がいかに初期源氏学を継承・展開したのかを明らかにする。とりわけ、諸本調査と注釈内容の検討を行い、それぞれの資料が持つ学際的な価値を明らかにすることで、宗祇による『源氏物語』注釈の営みについての新たな像を提示することを目指す。これにより、今まで見過ごされてきた各時代・各享受層における『源氏物語』享受の実態を掬い上げる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『河海抄』と連歌師宗祇の注釈書・享受資料とを比較することで、宗祇がいかに初期源氏学を継承・展開したのかを明らかにするものである。とりわけ、諸本調査と注釈内容の検討を行い、それぞれの資料が持つ学際的な価値を明らかにすることで、宗祇による『源氏物語』注釈の営みについての新たな像を提示することを目指す。まず、宗祇の注釈書の伝本調査と翻刻・校合を行う。検討対象とする注釈書は、①年立に関する注釈書(『種玉編次抄』『源氏雑乱抄』)②『源氏物語』の特定の巻に対する注釈書(『雨夜談抄』『紫塵愚抄』)③抄出本(『源氏物語不審抄出』『河海抄抄出』)である。これら①~③について伝本調査を行い、『河海抄』注記との相違点の記録・分析を通して、それぞれの性格や特徴について考察することを目指す。 ①については、『源氏物語』の年立に関する『河海抄』注の記述と宗祇の注釈書群の記述とを比較検討することで、宗祇が展開する『源氏物語』の構造・人物論に対して『河海抄』がいかなる影響を与えているのかを明らかにする。 ②については、主に『雨夜談抄』に着目することで『源氏物語』帚木巻における「雨夜の品定め」の場面に関する解釈について、宗祇の注釈と『河海抄』との関わりを明らかにする。 ③については、宗祇の源氏学の結実ともいえる『河海抄抄出』や『源氏物語不審抄出』に着目し、宗祇がいかに『河海抄』を享受・展開しているのかを明らかにする。なお、これまでの調査により、宗祇が三条西家での講釈の際に『河海抄抄出』を用いた可能性があることを明らかにしており、宗祇と三条西家との関わりについても本研究で引き続き検討を行っている。 本年度の研究成果は、国際シンポジウムでの発表など3件の口頭発表および、単著や論文2本の出版によって公表することができた。また、地域で『源氏物語』関連の講座を実施するなど、研究成果を地域社会に還元することもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、宗祇の注釈書のうち、『種玉編次抄』・『源氏雑乱抄』・『紫塵愚抄』・『雨夜談抄』・『源氏物語不審抄出』・『河海抄抄出』を調査し、『河海抄』本文との比較検討を行った。そのうえで、宗祇がいかに『河海抄』を継承・展開したのかについて検討を加えた。上に挙げた注釈書群は伝本調査が十分とは言えず、『河海抄』本文と比較する以前に、調査・翻刻など基礎的な作業が必要である。そのため、今年度は調査やデータの整理などに多くの時間をかけた。なかでも、伝本に関する先行研究の少ない『源氏物語不審抄出』について、本研究により伝本調査を実施できたことは大きな成果である。今年度の主な調査内容と研究成果は以下のとおりである。 ①『源氏雑乱抄』の伝本のうち、東北大学蔵本・吉永文庫本の検討を行った。『源氏雑乱抄』の本文や伝本調査で得た成果をデータ化し、『河海抄』の注記との比較を進めた。なお、当初予定していた『源氏雑乱抄』については、調査を大きく進めることができなかった。 ②『雨夜談抄』の伝本のうち書陵部蔵本・陽明文庫蔵本を調査し、『河海抄』注記との比較検討を行った。また、『紫塵愚抄』の伝本のうち九曜文庫蔵本・国会図書館蔵本について、『河海抄』と関連性がある部分が存することを確認し、本文データの入力や考察を進めた。 ③『源氏物語不審抄出』について、伝本調査および注記内容の検討を行った。これにより、『河海抄』の名を挙げて注記を引用する部分と「一説」などとして朧化する部分がみられた。こうした注釈態度の差異は宗祇の関心が兼良の源氏学の範囲を超えて拡大していることの表れと考えられ、次年度以降の研究を展開するうえでの大きな成果を得た。 以上により、今年度の本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、宗祇の連歌論書を中心とする連歌師たちの『源氏物語』享受に対する検討を加えるとともに、当時の源氏学との接点・影響関係を明らかにすることを目指す。とりわけ、次の4つの書を検討対象する。①『吾妻問答』②『源氏男女装束抄』③『浅茅』④『宗祇袖下』。 本研究では、まずこれらについて伝本調査を行う。そのため所蔵先である天理大学・京都大学・安田女子大学などに出向いて調査を行うことを検討している。また、必要に応じて国文学研究資料館のマイクロフィルムや紙焼写真を入手することを考えている。この結果をもとに、宗祇の連歌論書を中心とする連歌師たちの『源氏物語』享受に対する基礎的研究を加えるとともに、当時の源氏学との接点・影響関係を明らかにすることを目指す。この結果を踏まえ、『河海抄』が与えた影響に関して連歌・有職故実を中心に考察を深め、諸学問との連関の実証を行う。 また、今年度の研究成果である宗祇の注釈書・享受資料と『河海抄』との比較検討によって得た知見も、宗祇の連歌の作風や理論などに当時の源氏学がどのように活かされているのかを知るうえでのカギとなるものである。そのため、これらの検討も継続し、宗祇による初期源氏学の受容と展開の研究としてまとめる。 本研究課題の成果は、日本文学の分野での学会発表、および学術論文として公表する予定である。また、引き続き地域での講演などを予定しており、本研究で得た成果を地域社会に還元する方途を検討している。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)