Project/Area Number |
23K18672
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五月女 颯 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (30981005)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | ジョージア文学 / エコクリティシズム / ポストコロニアリズム |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ジョージア(グルジア)近代文学を論考の対象として、文学研究における新たな試みである、ポストコロニアリズムと環境批評を接続する「ポストコロニアル・環境批評」の理論的構築を目指すものである。 ジョージアの19世紀後半に活躍した作家アレクサンドレ・カズベギと詩人ヴァジャ=プシャヴェラは、それぞれ「山の作家」として知られる。本研究では、彼らが作品の舞台とした地域での「道」(街道)の有無に着目し、「道」が沿道の植民地化ないしは「開発」をもたらしたインフラであるとの仮定の下、そうした植民地状況という環境が、彼らの文学的想像にどのように影響を与えたかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主としてポストコロニアル・環境批評の諸先行研究について調査しつつ、アレクサンドレ・カズベギの文学作品についての研究をすすめた。作家の初期の作品である中短編「ぼくが羊飼いだった頃の話」についての論を進めるなかで、環境批評の有力なキーワードのひとつである「パストラル」(牧歌)に着目することが有効なアプローチであることがわかってきた。 パストラルの先行研究のなかでも特に、理論家テリー・ギフォードが提唱する「接頭語+パストラル」は、環境批評とその他の批評理論を接続するという点で、本研究にとって重要である。ポストコロニアリズムとの接続を図る本研究においても、人間と自然の調和の取れた環境の想像と、植民地主義的な支配の現実との落差を作家らがどのように捉え、表象してきたかは重要な論点となるものであると考えられる。 「ぼくが羊飼いだった頃の話」で語られるのは主としてロシア帝国により支配されたジョージアと、そこで困窮するジョージア人の羊飼い=民衆の生活であるが、他方で牧歌的な風景もまた一部で描写されており、それが作品内で有効な対照関係を作り出している。こうした戦略はカズベギの独創的なものであるというよりは、他の環境文学においても共通のものであると言えることがわかった。以上の内容を論文としてまとめ、科研費基盤研究B「ロシア・中東欧のエコクリティシズム」(21H00518) の論集へ投稿し、2024年度内に公刊予定である。 また、パストラル関連の理論を日本文学へ敷衍することも付随して試み、各種学会で口頭発表した。このような研究は幅広い視座から本研究の理論的構築を支えるものとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アレクサンドレ・カズベギ「ぼくが羊飼いだった頃の話」についての論文を発表予定であり、この点については研究が着実に進展している。また、理論的側面についても、パストラルのテーマについて知見を深め、そこで扱われる幅広い地域や時代の作品との比較が可能になりつつある、という点で今後の見通しも立ちつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
カズベギの他の作品の分析は半ばであり、今後は特に長編小説についても論考・分析を進めていくべきである。 またその先行研究についても、調査が不十分であるかもしれないが、あまり収集できておらず、体系だった批評史の存在の有無についても今後の研究課題である。 理論面については、ポストコロニアリズムと開発のテーマ(特にジョージアの「道」との関連で)が今後研究を深める必要がある課題である。
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