Project/Area Number |
23K18736
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0104:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
荒木 亮 東京都立大学, 人文科学研究科, 博士研究員 (90977620)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | インドネシア / イスラーム / 伝統文化 / 欧米近代化 / バンドゥン / レンバン / 宗教学 / 宗教法学 / 構造主義 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、インドネシアでの現地調査を通じて、ムスリムの日常におけるイスラームと非イスラーム的な価値観や行動規範の併存ないしは両立のあり方を微視的に紐解くものである。その為に、まずジャカルタおよびバンドゥンでの現地調査を実施し、日常生活全般を対象とした参与観察や調査協力者へのインタビューを通じて複数の者のライフスタイルに関する「語り」を収集する。そのうえで、こうしたデータを構造主義的な視点を援用し整理と分析をすることで、イスラームに還元して本質主義的にムスリムを理解するのではない仕方でムスリムを人類学的に把握すること、およびそうしたアプローチ方法ないしは分析枠組みを確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代インドネシアを調査研究対象地域とし、イスラームの教義と非イスラーム的な価値観との共存のあり方をムスリムの日常に着目して微視的に紐解くものである。 【文献研究】ポスト・スハルト期と呼ばれる現代インドネシアは、さらなるイスラーム化と欧米近代化、さらに伝統文化の活性化といった互いに異なるダイナミズムが同時に展開している。こうした現地の動向を把握すべく、現代インドネシアを対象としたイスラーム学や文化人類学、地域研究といった分野の最新の研究成果を精読し整理した。 【現地調査】近代化や社会の成熟化に伴って、インドネシアでも多様な価値観や行動規範が併存ないしは両立するようになった。ただし、欧米近代化や伝統文化の中には、イスラームの教義や考え方に反する価値観も部分的に含まれており、価値観の対立も現地ではたびたび生じている。そこで本研究は、インドネシアでの地方都市(バンドゥン市)とその郊外村落(レンバン県)でのフィールドワーク(2024年2月~3月)を実施し、多様な価値観が渦巻くその只中に生きる現地のムスリムの日常を浮かび上がらせることを試みた。 【研究交流】多様な規範や価値観が錯綜する状況下で、現地の人々(ムスリム)がいかなる規範意識を有して日々暮らしているのか。こうした問いを学術的により精緻なものとすべく、「日本宗教学会」や「宗教法学会」に入会し、「宗教」や「法」に関する専門的な知見を踏まえつつ上述したインドネシアの状況を整理する試みを開始した。 以上のことから、本年度は、まず多様な価値観や行動規範が併存するインドネシアの状況を文献研究に基づき巨視的に理解した。そのうえでフィールドワークを通じて現地の実情を大まかに把握することができた。さらに得られた成果を、(構造主義的な視点に限らず)「宗教」や「法」という視点からも整理する試みに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択1年目にあたる本年度(2023年度)は(1)先行研究の整理とこれまでの自らの研究状況を整理するとともに、(2)本研究の成果の一部を発表した。また(3)その内容を踏まえて現地調査を実施した。 【研究状況の整理】現代インドネシアを対象とした最新の研究成果を渉猟し、それらの精読と整理を行った。その結果、インドネシアのイスラームを対象とした研究書は多くあり、また近代化や消費文化、伝統文化の再興を取り上げた議論は既に論文等で公にされているものの、イスラームと文化的現象とを同時に論じる先行研究が少ないことが確認できた。この作業は、本研究の分析枠組み、すなわち構造主義的な視点に基づく二項対立の集積と整理という視点の有用性の明確化につながるものである。 【研究成果の発表】報告者のこれまでの研究と民族誌的データを、上述した本研究の視点から整理し直し、その内容を論文:[「「混成」という視点――宗教復興のダイナミズムを描き出すということ」『社会人類学年報(49)』]にまとめた。この作業を通じて、「さらなるイスラーム化(イスラーム復興)」と「伝統文化の活性化」とが(先行研究が記述するように)それぞれ独立して成立ないしは展開しているのではなく、現地の人々による再帰的な思考によりそれらがコインの表裏のような相関性をもって成り立つ現象であることを明らかにした。 【現地調査の実施】本研究を実行すべく、まず現地の研究協力者や調査村の住民と、調査に関する打ち合わせや意見交換を行った。そのうえで、2024年2月~3月の約3週間弱をインドネシアに滞在し、首都ジャカルタと西ジャワ州の州都バンドゥン、およびレンバン県の村落において調査を実施した。今回の調査滞在を通じて、現地のイスラームの動向、ならびに主に都市に見られる消費文化の展開や、村落社会における伝統文化の活性化に関する実情を包括的に把握した。
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Strategy for Future Research Activity |
採用2年目となる来年度(2024年度)の研究の推進方策としては、文献研究と村落での現地調査を下記の点に鑑み実施するとともに、これまでの研究成果を発表することである。 【検討課題】本年度(2023年度)の研究活動を通じて、現代インドネシアにみられる多様な価値観の併存状況を、文献および現地調査を通じて大まかに把握するに至った。ただし、本研究の目的、すなわち「イスラームの教義と非イスラーム的な価値観との共存のあり方をムスリムの日常に着目して微視的に紐解く」ことには(当初の研究計画の通りではあるが)まだじゅうぶんに取り掛かれていない。 【推進方策】上述した研究目的を達成すべく、来年度はインドネシア、とくにバンドゥン市内とその近郊に位置するレンバン県の村落での現地調査を夏(2024年8月)と冬(2025年2月)の2回実施する。調査滞在を通じて、日常生活全般を対象とした参与観察に基づくデータと、調査協力者複数名を対象としかれらのライフスタイルに関する「語り」を収集する。そのうえで、こうしたデータを構造主義的な視点を援用し整理と分析をすることで、異なる価値観や行動規範が併存や両立する現代インドネシアの実情を、ムスリム個々人を起点に、様々な二項対立が相互に関連して生成する様相として浮かび上がらせる。 【研究成果】これまでの研究成果の整理と発表を行う。具体的には、これまでの現地調査と文献研究で得られた知見やデータを、先行研究上の議論に鑑みつつ分析的に整理する。並行して、その内容を学会の研究大会や、関連する研究会で発表することを通じてブラッシュアップを行う。なお、こうした観点から、2024年6月に開催される「日本文化人類学会 第58回研究大会」にて口頭発表を行う。また、当年度が採択最終年度にあたることから、これまでの活動を総合した研究成果を論文にまとめ学術雑誌に投稿する。
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