クロスボーダーM&AとR&D投資:気候変動リスクに注目した実証分析
Project/Area Number |
23K18792
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0107:Economics, business administration, and related fields
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
飯野 佳亮 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (30977731)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | クロスボーダーM&A / R&D投資 / 気候変動リスク / イノベーション |
Outline of Research at the Start |
企業にとって気候変動リスクへの対処が喫緊の課題となっている。企業がこの問題に対処するには、R&D投資とクロスボーダーM&Aという2つの手段が有用になる。ただし、R&D投資は機動性に欠けるのに対し、クロスボーダーM&Aは過剰な買収プレミアムを支払う可能性が高いといった特徴を持つ。そのため、企業はR&D投資とクロスボーダーM&Aをいかに補完的もしくは代替的に実施するかという戦略の選択が重要になる。 本研究では、①日本企業によるクロスボーダーM&AとR&D投資の関係を分析した上で、②気候変動リスクが2つの投資行動の関係に影響を及ぼしたのかについて実証的な解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)日本企業によるクロスボーダーM&AとR&D投資の関係を明らかにし、(2)気候変動リスクが2つの投資の戦略決定に影響を及ぼしたのかを実証的に解明することである。 本年度は、データセットの構築に加えて実証分析を行った。具体的には2011年から2021年までの日本企業によるクロスボーダーM&Aのデータを用いて、R&D投資集約度が高い企業ほどクロスボーダーM&Aを実施する可能性が高いかどうかを検証した。分析の結果、日本企業では、全体として、R&D投資集約度が高い企業ほどクロスボーダーM&Aを実施する可能性が低く、2つの投資が代替的であることが明らかとなった。R&D投資集約度が高い企業は、R&D投資に特化することでクロスボーダーM&Aの実施に係るコストを回避し、イノベーション効率を高めているといえる。また、こうした傾向はパリ協定が採択された2015年以降で強かった。他方で、企業の直接的な気候変動リスクである企業個別のCO2排出量に注目すると、R&D投資集約度が高く、CO2排出量が多い企業では、クロスボーダーM&Aを実施する可能性が高まっていた。つまり、2つの投資の代替関係が弱まっていた。また、こうした傾向は化学、鉄鋼、輸送用機器、電力・ガス、といったCO2排出量が多い産業で強かった。したがって、気候変動リスクが高い企業では、成果を得るまでに時間が掛かるR&D投資に特化するのではなく、自社が保有する既存技術とクロスボーダーM&Aによって獲得した技術を組み合わせることで、迅速にイノベーション効率を高めようとしていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、クロスボーダーM&AとR&D投資に関するデータセットを構築するとともに、実証分析を試みた。分析の結果、(1)R&D投資集約度が高い企業ほどクロスボーダーM&Aを実施する可能性が低いことが明らかにされた。また、(2)パリ協定の採択を外生的ショックと見なし、2015年前後のクロスボーダーM&A実施企業と非実施企業のR&D投資を比較すると、クロスボーダーM&A実施企業ではR&D投資が減少していることが明らかにされた。他方で、(3)企業の直接的な気候変動リスクである企業個別のCO2排出量に注目すると、R&D投資集約度が高く、CO2排出量が多い企業では、クロスボーダーM&Aを実施する可能性が高まっていた。こうした結果は概ね仮説と整合的であるものの、クロスボーダーM&AとR&D投資は同時決定の関係にあり、内生性の問題を含む。現在の分析では、内生性の問題に十分対処できておらず、課題が残る。今後は内生性の問題に対処するとともに、論文の作成に当たって一貫した分析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、日本企業全体としてクロスボーダーM&AとR&D投資は代替的であるものの、CO2排出量が高い企業では2つの代替関係が弱まるという結果が得られている。今後は、内生性の問題に対処するためにプロペンシティスコア・マッチングだけでなく、システムGMMといった分析手法を用いても同様の結果が得られるかを確認する予定である。さらに、分析手法や論文の作成に当たって、海外大学の先生からアドバイスを貰う予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)