Project/Area Number |
23K18814
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0107:Economics, business administration, and related fields
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
新田 隆司 京都産業大学, 経営学部, 助教 (20980220)
|
Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
|
Keywords | バウンダリースパナー / 提携 / 両利き経営 / イノベーション / 組織間関係 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、外部の組織との提携を通じて、企業が新規事業を推進し、その事業成果の獲得にまで至る一連のプロセスを明らかにする。本研究は、そうした組織を跨いで実現される両利き経営で想定される経営課題を理論的に導出し、ネットワーク論のバウンダリー・スパナーの議論を援用しながら、上記の経営課題を克服するための知見を積み上げることを目指す。外部組織との関係性を検討する際には、バウンダリー・スパナーと呼ばれる異なる組織間を仲介する役割を担う人材が、外部組織との提携を契機とした両利き経営の実現過程において生じうる経営課題を、どのようにして解決していったのかを検討する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、総合食品メーカーX社を題材に、同社がどのようにして物流センター事業を新規に設け、そしてどのようにして事業を推進したのかを観察することで、企業が両利き経営を実践し持続的な成長を果たす過程を解明することである。 この目的を達成するために、申請者は、これまでにX社の企業家にインタビュー調査を実施するとともに、X社の内部資料も含めた定性的資料(例えば、社内情報誌、社内の会議資料、企業家の意思決定のプロセスを示す手記)を収集した。こうした資料に基づく、探索的な調査は順調に進んでおり、それと並行して本事例の考察を通じて見出された理論的仮説の検討を目指してきた。 さらに、追加的に定量データを収集した上で、事例分析をより精緻に行った。具体的には、X社の会計・ファイナンス情報に加えて、特許出願情報や業界史の製品データをもとにして、両利き経営の実現プロセスを解明してきた。また本研究内容に関して、研究会での議論を通じて有益なフィードバックを獲得しており、事例分析をより多面的に講じる必要性を実感した。 このように、本年度は、総合食品メーカーX社の新規事業推進の事例について、基本的な事例の流れを整理し、その上で分析の焦点を定めることができた。その一方で、新たに分析に加えるべき事項や、追加的に収集すべきデータが明らかとなったために、これまでの分析の射程を超えて幅広く分析を実施する必要性が生じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は、対象とする総合食品メーカーにおいて、既存事業において、開発・生産・物流・販売施策がどのように講じられてきたのか、それらは新規事業が推進された前後にどのような変容を遂げたのか、一連の全社的な意思決定のプロセスを検討してきたものの、以下のように、これまでの分析の射程を超えて幅広く分析を行う必要があると考えられる。 第1に、当該企業の事業活動に対して、異なる業界の多様なプレイヤーが関与したことが、当該企業の事業推進にも多大な影響を与えているために、異業種のプレイヤーの利害関心や問題解決の枠組みそのものにまで遡って、事例の説明に加える必要がある。分析対象となる企業が埋め込まれた外部環境そのものを分析・説明することは、本研究に着手した時から継続的に行ってきたものの、当初想定していた以上にその必要性があると判明し、データ収集・分析を追加的に進めている。具体的には、事例分析の主たる分析対象期間である、1990年代において、(大手)小売店、電機メーカーがどのような利害関心を持っていたのか、そこにどのような時代的な背景があったのかを見る。 第2に、事例分析をより多面的に行い、事業推進の過程で講じられた施策がどのように影響を与えていたのかを精緻に示す必要が生じている。具体的には、物流センターの新規事業推進前後で、X社における在庫管理施策、研究開発施策がいかに変わったのかを定量的に示す(例えば、総合企業情報データベースeol、各社新聞記事、および冷凍食品新聞社『日本の冷凍食品』を参照する予定である)。 第3に、新規事業を推進した企業家のみならず、X社で事業推進に関わった企業家に対するインタビュー調査を講じることで、事業推進の要点を把握できたものの、他の関係者にインタビュー調査を実施するには至っておらず、立場が異なる当事者からの情報を活用し、調査・分析をより精緻に進める必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの暫定的な事例の整理・分析、それと並行した理論的な問題の検討を通じて、追加的に行うべき作業が3つ見出された。第1に、総合食品メーカーX社を取り巻く関連産業・企業について情報収集並びに分析を行う。異業種のプレイヤーとの提携や相互依存関係を把握することなくして、本事例で扱うX社の事業推進過程を解明することは難しい。したがって、関連産業の情報収集を講じ、それらの産業との関連を踏まえた上で、X社の事業推進過程を明らかにしていく。第2に、会計・ファイナンス情報をはじめとするX社についての各種のデータ収集を講じる予定である。データの所在については、既に概ね把握しているため、円滑に一連のデータを分析可能な形に成形し、速やかに分析作業に移行する予定である。第3に、追加的なインタビュー調査を講じる必要がある。インタビュー調査の対象を、物流センター事業に関わった関係者のみならず、既存事業の推進に関わった他の関係者にも拡げ、多面的にX社全社としての事業推進過程を見ていく。これら3つの作業内容について、探索的に情報収集・分析を進めるのではなく、これまでの研究に基づき、必要な作業を同定した上で分析に効率的に取り組む。
|