Project/Area Number |
23K19069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0204:Astronomy, earth and planetary science, and related fields
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
西脇 瑞紀 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (90983304)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | マグマ / ケイ酸塩 / 水 / 減圧発泡 / 核形成 / スピノーダル分解 / 化学熱力学 / 界面張力 / 溶解 / 飽和溶解度 |
Outline of Research at the Start |
マグマ中の水の溶解度は、火山噴火のダイナミクスを強力に支配する重要な量であり、実験・理論の双方向から盛んに調べられてきた。しかし、溶解度や水の部分モル体積の測定値は従来の溶解度の理論式を満たさず、内部整合性が明らかに破綻している。 本研究では、従来の理論がケイ酸塩と水の理想混合を仮定していることにこの原因を求め、混合の非理想性を適切に評価することで理論式の内部整合性を確保する。これにより、実測例の少ないマグマ中の水の溶解熱の値を任意の温度・圧力で計算できるようになる。また、応用として、マグマが地下から地表へ上昇する際に、水の発泡によってマグマの温度がどのように変化するのかを数値計算で見積る。
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Outline of Annual Research Achievements |
火山噴火はマグマ中に過飽和になった揮発性成分の減圧発泡によって駆動されている。その最初期段階は長い間、核形成として説明されてきた。近年は、その代わりにスピノーダル分解 (明瞭な界面の形成を必要としない、エネルギー的に自発的な分相現象) が起こっている可能性が指摘され、注目を集めている。しかし、この新説は減圧発泡実験の実験産物の組織観察結果 (気泡数密度が減圧速度に依存しない、気泡の空間分布が均質である) のみを根拠としており、定性的な議論に留まっている。 そこで申請者は、マグマの減圧発泡においてスピノーダル分解が起こりうるのかを簡単な熱力学を用いて定量的に議論した。様々な温度・化学組成の含水マグマをケイ酸塩と水の2成分対称正則溶液と見なし、マグマ中の水の飽和溶解度の既知のデータを用いることで、それぞれのマグマについて、組成-圧力平面上でバイノーダルおよびスピノーダル曲線を描画した。その結果、いずれのマグマでも、第2臨界点より十分に低圧では、スピノーダル曲線はバイノーダル曲線よりもはるかに低圧側に位置することがわかった。また、これまでに行われた減圧発泡実験の最終圧力はすべてこれら2曲線の間に入る。このことから、火山噴火に関係するマグマプロセスの圧力範囲や現実的な減圧速度ではスピノーダル分解が起こる可能性は低く、従来通り核形成によって起こる可能性が高いことを見出した。 また、求めたスピノーダル圧力を、気泡数密度-減圧速度計において最も重要な物理パラメータである、メルト-気泡核間の界面張力の見積りに応用した。特に、非古典核形成理論に基づく界面張力の過飽和度依存性の式に代入して、従来の見積り値 (実験産物の気泡数密度と古典核形成理論による) を基準として比較したところ、この式をマグマの系に持ち込む妥当性が高いとは言えないことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的はまだ達成できていないが、突然発生した「マグマの減圧発泡においてスピノーダル分解は起こりうるか?」という面白い問題に集中的に取り組み、予想以上の成果を挙げることができた。この問題は、申請者が所属する研究室で B4 の学生向けに行われているガラス科学の教科書の輪読で得た知識に触発されて思いついたものである。近年の海外研究者たちの動向を踏まえ、この問題を優先的に解くべきであると判断した。得られた成果は火山学会の秋季大会で発表し、英文雑誌に投稿することができた。また、プレプリントを arXiv や EarthArXiv で公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた問題「ケイ酸塩と水の混合の非理想性の評価」に本格的に取り組む。手順は次の通りである。 [1] まず、従来の理論式の水の部分モル体積の項に実験によって求められた値 (Ochs & Lange, 1999) を代入する。これにより、ある圧力と基準圧力における H2O の活量係数 γ の値の比の温度・圧力依存性、すなわち混合の非理想性を明らかにし、理論式の内部整合性を確保する。 [2] 次に、Stolper の理想混合モデルの代案として、3成分非対称正則溶液 (Kakuda et al., 1994) の適用を検討する。具体的には、ある圧力とそのごく近傍の圧力数点における γ を、O (ケイ酸塩メルトの架橋酸素), H2O, OH の3成分の各モル分率、および各成分粒子間に働く七つの相互作用エネルギー w_ijk の関数として導き、連立して最小二乗法で γ と w_ijk の値を得る。 [3] この計算を広い温度・圧力範囲 (700-1200℃, 1-5000 気圧) で行い、得られた γ と w_ijk の温度・圧力依存性を定性的に考察する。 すでに [1], [2] の途中までは進んでおり、年度内の論文化および投稿・プレプリント公開を目指す。また、現在投稿中のスピノーダル分解に関する論文についても、受理を目指す。
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