Project/Area Number |
23K19113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0302:Electrical and electronic engineering and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅見 明太 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (30982847)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 太陽電池 / 電圧損失 / 全天候型 / 超格子 / 量子閉じ込め / 量子構造 / 非発光再結合 / 再生可能エネルギー |
Outline of Research at the Start |
様々な分野でグリーントランスフォーメーションが求められる昨今、車などの移動体も再生可能エネルギーで駆動させる研究がなされている。本研究では太陽電池の車載応用に向けて、曇りの日などの少ない日照量でもエネルギー変換効率が落ちない全天候型III-V化合物量子構造太陽電池の開発を行う。量子閉じ込め効果によってキャリア密度を高められる多重量子井戸を太陽電池に挿入し、少ない日射量でも太陽電池内の光生成キャリア密度を高く保つ。それによって、非発光再結合によるエネルギー損失を抑制することを目指す。また、弱い光のもとでの太陽電池におけるキャリア輸送・再結合過程の学理構築に挑戦する。
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Outline of Annual Research Achievements |
III-V族化合物太陽電池は面積あたりの発電効率が高く、設置面積の制約がある車をはじめとした移動体への応用が期待されている。移動体への応用を考えると、曇りや雨の日でも効率が落ちない太陽電池が求められる。曇雨天時でも、快晴の日を基準として、それぞれ50%、10-20%の日射量があるので、太陽電池のエネルギー変換効率が落ちなければ、特に曇りの日には十分発電できる。しかし、一般に弱い光のもとでは太陽電池のエネルギー変換効率が落ちてしまうことが知られている。通常の太陽電池では、日射量が落ちると光生成キャリア密度が減少し、キャリアに対する欠陥密度の比が大きくなり、非発光再結合による電圧損失が大きくなってしまう。そこで、量子閉じ込め効果によってキャリア密度を高められる多重量子構造を太陽電池に挿入する。採用から半年で、まず、弱い光のもとでの太陽電池の電圧損失を解析した。その結果、InGaAs/GaAsP歪補償量子構造のような、GaAsとは格子定数が異なる材料を用いた量子構造では、光照射強度の減少に対する電圧損失の増加が、量子構造を含まないGaAs太陽電池よりも大きいことが明らかになった。これは、格子定数の異なるInGaAsとGaAs、GaAsPとGaAsの界面に生じる格子定数差に起因した結晶欠陥が原因であると考えられる。そのため、InGaP/GaAs量子構造のような、GaAsと同じ格子定数の材料を用いた構造が有望ではないかと考え、InGaP/GaAs量子構造太陽電池を試作した。その太陽電池の電圧損失の照射光強度依存性を調べたところ、GaAs太陽電池よりも弱い光のもとでの電圧損失の増加割合が小さいことが明らかになった。InGaPはGaAsと格子定数が同じため、界面結晶欠陥を少なく保ったまま、量子閉じ込めによる発光再結合の促進を実現できる。この成果は国内学会と国際学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用から半年の期間で、まずは量子構造太陽電池における電圧損失の照射光強度依存性を定量的に示すことができた。InGaAs/GaAsP量子構造では界面欠陥に起因した非発光再結合中心が問題となることが明らかになった。その問題をGaAsと格子定数が同じInGaPを用いることで解決しようと試みている。InGaP/GaAs量子構造を用いることで、電圧損失の光照射強度依存性を小さくすることに成功した。しかし、電圧損失の絶対値を小さくすることには成功していない。これはInGaPとGaAsの最適な結晶成長温度が異なるためであると考えている。この結晶成長の問題は研究計画の段階では想定していなかったが、本研究はおおむね順調に進んでおり、次項目の「今後の研究の推進方策」にしたがって、研究を進めることで、本研研究計画は遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
キャリア密度と非発光再結合の関係を調べるためには、量子構造における光吸収を正確に測定する必要がある。この測定については、共同研究を行っているオーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)を研究代表者が訪問し、UNSWにある特殊な光吸収測定装置を用いて行う。また、量子構造における発光には電界依存性があるはずであり、印加電圧を変化させながら、PL発光強度を測定することで、その効果を明らかにしたいと考えている。また、InGaP/GaAs量子構造の結晶成長最適化も行う。これまでの研究の知見から、InGaPの最適結晶成長条件に合わせてInGaP/GaAs量子構造を成長すれば良いと考えている。その際、InGaPとGaAsの界面に生じるInGaAsP4元混晶には注意する必要がある。このInGaAsPは、GaAsよりもバンドギャップが小さくなることが多く、キャリアをトラップする原因や結晶欠陥として振る舞うことがある。そのため、InGaP/GaAsを成長する際のガススイッチングシーケンスを工夫する予定である。具体的にはInGaP上にGaAsを成長する際に超極薄のGaAsPを成長することを考えている。GaAsPは極薄(1nm以下)かつP組成を5%以下にすれば界面欠陥の原因にはならないと予想している。本方針に従い、本研究計画を進め、全天候型太陽電池の開発を遂行する。
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