Project/Area Number |
23K19125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0302:Electrical and electronic engineering and related fields
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
李 恒 中央大学, 理工学部, 助教 (70980142)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 光熱起電力効果 / 広帯域電磁波・光計測 / 非破壊検査 / フレキシブル・ストレッチャブルエレクトロニクス |
Outline of Research at the Start |
ヒトとモノが垣根無く繋がる現代社会において,非破壊検査技術に期待される役割は増加の一途を辿っており,それに伴い光熱起電力効果を用いた超広帯域な電磁波・光撮像技術が注目を集めている.これを受け本研究では,多機能非破壊検査技術としての潜在能力に富む「カーボンナノチューブ膜を用いた光熱起電力効果型の電磁波・光撮像素子」に着目する.具体的には材料物性と素子性能との相関関係を体系的に紐解くことで,用途に応じた設計原理を可視化する.中でも撮像素子動作に必要な低雑音化と,小型無線式の信号処理に必要な高起電力化の観点で,本研究が潜在的に志向する検査技術への応用に向け,非破壊撮像素子としての遠隔制御を実現する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高純度に半導体分離されたカーボンナノチューブ(CNT)膜を対象に,化学的キャリアドーピング手法を中心に体系的な組成設計を行うことで,従来のCNT膜型光センサ素子の応答・雑音トレードオフの打破に取り組む.更にこれらのトレードオフの打破を通じて,CNT膜型光センサの遠隔駆動および非破壊検査応用へと展開させる.2023年度の研究では,組成設計の土台としてCNT膜型光センサの基礎的な素子作製工程の確立と出口戦略(非破壊検査)の策定に注力した. まず初めに高純度に半導体分離されたCNT分散液を扱うにあたり,液体材料ならではの高い歩留まりの素子作製手法を検討した.代表者は室温・待機暴露下での液体加工手法として,スクリーン印刷法の導入を進めた.分散液としての取り扱いが可能なCNTに加えて,光センサとしての応答信号の読み出しを担う電極配線部分には樹脂混合型の銀粒子ペーストを,受光界面の形成用には水溶液型のケミカルドーピング液をそれぞれ割り当てることで,素子全体を液体材料から構成することが可能となる.代表者は上記の点に着目し,美術分野での古典的手法である版画印刷に着想を得て,基板シート上に各種液体材料を刷り込むスクリーン工程でのCNT膜型光センサの作製実証に成功した.本助成の最終的なゴールとしてはCNT膜型光センサに対して網羅的・体系的な条件の下で化学キャリアドーピングを施す必要がるが,2023年度に確立したスクリーン印刷法により高い歩留まりと高い精度での比較検討を行う下地を整えることができた. 更に並行してCNT膜型光センサの遠隔駆動制御を達成した後の出口戦略を見据え,非破壊撮像検査手法の精査にも取り組んだ.可視光域で対象の外形推定手法として扱われていた視体積交差法に対して,代表者はCNT膜型光センサの可動域であるミリ波から赤外へ拡張し,透視式で材質同定型の構造復元を実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は主にCNT膜型光センサの大面積量産加工手法の確立と非破壊検査技術としての出口戦略の策定を達成し,本助成中の出の位置付けとしてはおおむね順調に進展していると言える.これら2つの主要な成果における学術的な新規性として,前者に関しては薄く柔らかい材料特有の異種材料接合部位での機械的強度の低さを克服する形で大面積量産へ展開した点が挙げられ,後者に関しては対象の外形推定に留まっていた画像情報工学分野でのコンピュータビジョン(視体積交差法を含む)技術を透視式での材質同定に適するミリ波から赤外の長波長光域へ拡張した点が挙げられる. まず前者について,代表者のCNT膜型光センサを含め従来の薄膜柔軟デバイスの作製においては,電極配線形成としてのゴム状の銀粒子ペースト焼成時の体積収縮がもたらす隣接材料への引っ張り歪と断線が長年の間にわたり課題視されていた.代表者は確立したスクリーン印刷法が各種液体材料を非常に強固な密着度で基板材料へ刷り込むことができる点に着目し,センサ部であるCNT膜と電極配線部である導電ペーストとの接触界面での機械的強度の向上に成功し,素子導通の観点で100 %の歩留まりを達成した. 次に後者について,CNT膜型光センサを含め一般的な撮像素子による計測では,得られる非破壊画像において対象物の奥行方向への三次元構造を高精度に復元することは困難とされてきた.一方で三次元構造復元への応用が期待されるコンピュータビジョンの利用は可視光域に限定されており,ヒトの眼で見える通りに対象の外形部分の推定が中心であった.代表者はミリ波から赤外計測での検査用途での非破壊画像計測と,コンピュータビジョンの活用状況とのギャップを埋めるべく,スクリーン印刷されたCNT膜型光センサによる視体積交差法での材質同定・構造復元の実証に成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に確立した基礎部分と出口戦略に支えられ,2024年度は化学的キャリアドーピング手法を中心に高純度に半導体分離されたCNT膜型光センサの網羅的・体系的な組成設計を進めていく.またそれらを通じて,ミリ波・テラヘルツ・赤外・可視光と非破壊画像計測に有用な全体域での光計測において,常時700 μV以上の検出応答出力信号を発揮するCNT膜型光センサの動作実証へと繋げていく. 化学的キャリアドーピング手法としては,n型およびp型の双方からのアプローチにより取り組む.特にCNT膜は元来p型材料であるが,ミリ波・テラヘルツ・赤外帯といった長波長光においては自由キャリアによるバンド内遷移が主要な吸光メカニズムであるため,銀トリフルイミドを主成分とするp型の化学キャリアドーピングを施すことにより吸光率の更なる改善へと繋げていく.n型ドーピングに関しては環状のクラウンエーテル高分子と水酸化物との混合溶液をCNT膜上に滴下することになるが,環状構造と補足対象のカチオンとのサイズ整合が極めて重要な役割を果たすと考えられる.そこでCNT膜へのn型ドーピングの実施においてはクラウンエーテルと水酸化物の組み合わせを複数条件において用意し,光センサとしての性能に繋がる吸光率・電気抵抗・ゼーベック係数といった個々の物性パラメータに対する影響度を定量的に評価する. 上記の構想に沿い,単一のCNT膜チャネル上に半領域ずつp型・n型の化学キャリアドーピングを施し,条項界面であるpn接合部でmVオーダーの長波長光検出応答を小型無線遠隔回路により制御する.これらの材料加工・素子実装工程は2023年度に確立したスクリーン印刷により実施し,同じく2023年度に確立したミリ波~赤外での視体積交差法イメージングに対する本素子の無線遠隔操作での適応性についても併せて検討予定である.
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