Project/Area Number |
23K19160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0304:Architecture, building engineering, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 健太郎 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (30982805)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 剛体折紙 / 分岐現象 / 微小変形モード / 自己折り可能性 / 折紙ハニカム / 変形経路 / 幾何学的非線形解析 |
Outline of Research at the Start |
本研究は「剛体折紙」という面を変形させずに折ることのできる構造物の「折り動作」による変形特性を,幾何学的条件と力学的条件を組み合わせた独自の視点で解析・評価し,特定の変形経路を再現性高く誘導する新たな手法を提案することを目的とする。複雑な制御なしには一意に定まらないことが多い剛体折紙において,「単純な制御で特定の経路過程のみを生じさせることは可能か?」という問いに対して解を与え,剛体折紙を応用した施工の容易なシェルターや,特徴的な意匠をもつ可動構造物の提案に寄与する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は多自由度剛体折紙の各変形状態での変形メカニズムの分岐や力学的観点からの変形の評価を行うために,高次の微小変形メカニズムを考慮した解析を実施した。また,変形メカニズムの特異点に関する検証を進める中で,平坦でない折り状態で非自明な特異点をもつ剛体折紙を応用した構造物を発見し,その変形特性を検証した。 高次の微小変形メカニズムを考慮した解析では,panel-pinモデルという剛なパネルを頂点でピン接合した数理モデルを用い,重力下で誘導される微小変形モードおよび大変形経路を解析した。パネルの並進と回転変位に関する非線形な適合条件式の線形近似から得られる1次の微小変形メカニズムに適合条件式の2階微分より得られる2次の微小変形メカニズムの存在条件を課すことで大変形を生じる可能性の高い微小変位の方向を探索した。平面に展開された状態で外周をピンまたはローラー支持した吊り下げモデルにおいて2次のメカニズムの存在条件のもと,重力を考慮した全ポテンシャルエネルギーの1次のメカニズム方向の変化量を最小化し,重力下で生じる可能性の高い順に変形モードを得た。さらに,同様の例において初期不整によらず高い確率で特定の剛体折り経路を生じるような折線パターンを得る最適化問題を定式化し,近似的に自己折り可能な剛体折紙構造を得た。 非自明な折り状態で特異点をもつ構造物として,直角二等辺三角形8個を環状につないだユニットをグリッド状に接続した平坦折り可能かつ剛体折り可能なハニカム状の構造物を提案した。3×3以上のユニットを接続した場合,すべての折線の折り角が等しい特異状態で2自由度,その他の非平坦状態で1自由度の変形メカニズムをもつ。特異状態における2自由度のメカニズムのうち,1自由度は剛体折りによる大変形を生じるが,もう1自由度は面の変形無しには大変形を生じないことを数値計算で確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
剛体折紙の高次のメカニズムを考慮した変形経路の分岐可能性の評価に関する研究において一定の成果を得て,研究計画の「安定的な追跡手法の開発」と「特定経路を常に生じる剛体折紙構造の提案」に向けた基礎的な知見が得られた。2次のメカニズムと重力を考慮した1次の微小変形モードの探索に関する成果は国内学会で発表済みである。さらに,重力下で初期不整によらず高い確率で特定の有限経路(大変形経路)を生じる折線パターンを得るための最適化手法に関する研究成果について,2024年7月にオーストラリアで開催される折紙の国際学会8th International Meeting on Origami in Science, Mathematics, and Educationで発表するためabstractを投稿し,採択された。一方,有限変形を生じる方向に対して力学的に変形の生じやすさを評価する定量的な指標の確立には至っておらず,上記研究成果のさらなる検討が必要である。 非自明な変形メカニズムの特異点をもつハニカム状の剛体折紙構造については,当初の計画には入っていないものの,自明な特異点として知られている平坦状態以外の特異点をもつ例として重要であると考える。この構造物の基礎的な変形特性に関する解析結果を2024年8月にスイスで開催される国際学会International Association for Shell and Spatial Structures Annual Symposium 2024にて発表するためabstractを投稿し,採択された。さらに,当該構造物の詳細な解析結果をとりまとめ,広く発信するために国内・国際学術専門誌への論文投稿を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
有限変形を生じる可能性の高い微小変形メカニズムの重力等の力学的な観点からの定量的な評価指標の確立のために,令和5年度に得られた研究成果を理論的・数値的にさらに検証する。厳密な剛体折りのなかでとり得る変形状態の解空間の分岐は高次の微小変形メカニズムの存在条件により決定され,分岐したいずれの解空間内の変形経路を実際に辿るかは分岐点からの不整に応じて決定されることが期待される。一方,分岐した各解空内での経路は1自由度メカニズムの場合を除き,力の釣合などの付加的な条件を考慮することで一意に定めることができる。したがって,2次の微小変形メカニズムの存在条件と初期不整の関連性の定量的・定性的評価を進めるとともに,初期不整と外力の変化によって剛体折りの変形経路はどのような影響をうけるのかを解析,検討する。この知見を適用し,本研究の目的である変形特性の判定・評価法,変形経路の安定的な解析手法,および特定の変形経路を常に生じる剛体折紙構造とその制御の設計手法を提案する。 さらに,令和5年度に発見した非自明な特異状態をもつ折紙構造物のさらなる解析と実構造物への適用可能性の検討,および異なる形状をもち類似した変形メカニズムをもつ構造物の探索を数値計算および模型作成によって行うことで,当初の研究計画の範囲にとどまらない,特異な変形メカニズムをもつ剛体折紙を応用した構造物の提案につなげる。
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