Project/Area Number |
23K19166
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0304:Architecture, building engineering, and related fields
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
菅野 颯馬 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (40979796)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 施設園芸 / 脱炭素 / シミュレーション / 熱負荷計算 / 再生可能エネルギー |
Outline of Research at the Start |
日本の施設園芸の面積は43,220 ha(2018年)と世界第4位の規模であり、特に燃焼式暖房により年間618万トンのCO2を排出している。2050年までの脱炭素化の実現のために施設園芸分野での取組みが必須である。施設園芸では、ヒートポンプ式の冷暖房機や、太陽光発電やバイオマス発電の導入、外皮性能の向上により、省エネ化や低炭素化が可能である。一方で、それらの技術の普及には、評価体系の確立とゼロ・エネルギー化や脱炭素化を実現するための設計要件の明確化が重要である。本研究の目的は、施設園芸のゼロ・エネルギー化や脱炭素化を実現するための設備や外皮性能の条件を計算により明らかにすることである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、施設園芸のゼロ・エネルギー化やカーボンニュートラル化を実現するための建築や設備の条件を、温室の熱収支等に基づいたエネルギー消費量の計算により明らかにすることである。2023年度は、建築物の省エネルギー性能や再生可能エネルギー導入を評価するZEB(net Zero Energy Building)、ZEH(net Zero Energy House)の評価手法に準じ、施設園芸温室に関するZEG(net Zero Energy Greenhouse)と農場に関するZEF(net Zero Energy Farm)の定義や評価手法を開発した。ZEBやZEHの定義に倣い、温室の年間一次エネルギー消費量・生成量に応じて、段階的なラベリングを行うものとした。今後、評価の基準となる一次エネルギー消費量を、温室の規模や作物、気象条件等に応じて適宜定める必要がある。2023年度はZEGとZEFの定義に関する査読付き論文が、日本建築学会技術報告集に採択された。さらに本年度は、温室の熱収支計算に基づいた一次エネルギー消費量等を計算するシミュレータの開発を始めた。被覆資材やカーテンの光学特性、設備機器の運用、窓やカーテンの開閉運用、隙間換気、地中伝熱、植物の蒸散等を複合的に考慮できるシミュレータとした。基準となる従来型の温室の一次エネルギー消費量を計算した上で、評価対象温室の一次エネルギー消費量および生成量の比を計算することで、ZEG達成度の段階的な評価に用いることを目的としている。これを用いてZEGを達成するための建築や設備の要件を分析する。2024年度までに、実際の温室における室内環境やエネルギーの測定データと比較したシミュレータの精度検証を行うことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に以下の成果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。 1) ZEGとZEFの評価手法の開発 施設園芸温室に関するZEG(net Zero Energy Greenhouse)と農場に関するZEF(net Zero Energy Farm)の定義や評価手法を開発した。本研究において、施設園芸のゼロ・エネルギー化やカーボンニュートラル化を実現するための建築や設備の条件を検討する際の評価基準となる。査読付き論文(日本建築学会技術報告集)への採択や、空気調和・衛生工学会大会での2件の発表などの成果が得られた。 2) 温室・農場の一次エネルギー消費量、CO2排出量を計算するシミュレータの開発 施設園芸のゼロ・エネルギー化やカーボンニュートラル化を実現するための再エネ設備の導入条件を検討するためのシミュレータであり、本研究の根幹となる部分である。研究開始当初よりも、より詳細に温室の保温・遮光カーテンの運用や換気の状況を再現可能な方法を検討している。建築分野で広く用いられるエネルギーシステムシミュレーション『TRNSYS』および拡張機能『TRNFlow』をベースに開発を進めた。既に被覆資材やカーテンの光学特性、設備機器の運用、隙間換気、地中伝熱の計算が可能になっており、全体の60~70%程度が完成していると考えられる。開発中のシミュレータを用いて、被覆資材の複層化(被覆資材1枚に対して、保温カーテンを1枚または2枚の追加)が年間暖房一次エネルギー消費量に与える影響を評価したところ、既往研究と同様の熱負荷の削減効果が確認された。2024年度までに、シミュレータの開発と平行して実際の温室での環境やエネルギーの測定データを用いた精度検証を行う計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は主に以下の課題に取り組む。 1) 施設園芸の一次エネルギー消費量計算の精度検証実験とシミュレータの改良 開発した温室の年間一次エネルギー消費・生成量やCO2排出量の計算手法を、実験により精度検証する。HP式冷暖房機や太陽光発電設備、波長選択型フィルムを導入した温室において、冷暖房や自然換気システムを運用する。温室内外の温湿度や日射量、エネルギー消費・生成量を年間を通して計測する。実験に用いた温室を再現した3次元モデルを作成し、気象データ、外皮の物性や換気回数、HPの成績係数や部分負荷特性、太陽光発電の容量や発電効率などを入力した上で、一次エネルギー消費・生成量を計算する。実験データとの比較により計算手法の精度を検証し、シミュレータを改良する。 2) 数値計算による温室のゼロ・エネルギー化、脱炭素化に必要な要件の分析 開発したシミュレータを用い、施設園芸のゼロ・エネルギー化やカーボンニュートラル化の実現に必要な設備要件や外皮性能を明確化する解析を行う。地域(気候区分)、外皮の物性、設備条件(HPの性能等)、昼夜間の制御温度、太陽光パネルの容量などを変数とした総当り計算により、入力条件の組み合わせごとに、温室の一次エネルギー生成・消費量やCO2排出量、敷地内外に配送・逆送される電力量を算出する。一次エネルギー換算係数やCO2排出係数は改正省エネ法や最新の情報を反映して入力する。これにより、気候区分や作物ごとに施設園芸のゼロ・エネルギー化や脱炭素化の達成に必要な設備の条件が明確化される。また、作物の収量やエネルギーコストを併せて計算することで、既存温室の設備更新の経済的な評価や、再エネ設備の導入に関する補助金の政策評価も可能とする。
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