Project/Area Number |
23K19189
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0401:Materials engineering, chemical engineering, and related fields
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
伊東 達矢 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 博士研究員 (90985293)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 鉄鋼材料 / 水素脆化 / 中性子回折実験 / 極低温環境 |
Outline of Research at the Start |
水素社会の実現とインフラ整備のため、室温から液体水素温度(20K)までの幅広い温度で強度・延性に優れた信頼性の高い鉄鋼材料が求められている。しかし、極低温環境において水素が変形に対してどのような影響を与えるのか、詳細は明らかとなっていない。本研究では、J-PARCの工学材料回折装置「匠」を利用した変形中のその場中性子回折実験を行い、水素を添加した鉄鋼材料の変形メカニズムを明らかにするとともに、室温から極低温まで優れた機械特性を有する新規鉄鋼材料の開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
水素インフラ整備のために、室温から極低温 (液体水素温度:20K)までの水素環境において、機械特性に優れた鉄鋼材料が求められている。本研究は、J-PARCの工学材料回折装置「匠」を利用した変形中のその場中性子回折を行い、水素を添加した鉄鋼材料の変形メカニズムを明らかにするとともに、室温から極低温まで優れた機械特性を有する材料の開発を目指す研究である。 2023年度は、水素添加により強度・延性がともに向上すると報告されているSUS310Sを用いた研究を遂行した。高温・高圧の水素ガス下で試料内部に均一に水素チャージを施した試験片を用意し、室温から20Kまで「匠」を用いた引張試験中その場中性子回折実験を行った。得られた応力・ひずみ曲線より機械特性を、中性子回折パターンより変形メカニズムの評価を行った。具体的に、得られた中性子回折パターンより、体積変化、格子ひずみ、積層欠陥密度、転位密度、双晶変形開始応力・ひずみを評価した。更に、電子顕微鏡を利用した組織観察を行い、中性子回折実験との整合性を確認した。 2023年度は、室温での研究結果を基に成果発表を行った。一般的に、水素は積層欠陥エネルギーを著しく低下させると考えられてきたが、本研究において、SUS310Sでは変形中の積層欠陥密度に対して水素の影響がほとんどないことが明らかとなった。更に、水素が双晶変形を促進するとこれまで考えられてきたが、水素による双晶誘起応力への影響は小さく、固溶強化による流動応力の上昇が双晶開始ひずみを小さくし、あたかも双晶変形を促進しているように見えることを明らかにした。以上の研究から、「匠」によるその場中性子回折実験が水素チャージ材の変形メカニズムを明らかにするのに有用であることを示すとともに、従来の考え方とは異なる視点を供した。更に、20Kまでの実験を遂行し、温度依存性を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度は水素チャージを施したSUS310Sにおいて、室温から極低温までの機械特性および変形メカニズムの温度依存性を評価した。その場中性子回折実験が変形メカニズムの理解に有用であることを示し、温度依存性に関する実験を完了することが出来たことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、SUS310Sの極低温までの実験結果をまとめて報告するとともに、計画通り組成の異なる試料に対して調査を行う。具体的に以下の2点について研究を行う。
1. SUS310Sの極低温までの温度依存性について詳細な解析を行い、発表する。2023年度発表を行った室温における研究成果より、水素はSUS310Sの積層欠陥密度や双晶誘起応力に対してあまり影響を与えないことが明らかとなった。温度を変えると積層欠陥エネルギーや双晶誘起応力が変化する。従って、極低温までの系統的な解析結果が変形メカニズムに対する水素の影響を明らかにするのに非常に重要である。2023年度に行った実験結果を更に精緻に解析し、極低温までの変形メカニズムを明らかにする。 2. 組成の異なるSUS316Lについて極低温までの実験を行う。本合金は室温近傍において耐水素脆性を有することから、広く水素インフラに適用されている材料である。しかし、低温においてマルテンサイト変態を生じ、水素脆化の影響を受けることが知られている。そこで、室温から極低温までのその場中性子回折実験を行い、マルテンサイト変態を伴う変形メカニズムに対する水素の影響を明らかにする。これらの結果をSUS310Sの研究成果と比較し、組成の影響を明らかにするとともに、合金設計指針の構築を目指す。
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