Project/Area Number |
23K19204
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0402:Nano/micro science, applied condensed matter physics, applied physics and engineering, and related fields
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
川口 晴生 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (10983439)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 光渦 / レーザー加工 / 水中レーザー加工 / 螺旋構造 / 軌道角運動量 / 流体渦 / 微細加工 / フェムト秒レーザー / 流体力学 |
Outline of Research at the Start |
光渦の軌道角運動量は物質を回す・ねじるなど新たな次元の物質操作を可能にした。これら光渦の軌道角運動量による物質操作を流体渦のような局所的な液体の流れ制御に拡張できないだろうか。この着想が実現すれば、高速で精緻な液体の流れ操作が可能となり、能動的乱流制御、超分子やキラル結晶化の高度な構造設計など、分野を跨いだ広範な波及効果が見込める。 本研究では「光渦の軌道角運動量によって液体の局所的な流れを力学的に操作できるか?」という未踏の物質操作を実現するための第一段階として、レーザー誘起周期構造形成を介して光渦の軌道角運動量を液体へと転写し、固液界面に発生する流体渦の力学的制御とその可視化に挑戦する。
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Outline of Annual Research Achievements |
螺旋状の波面を持つ光渦は微小な物質をビーム断面内に公転運動を誘起する「軌道角運動量」を持つ。光マニピュレーション技術は光渦の持つ軌道角運動量によって、液体中で粒子を回す・ねじるといった操作自由度を獲得し、金属螺旋構造体創成など液体の質量移動による変形に立脚した新たな物質の構造秩序化現象を開拓した。このような光渦の軌道角運動量による液体操作を液体の局所的な流れや流体渦の制御に拡張できないだろうか。 本研究の目的は「光渦の軌道角運動量によって流体渦などの液体内部の局所的な流れの力学的な操作を実現する」ことである。液中フェムト秒レーザーアブレーションによるレーザー誘起周期構造 (Laser Induced Periodic Surface Structure: LIPSS)形成過程に注目し、光渦の軌道角運動量による「流体渦」の制御と可視化に挑戦する。この着想が実現すれば能動的乱流制御や化学反応制御などその波及効果は計り知れない。 本年度は水中光渦レーザー加工時に発生する流体渦の実験的な可視化に向けて、レーザー加工光学系を構築するとともに、タングステンとシリコン二種類の材料について、大気中、水中の場合における光渦加工特性の比較を行った。光渦加工では、アブレーション閾値が2倍以上高くなった一方で、LIPSS形成閾値はほぼ同程度と、Gaussianビームとは大きく異なる加工特性を示すことを明らかにした。 また、従来LIPSS形成過程では光渦の軌道角運動量は転写されないと言われていたが、水中光渦加工で特異点近傍では周期構造に軌道角運動量の向きと一致した方向の湾曲が生じることを見出した。この結果はフェムト秒光渦加工過程において軌道角運動量が物質に転写された結果である。以上のように本研究の目的である軌道角運動量による液体媒質中の流体渦の配向制御と可視化のために必要な基本的な加工特性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は主に水中光渦レーザー加工による基本的な加工特性の調査を行った。 タングステンに関しては光渦レーザー加工を行ったという先行研究がなかったため、初めに加工条件を決定するためパルスエネルギー、パルス数、集光スポットサイズに対する空気中でのレーザー加工特性の調査から行った。加工特性は光渦とGaussianビームの他、1次光渦と同様の円環プロファイルを持ちながら軌道角運動量を持たない偏光渦について検証を行った。光渦とGaussianビームでは軌道角運動量の有無以外にも二次元的なビームプロファイルも大きく変化し単純な比較は難しいため、軌道角運動量の比較という目的達成のために偏光渦レーザーの利用は有用であることを確かめた。 しかし、空気中でのレーザー加工特性の検証が終わり、水中加工を開始した8月頃にレーザーが故障してしまったため実験を停止せざるを得なかった。その間はタングステンの光渦レーザー加工特性に関する結果をまとめて論文化したが、1月頃にレーザーが復旧するまで加工実験は実施できない状況が続いた。現在はすでに実験を再開しており、タングステン、シリコンについて水中光渦レーザー加工の基礎的な加工特性を検証している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、タングステンとシリコン2種類の材料について、水中における光渦レーザー加工特性を調査している。Gaussianビームによる水中LIPSS形成で流体渦がシリコン基板に螺旋穿孔を促すという実験事実(Opto-Electronic Adv. 5(2), (2022))を参考に、光渦レーザー照射によって誘起される流体渦の配向確率の軌道角運動量による制御を試みる。流体渦の配向はにレーザー加工表面に発生する螺旋穿孔の発生確率と配向分布から評価する。 また、これと並行して流動現象の直接的な可視化にも挑戦する。これは本年度予算で購入した蛍光ナノ粒子によって、粒子流れから加工時の液体の流れを直接可視化する。当初はポンププローブ計測による可視化を考えていたが、流体渦の発生は確率的な現象でありショットごとの再現性が低いためポンププローブ計測には向いていない。まずは通常のカメラによる測定により流体渦が最も発生しやすい位置と時間を特定することで、流体渦の発生メカニズムを理解し、および物質への光の軌道角運動量の転写という未解明な現象の本質に迫る。
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