Project/Area Number |
23K19209
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0403:Biomedical engineering and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
幅 大二郎 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (40980503)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 難治性創傷 / 物理的セノリティクス / 細胞老化 / 創傷治癒 / 局所低周波振動刺激 |
Outline of Research at the Start |
創傷の難治化要因の一つに、加齢に伴う細胞老化により蓄積した老化細胞が、慢性炎症を誘発し創傷治癒を阻害することが挙げられる。これまでに、局所低周波振動刺激が慢性炎症を改善し創傷治癒を促進させ、それに先立ち老化マーカーの遺伝子発現が減弱していることを見出した。そこで局所低周波振動刺激が老化細胞を除去し、炎症を抑制することで創傷治癒が促進するのではないかと着想した。しかしこれまで、局所低周波振動などの物理的刺激による老化細胞除去の報告はなく、そのメカニズムや臨床適応のための至適な振動条件は明らかでない。そこで本課題では局所低周波振動刺激による老化細胞除去メカニズムおよび至適条件の解明に挑む。
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Outline of Annual Research Achievements |
創傷の難治化要因の一つに、加齢に伴う細胞老化により蓄積した老化細胞が、慢性炎症を誘発し創傷治癒を阻害することが挙げられる。これまでに、局所低周波振動刺激が慢性炎症を改善し創傷治癒を促進させたことから、局所低周波振動刺激が老化細胞を除去し、炎症を改善したことで創傷治癒が促進するのではないかと見出した。また、滲出液中にも老化細胞が存在し炎症を惹起していることから、本研究では高血糖ラットの組織および滲出液中の細胞におけるLLFVの細胞老化抑制効果を検討した。 高血糖を惹起させたSprague-Dawleyラットの側腹部に全層欠損創を作製し、先行研究で作製したウェアラブルバイブレーションドレッシング材を貼付した。周波数52Hz、振幅0.089mm、1回40分の局所低周波振動を実施し、非振動群、1日1回振動群と2回振動群に分けて、毎日ドレッシング交換時に滲出液を回収し、7日後の創部組織を採取した。細胞老化および細胞老化随伴分泌現象(SASP)に関する遺伝子発現を評価した。 その結果、1回群で創作製3-5日に、2回群で3-7日に非振動群と比較して相対創面積が有意に減少した。組織では老化マーカーのTp53、Cdkn1a発現が両振動群で、Rb1発現が1回群で有意に減弱し、SASP因子のTnfa、Ptx3発現は2回群で有意に減弱した。滲出液では創作製5日後に1回群でRb1発現が、2回群でSerpine発現が有意に減弱し、7日後には両振動群でSerpine発現が、2回群でCdkn1a、Rb1発現が有意に減弱した。滲出液から回収した細胞を染色したところ老化マーカーであるp53陽性細胞数が非振動群と比較して2回群で有意に減少していた。 局所低周波振動刺激による物理的セノリティクスによって、組織だけでなく滲出液中の老化関連マーカーの発現を減弱させ、炎症を抑制し、創傷治癒を促進することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は局所低周波振動刺激により老化細胞は除去され創部の老化細胞割合は低下するという仮説のもと、局所低周波振動刺激による高血糖ラット全層欠損創での老化細胞除去効果を検証した。これまでどの細胞で老化関連マーカーが発現しているか、実際に局所低周波振動刺激で老化細胞を除去しているかなどは不明であった。実験の結果、局所低周波振動刺激によって創部で老化関連マーカーの発現が減弱していることや、滲出液中では老化細胞数が減少していることを確認した。創部において、どの老化細胞が除去されているのかあるいは老化を抑制しているのか、さらに老化細胞除去と創傷治癒促進の関係までは明らかにしていないが、当初の計画通り局所低周波振動による老化細胞除去効果を明らかにしたことで概ね順調に経過していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ウェアラブルバイブレーションドレッシング材による局所低周波振動刺激によって創部における老化関連マーカーの発現減弱と滲出液中老化細胞割合の減少を明らかにし、物理的セノリティクスによる老化細胞除去あるいは細胞老化抑制の可能性を見出した。従来のセノリティクス研究は,老化細胞除去のために薬剤や免疫細胞を用いた方法であるが、オフターゲット効果を抑制できないことや、臓器への薬剤到達の困難さや除去効果が落ちるといった課題が残っている。しかし局所低周波振動刺激は創部への直接的な物理的刺激による老化細胞抑制というこれまでにない概念の創出に寄与する。局所LFVによる細胞老化抑制メカニズムや老化細胞除去と創傷治癒促進効果との関連は不明であり、今後さらなる検証が必要である。そこで老化細胞除去効果の高い振動条件にて、局所低周波振動刺激を与えた創部組織および滲出液中の細胞を用いてRNA-seqを実施し、老化細胞に関連する遺伝子発現を網羅的に解析する。局所低周波振動刺激のような物理的刺激によるメカのセンサーの活性化とそれに関わる老化関連遺伝子とのシグナルパスウェイを同定する。そしてメカノセンサーあるいは老化関連遺伝子パスウェイの上流遺伝子を標的とした阻害実験で物理的セノリティクス機序を解明し、老化細胞除去と創傷治癒促進の関連を明らかにする。
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