Project/Area Number |
23K19224
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0403:Biomedical engineering and related fields
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
笠松 直史 埼玉医科大学, 保健医療学部, 教授 (70394038)
|
Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | 量子光学 / パラメトリック下方変換 / コヒーレントアンチストークスラマン散乱 / CARS / 非侵襲血糖計測 / 医用生体光学 / 非線形光学 |
Outline of Research at the Start |
生体の透過波長(近赤外光)を用いて、生体物質の固有吸収(中赤外)を測定可能な非線形光学過程CARS(コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱)が注目されている。しかし、レーザ光子がランダムな時間揺らぎを持つことから、高いピークパワーが必要で、光源の高コスト化や生体損傷を起こすという課題があった。 本研究では、時間揺らぎがなく、原理的に「同時」に対象に入射可能な「量子もつれ光子(広義の量子相関光子、例えば高利得パラメトリック下方変換光を含む)」をCARSに適用することで、信号強度を大幅に増強する新計測手法を構築する。特に医療ニーズが強い非侵襲血糖計測を目指し、グルコース測定について検証する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、研究実施計画に沿って、まず既設のバルクKTP結晶(KTiOPO4)を用いた光パラメトリック発振器(OPO)を用い、蛍光色素(ローダミン6G)を用いて2光子吸収実験を実施した。その結果、2乗特性が得られることを確認した。さらにグルコース水溶液に対し、OPOのシグナル波長1003nmとアイドラ―波長1133nmをグルコースセルに入射することでCARS信号検出実験を行い、900nm帯のグルコースCARS信号を観測できた。 次にOPO共振器の出力ミラーを外し、パラメトリック下方変換(PDC)が生じる系に切り替え、量子もつれ光(広義の量子相関光)の発生とCARS実験に進んだ。ここで、OPO系のミラーを外しただけでは、CARSに必要な非縮退の2波長(1003nmと1133nm)が得られないことが判明した。原因究明に取り組んだ結果、OPOを励起しているNd:YAGレーザの第2高調波に、わずかながら基本波1064nmが残留しており、これがPDC過程に影響を及ぼし、出力波長が1064nmにロックされることを突き止めた。残留基本波をおよそ60dB程度抑制することで非縮退の光子ペアを生成することができるようになった。 これをグルコースセルに入射し、CARSの信号検出に進んだ。単一光子検出器を用いることで、わずかながらグルコースなしの水溶液との900nm帯信号強度の差がみられたが、背景ノイズとの切り分けが十分でなく、確定するに至っていない。CARSの発生効率を上げるため、光パワーを上げる必要があること、さらにCARS過程の精査から帯域幅の狭い量子もつれ光が必要と判断した。現在、実験系を改良中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの理由として、5.研究実績の概要欄にも記載したが、当初、パラメトリック下方変換光(PDC光)を発生させるために、共振器ミラーを外すだけでよいと考えていたが、それだけでは非縮退光子対を発生できないことに直面し、その原因究明に時間がかかったことが第1である。第2に、実際にこのPDC光を実際にグルコースセルに入射したが、CARS過程は、2光子吸収過程よりもさらに入射光の特性への要求が厳しいこと、とくに光パワーの増強と帯域幅を狭帯域にすることが必要と分かってきたため、である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、5.研究実績の概要にて記した通り、実験系の改良を進め、高光パワーかつ狭帯域のパラメトリック下方変換光(PDC光)を発生させることにまず注力する。PDC光の特性把握を行い、順調に進めばCARS検出の可能性の検証に進む。高感度検出が必須のため、現状保有の検出器の感度で十分か、より高価な高感度検出器が必要かの判断を早期に行う。 CARSが検出できた場合、すでに取得しているOPOによるコヒーレント光でのCARSと比較し、増強効果の有無、べき乗特性がどのようになっているかを検証する。もし上記の施策でもCARSがうまく見えない場合は、同じ3次非線形光学効果である2光子吸収過程で量子相関のある場合の2光子蛍光を量子相関の無い場合(コヒーレント)と比較することで、量子相関による非線形過程の増強効果の有無を定量的に見極める予定である。その結果から、CARSの検出可能性を見積もる。
|