Project/Area Number |
23K19263
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0502:Inorganic/coordination chemistry, analytical chemistry, inorganic materials chemistry, energy-related chemistry, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩野 司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (40980313)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | ポリオキソメタレート / バイポリマー / プロトン伝導 |
Outline of Research at the Start |
水素社会実現の鍵となる燃料電池の性能向上には、水素イオン(プロトン、H+)の伝導を担う電解質の機能のさらなる深化が不可欠である。本研究では、単独でも高いプロトン伝導性を示す「ポリマー(有機)」と「ポリ酸(無機)」のハイブリッド結晶に着目する。このハイブリッド結晶は、無機物の堅牢性と有機物の柔軟性を併せ持ち、材料の「組成-構造-機能」の相関を明確化できる。そのため、各種分光学的手法によりプロトン伝導機構を精査し、得られた知見を基にプロトン伝導度を最大化することで、プロトン伝導体の設計指針を提示することを目指す。本研究により無機化学と高分子化学の境界領域を開拓し、材料設計のブレイクスルーを図る。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、変性率の異なる尿素変性ポリアリルアミン(UPAA)(変性率: 25%, 50%, 75%)とポリ酸からなる結晶性複合体を合成した。単結晶X線構造解析及び粉末X線回折測定(PXRD)、リートベルト解析から複合体の結晶構造を決定した。IR測定、固体NMR測定、走査型透過電子顕微鏡-電子エネルギー損失分光法(STEM-EELS)により、結晶細孔内のポリマーの存在を明らかにした。交流インピーダンス法により、プロトン伝導度を測定した結果、変性率が50%の複合体が最も高いプロトン伝導性を示した。Raman測定により、変性率が50%の複合体がプロトン伝導に寄与すると考えられるアンモニウムイオンが最も多く観測された。この結果から、複合化の過程で生成したアンモニウムイオンが高いプロトン(H+)伝導性に寄与していると考えられる。 また、ポリビニルアルコール(PVA)とポリ酸からなる結晶性複合体の合成にも成功した。プロトン伝導度を測定したところ、比較的温和な加湿条件下(相対湿度70%)の条件下において10-2 S cm-1オーダーの高いプロトン伝導性を示すことを見出した。固体NMR測定により、PVAが複合体中に存在することを明らかにした。水蒸気吸着測定により、相対圧0.4から0.8の範囲において水分子の吸着量がほぼ一定であったことから、プロトン伝導にPVAが寄与していることが示唆された。 今後は、高いプロトン伝導性の要因を各種分光学手法を用いて、多角的に評価するとともに、分子動力学(MD)シミュレーションを通して、各構成要素の結晶細孔内での状態について、考察を深める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ポリマーとポリ酸からなる有機-無機ハイブリッドイオン結晶を合成し、細孔内に閉じ込められたポリマー種がH+伝導性に与える影響を調べ、得られた知見を基に高H+伝導体を創製することを目的とした。当初の計画通り、バイポリマーとポリ酸からなる結晶性複合体の合成に成功した。これに加え、プロトン伝導度を測定した結果、尿素変性PAA中から生成したアンモニウムイオンや導入されたPVAにより、高プロトン伝導性を示すことを見出した。合成に成功しただけに留まらず、実用材料に比肩する10-2 S cm-1オーダーの高プロトン伝導性を示した。以上の点から、実用応用など様々な展開が可能であると考えられるため「当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高いプロトン伝導性の要因を各種分光学手法を用いて、多角的に評価する予定である。具体的には、水吸着測定により吸着量や吸着水の状態を調べ、加湿条件下のIR測定(in situ IR)により水素結合の状態を評価する。さらに計算化学的な手法を用いて、結晶細孔内のポリマーの状態について調査する予定である。具体的には、分子動力学(MD)シミュレーションを通して、ポリマーの主鎖や、アンモニウムイオン、結晶水の分布について考察を深める予定である。
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