Project/Area Number |
23K19327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0605:Veterinary medical science, animal science, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
生井 楓 東北大学, 農学研究科, 特任助教 (60893857)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 腸管恒常性 / ブタ / 乳酸菌 / 芳香族アミノ酸 |
Outline of Research at the Start |
養豚現場で頻発する下痢症の予防には、哺乳期における十分な腸管恒常性の形成が重要である。子ブタ腸管に優占する乳酸菌は、芳香族アミノ酸を、腸管バリア形成に寄与する生理活性物質へと変換できる。すなわち、子ブタにおいて乳酸菌の代謝産物を介した、腸管恒常性の維持機構が存在すると考えられた。本研究では、①経時的な哺乳期の子ブタの細菌叢解析と芳香族アミノ酸及びその誘導体の測定、②芳香族アミノ酸と乳酸菌が産生する誘導体のブタ小腸上皮細胞のバリア機能への影響評価、③芳香族アミノ酸代謝株と代謝酵素欠損株を用いた子ブタ投与試験、以上の実験から申請者の立案した仮説を証明し、新たな家畜健全育成戦略を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
養豚現場で頻発する下痢症の予防には、哺乳期における十分な腸管恒常性の形成が重要である。子ブタ腸管に優占する乳酸菌は、芳香族アミノ酸を、腸管バリア形成に寄与する生理活性物質へと変換できる。本研究では、消化管の乳酸菌によるミルク中アミノ酸代謝を通じた腸管恒常性の維持・増強メカニズムの解明を目的としている。本年度は以下の研究成果が得られた。哺乳期の子豚と離乳後の成豚の採材を実施し、消化管(口腔、胃、空腸、回腸、盲腸、結腸)の内容物を回収した。また、母豚の初乳、常乳、乳腺組織、そして膣粘液を回収した。それぞれのサンプルからDNAを抽出し、PCR法をもちいて16S rRNA領域を増幅した。その後、次世代シーケンサーを用いて、配列決定を行った。Qiime2を用いて解析を行い、それぞれの菌叢を決定した。結果として、哺乳期の消化管においては、乳酸菌を中心とする菌叢が形成されることが示された。特に、子豚回腸においては乳酸菌の割合が最も多く、乳酸菌を中心とした菌叢が形成されていることが示された。次に、特に乳酸菌が優占していた子豚回腸内容物からMRS寒天培地を用いて、乳酸菌を単離した。16S rRNAの塩基配列を決定することで、菌種を同定した。単離された乳酸菌は、芳香属アミノ酸の代謝能が知られている菌が含まれていた。さらに、芳香属アミノ酸を測定することを目的として、LC-MSでの測定系の樹立を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ミルク由来の芳香属アミノ酸が子豚消化管内に存在する乳酸菌によって代謝されることで、消化管の恒常性・健全性が増強されるという仮説の証明を目的として、研究を進めてきた。現在までに、哺乳期、離乳後の豚から消化管の内容物(口腔ぬぐい液、胃内容物、空腸内容物、回腸内容物、盲腸内容物、結腸内容物)の採材を実施し、短鎖脂肪酸の測定と菌叢解析を実施している。特に口腔、胃、空腸においては、乳酸菌は検出されるものの、個体間での菌叢のばらつきが大きく、食事や食糞のタイミングによって菌叢が大きく変化することが示された。一方で、上部消化管の回腸(小腸遠位)においては、個体間の菌叢のばらつきが少なく、一定の菌叢を維持していることが明らかとなった。さらに、哺乳期の回腸の菌叢は離乳後の菌叢と比較し多様性は低かったが、60-80%を乳酸桿菌が占めていた。その中でも、いくつかの乳酸桿菌は芳香属アミノ酸を代謝する酵素を保有することが知られており、安定したアミノ酸代謝が行われている可能性が明らかとなった。また、回腸内容物からの乳酸菌の単離も進めており、16S rRNA領域に基づく菌種同定が完了している。現在は、芳香属アミノ酸の代謝能を評価することを目的として、培養試験を進めるとともに、代謝の有無と代謝した産物の検出と定量を実施するために、質量分析系での評価系の構築を進めている。結果として、子豚消化管内におけるミルク代謝の可能性と該当する菌の単離、測定系の樹立が進んでおり、概ね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、豚ミルク(初乳、常乳、乳腺組織)と消化管内容物中(口腔ぬぐい液、胃内容物、空腸内容物、回腸内容物、盲腸内容物、結腸内容物)における芳香属アミノ酸の分析・定量を行う。具体的には、これまでに採材した検体をもとに、LC-MCを用いた質量分析にてトリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、およびその誘導体の測定を行う。これまでの予備実験では、フェニルアラニンの誘導体が子豚消化管内で増加することがわかっている。さらに、単離した乳酸菌における芳香属アミノ酸代謝能を評価する。具体的には、単離した乳酸菌を、芳香属アミノ酸を添加したMRS液体培地で培養し、培養液上清を回収する。その後、上清中に含まれる芳香属アミノ酸誘導体の濃度を測定する。 次に、ミルク中および消化管内で増加する芳香属アミノ酸の上皮細胞における機能性を細胞試験にて評価する。具体的には、豚小腸上皮細胞株に対して、芳香属アミノ酸を添加し、タイトジャンクションやサイトカイン受容体、自然免疫受容体の発現を定量的PCRにて測定するとともに、免疫染色にて評価する。これまでの予備試験では、いくつかの芳香属アミノ酸において、抗炎症効果が見られているとともに、抗炎症サイトカイン受容体の発現増加が見られている。さらには、今年度に実施するロタウイルス感染試験にて、芳香属アミノ酸の摂取が豚の下痢や生育に与える影響を評価する予定である。
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