独自開発のゲノム編集法を用いた地球温暖化対応の耐暑性ウシの作成
Project/Area Number |
23K19334
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0605:Veterinary medical science, animal science, and related fields
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
渡部 聡 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (80391572)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ゲノム編集 / 耐暑性向上 / プロラクチン受容体 / 体毛周期 / 地球温暖化 / ウシ |
Outline of Research at the Start |
本研究では、独自に開発した受精卵へのelectroporation法に基づくゲノム編集技術を用い、ウシ受精卵でプロラクチン受容体遺伝子に変異を加え、細胞内ドメインの一部を欠損した変異体を持つ個体を作成する。このような個体は、体毛の長さが野生型の1/4ほどとなり、汗の分泌量が増加、夏の高温環境下でも乳量や体重増加への影響は受けにくい。地球温暖化が進行し気温が上昇している現状で、このような耐暑性を高めたウシは畜産業にとって有用なものになると予想される。また、ウシで環境変動に対応したゲノム編集による品種改良は、今後の日本の酪農、食肉産業に大きな影響を与えるものと見込まれる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地球温暖化に伴う暑熱に対し、耐暑性を高めたウシを作成するため、受精卵でプロラクチン受容体遺伝子にゲノム編集で変異を起こし体毛を短くした動物を作成することを目標としている。昨年8月に資金が交付され研究業績と言えるものはあまり出ていない。しかしながら、これまでに家畜を含む大動物で行われたゲノム編集に関して、以下の総説を1本作成し現在投稿中である。 Possible In Vivo Genome Editing Towards Early Preimplantation Embryos from Large Experimental Animals, Satoshi Watanabe, Shuji Takabayashi, Kazunori Morohoshi, Shingo Nakamura, Masahiro Sato, Nat. Cell and Sci. (Review) 投稿中. また、過去の研究結果をまとめて家畜脂肪細胞の分化に伴う遺伝子発現を解析した以下の論文も作成し投稿準備中である。 The transcriptional landscape of porcine adipocyte precursors during cellular differentiation, Satoshi Watanabe, Hideki Hiraiwa, Koji Doi, Hiroshi Yasue, Shingo Nakamura, Takayuki Sakurai, Kazuo Ishii and Masahiro Sato, Plos One(投稿準備中) 今後も、本研究から得られた知見に関し論文や学会で発表してきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウシ受精卵でゲノム編集を行う前に、マウスで組換え体を作成し体毛形成の観察等、予備的実験を行う。これまでに、マウスPRLRに対するgRNAを作成し培養細胞にCas9タンパクと一緒に導入しゲノム編集が起こることを確認した。また、本研究の申請書には記述しなかったが、PRLR遺伝子のみならず、細胞接着因子であるDesmoglein 4(DSG4)、核内低分子リボ核タンパクSmall Nuclear Ribonucleoprotein Polypeptide E(SNRPE)の両遺伝子に対してもゲノム編集を行う。これら遺伝子は、ヒトで遺伝的乏毛症の原因遺伝子であることが明らかになっており、遺伝子をゲノム編集により不活性化することで、プロラクチン遺伝子同様に体毛が短くなると期待される。中でもSNRPE遺伝子は、優性変異であるためゲノム編集で本来2コピーある遺伝子が1コピー不活性化するだけで表現型が現れるものと期待している。これらの遺伝子に対してもマウスでゲノム編集を行うため、gRNAを作成し培養細胞系で動作確認を行っているところである。また、ウシのPPLRに加えこれら遺伝子に対するgRNAの作製も完了した。 さらに、以下も申請書に記述していないことであるが、動物受精卵にgRNAとCas9を導入するため安価なパルス発生装置の開発も行っている。従来の装置は約180万円と非常に効果であったが、本研究で開発したものは10万円以下と非常に低価格になる
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで作成し培養細胞系で動作を確認したgRNAをCas9タンパクと一緒にマウス受精卵に自作パルス発生装置を用いて導入する。それにより、PRLR、DSG4、SNRPEに関し遺伝子改変マウスを作成する。本研究で得られる改変マウスは体毛に変異が生じ、体毛が短くなる表現型が期待されるため、容易に判定が可能になると期待している。これらのマウスを用い、PCR並びにフラグメントのDNAシークエンシングを行ってゲノム編集が期待通り起こったことを確認した後、体毛形成や暑熱に対する反応を調べる。また、これらのマウスでの知見は学会、並びに論文として発表したい。 それらと並行し、ウシ受精卵にgRNAとCas9をパルス発生装置により導入し、ウシ受精卵でのゲノム編集を行う。牛は妊娠期間が280日以上にも及ぶため、本研究の期間に個体を得ることは不可能である。そのため、受精卵でゲノム編集を行った後数日間培養し桑実胚まで発生が進行したところで胚を回収し、ゲノム編集が起こっているかPCR並びにフラグメントのDNAシークエンシングを行って確認する。これらにより、ウシでもゲノム編集個体を得られることを示す傍証を得る。これらの知見に関しても学会等で発表する。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)