Project/Area Number |
23K19341
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0701:Biology at molecular to cellular levels, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
LI SIHAN (李思涵) 東京大学, 医科学研究所, 助教 (10984578)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | リボソーム分解 / 翻訳異常 / 遺伝子発現制御 / 翻訳 / リボソーム / 18S NRD / 遺伝子発現 |
Outline of Research at the Start |
遺伝情報を解読しタンパク質を合成する「翻訳」を担うリボソームの異常は、リボソーム病と総称される疾患の原因となる。細胞は、翻訳中に異常な振る舞いを示したリボソームを分解・排除する品質管理機構18S NRDを保持している。本研究は、18S NRDの生理的意義および疾患発症との関連の理解を深めることを目的とする。出芽酵母およびヒト培養細胞を用いて、18S NRDの誘導条件を探索した上、本経路の活性化時または破綻時の遺伝子発現の変動を網羅的に解析することで、リボソームの分解がもたらす生命活動への影響を包括的に理解する。
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Outline of Annual Research Achievements |
細胞は、翻訳異常を示したリボソームの小サブユニットを分解・排除する品質管理機構18S NRDを保持している。本研究は、18S NRDの活性化時または遮断時の細胞内の翻訳状態を中心に遺伝子発現の変動を網羅的に解析することで、小サブユニット特異的な分解がもたらす細胞への影響を包括的に理解することを目指す。令和5年度に実施した研究内容は以下の通りである。 1)18S NRDの活性化条件の探索:出芽酵母およびヒト培養細胞を用いて、18S NRDの引き金であるリボソームタンパク質uS3のユビキチン化の程度、およびリボソーム大・小サブユニットの量比を指標に、ストレス条件下およびリボソーム変異導入時の18S NRDの活性化の有無を調べた。その結果、翻訳活性を保持しているが原核生物型の活性中心を模倣した「異質」なリボソームの導入によるリボソーム間競合、および多種の薬剤処理とストレスに起因する翻訳異常が、リボソーム停滞・衝突センサー因子に依存したuS3のユビキチン化および小サブユニット量の減少を誘導することを見出した。 2)18S NRD活性化時の翻訳状態の解析:出芽酵母野生株およびヒト培養細胞を用いて、18S NRDが誘導された際の翻訳状態をリボソームプロファイリング法により調べた。uS3のユビキチン化の原因となりうるグローバルな翻訳の異常・乱れを確認した上、18S NRDの活性化時特異的に発現変動する可能性のある遺伝子群を同定した。また、ヒト培養細胞ではRNA-seqも行い、18S NRDの誘導と共に転写レベルでの遺伝子発現の調節が起こることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、1)翻訳異常に起因するリボソーム分解系18S NRDの活性化および遮断条件の探索、2)18S NRDの活性化および遮断条件下の遺伝子発現変動の解析、の二つの解析を計画していた。現在まで、18S NRDを活性化させる薬剤処理・ストレス条件を複数同定し、これらの条件下の翻訳状態、トランスクリプトームの発現をそれぞれ調べるリボソームプロファイリングおよびRNA-seqを実施した。また、18S NRDに必須な因子を欠損させた細胞(18S NRD遮断時)でも同様の実験を行った。その結果、それぞれの18S NRDの活性化条件下で発現変動する遺伝子群の候補を同定することができた。また、当初解析を予定していなかったが、「異質なリボソームの存在によるリボソーム間競合」が18S NRDを誘導することを見出した。リボソームタンパク質遺伝子のハプロ不全が原因とされるリボソーム病の発症と「リボソーム間競合」との関連性が、今後の研究の新たな着眼点となると考える。以上のような進捗状況であるため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に同定・選別した18S NRDの活性化および遮断条件を利用し、リボソームプロファイリングおよびRNA-seqを遂行する。代表的な18S NRD制御条件について、質量分析を利用したプロテオーム解析も行う。各mRNAの量および翻訳効率、さらに対応するタンパク質の量を比較し、遺伝子発現の変動を総合的に評価する。各データセットのエンリッチメント解析およびクラスタリングにより、複数の18S NRD制御条件間で共通して見られる発現変動遺伝子群を同定する。 また、疾患関連変異が報告されている20種以上のリボソームタンパク質遺伝子について、生物種間で保存性の高い部位を選別し、出芽酵母に変異を導入する。変異導入によるリボソームユビキチン化の程度の変化、およびリボソームサブユニットの安定性の変化の有無を確認し、既知の18S NRD経路の関与を調べる。変異型、正常型リボソームの共存によるリボソーム間競合が翻訳の乱れの原因となる可能性に着目し、強度の異なるプロモーターを用いて、疾患関連変異型リボソームタンパク質の発現量を調節し表現型を比較する。翻訳に参加し、リボソームサブユニットの安定性に影響する変異体が同定できた場合、当該変異体の発現による細胞全体の遺伝子発現変動を前述した方法で解析し、疾患発症機構との関連を考察する。
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