Project/Area Number |
23K19348
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0701:Biology at molecular to cellular levels, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大貫 茉里 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (40983606)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 内在性レトロウイルス / CRISPRスクリーニング / 転移因子 / CRISPR-Cas13 / 霊長類 / 転写制御 / 進化 |
Outline of Research at the Start |
ヒトと他の霊長類の違いをもたらしたゲノム進化の要因の一つはウイルス由来配列の転移因子である。転移因子は転移と増殖によって宿主ゲノム中に数多くのコピーを挿入してきたが、活発に転写されているコピーのうちどれが生物としての差を生み出してきたのかはほとんど不明である。これはコピー配列の類似性や非コードRNAとしての転写物が既存の分子生物学的解析手法を困難にしているためである。本研究では転移因子RNAを特異的かつ効果的に抑制する網羅的解析技術として、CRISPR-Cas13スクリーニングの系を構築する。そして霊長類進化の過程でゲノムに挿入された転移因子HERVHファミリーに着目し、その機能を検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
ヒトゲノム中に数千か所存在するヒト内在性レトロウイルスH(HERVH)のうち機能的役割を持つ因子を明らかにするため、分化能の変化を指標としたCRISPRスリーニング技術を確立することが本研究の目的である。研究1年目は、標的HERVHに特異的な遺伝子操作技術の確立を目指し、一本鎖RNAを配列特異的に結合・切断するCas13dの実用可能性を検討すると同時に、dCas9の標的特異性を高める検討を行った。 まずCas13dの非特異的切断活性を抑えた改良体Cas13dの細胞毒性及びノックダウン効率を検討した。ヒトiPS細胞に多能性マーカーPOU5F1、PODXLを標的とする6種類のgRNAを導入した。しかし標的遺伝子発現の有意な減少がみられたのはそのうちの1種類のみであり、その効率もコントロールの80%程度にとどまった。有効なgRNAの確率、ノックダウン効率共に、大幅な改善を必要と考えられた。 また上記と並行して、個々のHERVHに特異的な活性化・抑制化の可能性をCRISPR-dCas9を用いて検討した。まず活性化ドメインVPRおよび抑制ドメインKRABを融合させたdCas9を発現誘導できるヒトiPS細胞を樹立した。次に近傍遺伝子を制御していると考えられる8か所のHERVH領域について、その①領域近傍のユニーク配列、②全HERVH共通配列に対するgRNAをデザインし、VPR-及びKRAB-dCas9 iPS細胞株に導入した。②の共通配列gRNAの導入により確認されたすべての領域(VPR株で1か所、KRAB株で7か所)の標的近傍遺伝子について、①のユニークgRNAにおいても同様の効果的な発現上昇・減少が確認された。これらの結果により、スクリーニングに応用可能な特異的かつ効率的な活性化・抑制化をCRISPR-dCas9により誘導できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目の目標はRNAを標的とするCRISPRによる効果的なノックダウン技術の選定であった。当初Cas13によるHERVH由来転写物のノックダウンは標的特異性において最も有望と考え検討を進めてきたが、gRNAの有効率とノックダウン効率は大幅な改善を必要とするものであった。一方で同時に検討を行ってきたCRISPR-dCas9に関して、gRNAのデザインを改良することで確率、効率、特異性共に予想以上の発現制御成績を収めることが出来たため、この技術をベースにCRISPRスクリーニングへの応用を行っていくことを決定した。当初の研究実施計画から手法に変更はあったが、最終目標であるHERVHに対するCRISPRスクリーニングに向けて最良の結果が得られている。 またCRISPRスクリーニングに用いる候補遺伝子の選出を行った。研究室において得られていたヒト、チンパンジー、オランウータン、カニクイザルiPS細胞のgenome DNA-seq、RNA-seq、ATAC-seq、Cut and Tag-seqのデータを用い種間比較ゲノム・エピゲノム解析を行った。これにより種間で位置とエピゲノム状態が保存されたHERVHを決定した。さらにヒトiPS細胞においてHERVHの共通配列をターゲットとしたCRISPRi、CRISPRaの発現解析を行った。これらの結果を参照することでHERVHによる制御を受ける機能的遺伝子候補の選出が完了した。 。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られたHERVHによる制御を受ける機能的遺伝子の候補に基づき、20程度の複数遺伝子を標的とする多重的ノックダウンの試験を行い、CRISPRスクリーニングへの応用可能性を検討する。プールしたgRNAはレンチウイルスを用いてiPS細胞へ導入し、始原生殖細胞様細胞へ分化誘導を行う。誘導された細胞はsingle cell RNA-seqを行いマーカー遺伝子発現や細胞タイプ予測プログラムを用いてタイプ別に分類する。標的gRNAとの関係を解析することで、発現抑制による分化効率への影響を検討する。gRNAにはあらかじめ分化能へ影響を与える遺伝子と標的としたポジティブコントロールと、ヒト遺伝子の何も標的としていないネガティブコントロールを含めておき、それらの導入細胞群間で生殖細胞分化効率の差が認められれば、分化能の変化を指標としたCRISPRスリーニング技術としての要件を十分満たしているとみなす。プール型スクリーニングへの応用計画が遂行困難と判断された場合には、各標的を独立並行方式でノックダウンさせるアレイ型スクリーニングへと軌道修正を行う予定である。
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