Project/Area Number |
23K19360
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0702:Biology at cellular to organismal levels, and related fields
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石原 すみれ 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (70905752)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 染色体倍加 / がん細胞 / 細胞接着 / がん細胞集団 |
Outline of Research at the Start |
細胞の持つ染色体数が倍増する「染色体倍加」現象は固形がんの30%超に共通してみられる異常であるが、染色体倍加ががん細胞集団に与える影響はわかっていない。本研究では、申請者が最近発見した「染色体倍加に伴う接着能の増大」の発生要因の解明を足がかりに、染色体倍加ががん細胞集団中で果たす悪性化形質獲得への寄与を理解することを目的とする。比較プロテオーム解析により接着能亢進を惹起する責任因子を突き止めるとともに、染色体倍加細胞が混在するスフェロイドを作成しがん細胞集団の三次元形態や浸潤能を解析する。得られた結果を基に数理モデルを構築し、接着能亢進と細胞集団レベルで生じる表現型との間の因果関係を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
細胞のもつ染色体コピー数が正常値(二倍体状態)から倍増する「染色体倍加」現象は、 固形がんの30%超に共通してみられる異常で、予後不良と強く相関する。染色体倍加は、マウスを用いた個体レベルの移植実験で腫瘍形成や転移を顕著に亢進することから、がん病態の主要因の一つと考えられている。また、培養細胞を用いた一細胞レベルの実験から、染色体倍加はゲノム不安定性や代謝変化を通して細胞形質を劇的に変化することが示唆されている。このような一細胞レベルの変化は、細胞集団の三次元構造や機能に作用してがん病態を引き起こすことが推察されるが、「一細胞レベル」と「個体レベル」の間にあたる「細胞集団レベル」で染色体倍加が与える影響についての知見は極めて乏しい。「細胞集団レベル」における染色体倍加の影響を調べるため、研究目的にあげた「倍加細胞混合スフェロイドの形態観察」「倍加細胞で接着能を増大させる責任因子の特定」を行った。 二倍体細胞と染色体倍加細胞において、ハンギングドロップ法によるスフェロイド形成を行なった。スフェロイドあたりの細胞数を減少させたところ、二倍体のみの場合よりも倍加細胞を混合した場合の方が、スフェロイドの形成能が向上することを見出した。また、この時、倍加細胞はスフェロイド中心部に集積することを発見した。現在は、スフェロイドの形成能向上における倍加細胞の中心部への集積の意義を探索するとともに、スフェロイドの形成能が向上する責任因子を次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現解析や接着タンパク質のウェスタンブロット実験を用いて探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和5年度では、研究実施計画をほぼ順調に遂行することができ、計画以上の興味深い結果も得られつつある。二倍体細胞と倍加細胞との混合スフェロイドの作成において、一スフェロイドあたりの細胞数を減少させたところ、二倍体単独ではスフェロイドを形成できない細胞数でも、倍加細胞を混合するとスフェロイドを形成することができた。この結果から、倍加細胞の混合によりスフェロイドの形成能が向上することを見出した。また、二倍体細胞と染色体倍加細胞にそれぞれ異なる色の蛍光タンパク質を発現させてスフェロイド内の細胞分布を観察したところ、倍加細胞がスフェロイド中心部に集積することを見出した。この様な分布の偏りは、異なる色の蛍光タンパク質を発現させた二倍体同士を混合した時には見られなかった。がん細胞は血管内に浸潤した際、細胞塊を形成していると、単一細胞より高い転移能を示すことが知られている。そのため、当初のスフェロイドの浸潤能を調べる計画に先立って、スフェロイドの形成能を調べる計画へと変更した。染色体倍加によるスフェロイド形成能向上の発見とその分子メカニズムの探索は、がんの浸潤・転移を理解する上で重要であり、計画以上の発見であると考えている。 また、令和5年度では、スフェロイドの形成能が向上する責任因子の探索も行った。次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現の網羅解析では、Lasy-seq法による遺伝子発現解析を実施し、二倍体細胞と倍加細胞との間で発現が変化する遺伝子群をGene Enrichment Analysis(GSEA)により解析中である。また、E-cadherinなどの代表的な接着タンパク質をターゲットにウェスタンブロット法を用いて、倍加細胞において接着因子の発現変化があるかを探索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度では、研究目的で掲げた問いのうち、「倍加細胞混合スフェロイドの形成能の解析」「倍加細胞で接着能を増大させる責任因子の同定」を引き続き行う。現在までに、二倍体細胞と倍加細胞を混合したスフェロイドでは、倍加細胞がスフェロイドの中心部に集積することを見出している。この倍加細胞の集積がスフェロイドの形成能の向上に寄与しているのかを調べるため、シングルセルの状態からスフェロイドを形成するまでの過程の三次元ライブイメージングを実施予定である。異なる色の蛍光タンパク質を発現させた二倍体細胞および倍加細胞を1:1の割合で混合し、アガロースコートによる低接着培養基盤上に播種する。播種直後から三次元ライブイメージングを行い、スフェロイドの形成過程に倍加細胞の混合が寄与しているかを検証する。また、「責任因子の同定」でヒットしたターゲットについてRNA干渉法またはオーキシンデグロン法を用いて発現抑制を行い、スフェロイドの形成能および形成過程に影響を及ぼすかを検証する予定である。 さらに、上記の結果がまとまり次第、当初の計画である「倍加細胞混合スフェロイドの浸潤能解析」についても着手する。具体的には、二倍体細胞単独スフェロイド、および二倍体細胞・倍加細胞混合スフェロイドをコラーゲンゲルもしくはマトリゲル中に三次元包埋培養し、スフェロイドの浸潤能をスフェロイドの三次元形態および三次元ライブイメージングにより比較する。
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