Project/Area Number |
23K19365
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0702:Biology at cellular to organismal levels, and related fields
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大橋 拓朗 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (80983535)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 蚊 / 聴覚 / 性的二型 / カルシウムイメージング / 繊毛 / トランスクリプトーム / プロテオーム / ネッタイシマカ |
Outline of Research at the Start |
様々な感染症を媒介する蚊は、人類の大敵である。この問題の原因の一つは、蚊の旺盛な繁殖力である。しかし、蚊の繁殖を抑えるための有効な対策の基盤となる、彼らの行動原理の理解は進んでいない。そこで本研究では、配偶行動の成功に必須な「オスの聴覚」に焦点を当てることで、行動原理の理解を目指す。 配偶行動の際、蚊のオスはメスの翅音を頼りに接近する。この鋭敏な聴覚を支えるため、オスの聴覚器は巨大化している。つまり、蚊の聴覚は極端な性的二型を持つ。最近、脳内部の聴覚応答も雌雄で大きく異なることが発見された。本研究では、この聴覚応答の性差を生み出す分子機構を解明することで、蚊の繁殖行動原理の一端を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
蚊のオスは多数のオスとともに構成した群れの中で、メスの翅音を聞きつけて配偶行動する。このオス特異的な鋭敏な聴覚の背景にはどのような聴覚情報処理の雌雄差があるのだろうか? 本年度は、雌雄のネッタイシマカの一次聴覚中枢の応答特性をカルシウムイメージングによって詳細に解析した。その結果、一次聴覚中枢の全体的な応答特性の雌雄差を明らかにした。 一次聴覚中枢内に異なる応答特性を持つニューロン集団があるか調べるため、応答特性の空間配置を階層クラスタリングによって解析した。これにより、異なる応答特性を持つニューロン集団を発見し、雌雄で応答特性の空間配置も異なることも明らかにした。興味深いことに、一部のオスが非常に特異な応答特性を持っていた。その背景メカニズムは触角の振動特性によって説明できる可能性があることをシミュレーションによって発見した。 この一次聴覚中枢の応答特性の雌雄差の背景にある分子基盤はどのようなものなのだろうか?一次聴覚中枢に投射する聴感覚ニューロンには、蚊の「耳」である触角の振動を制御する運動繊毛がある。運動繊毛を構成するモーター分子の発現量の雌雄差が一次聴覚中枢の応答特性の雌雄差に寄与している可能性がある。そこで、蚊の触角の遺伝子発現プロファイルを雌雄で比較するため、雌雄の触角のトランスクリプトーム、プロテオーム解析を行った。双方のGO解析によってモーター分子がオスで有意に多く発現しており、それらを転写制御している可能性のある候補遺伝子も特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は(1)ネッタイシマカの一次聴覚中枢における周波数地図が雌雄でどのように異なるかを解明し、(2)その違いに対するモーター分子の機能は何かに迫ることである。当初の計画通り、雌雄の一次聴覚中枢の周波数特性の空間配置を解析する技術を確立し、詳細な解析を行うことができた。これにより、当初の目的の(1)は達成された。 また、トランスクリプトームとプロテオームの複数のレベルにおける発現プロファイルを解析し、オスでより発現しているモーター分子やその転写因子候補を特定した。現在、この候補遺伝子のノックダウン系統を作成しており、オス特異的に発現するモーター分子の聴覚に対する機能を調べる準備をしている。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に特定した候補遺伝子をノックダウンする系統を作成し、カルシウムイメージングによってオスの一次聴覚中枢の応答特性が変化するかを観察する。さらに、メスの翅音に対するノックダウンオスの音走性行動を観察し、聴覚行動に与える影響についても検討する。また、雌雄の蚊とノックダウンオスの繊毛構造を観察し、モーター分子の局在がどのように異なるか解析する。 これにより、蚊の聴覚機能の雌雄差に対する繊毛のモーター分子の役割を理解する。
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