パーキンソン病における脳深部刺激療法の治療効果を高める新規個別診断法の開発
Project/Area Number |
23K19409
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0704:Neuroscience, brain sciences, and related fields
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
加茂 晃 順天堂大学, 医学部, 助手 (80984319)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | パーキンソン病 / 脳深部刺激療法 / バイオマーカー / 大脳基底核電気生理学的回路 / 単一ニューロン電位 / ウェアラブルデバイス / ジスキネジア |
Outline of Research at the Start |
パーキンソン病は進行性神経変性疾患であるが、レボドパ補充療法が有効である。一方、進行期にはウェアリングオフやジスキネジアなどの運動合併症が問題となり、その対応策として脳深部刺激療法(DBS)が有効な治療法の一つとして確立されている。しかし、術後の運動症状に対する効果や合併症の出現については個人差が大きく、DBS術後アウトカム(治療効果)を正確に予測する方法はいまだ確立されていない。本研究では「どのような患者に対してDBSの治療効果が高くなるか、またそのメカニズムは何か」という学術的な問いに対し、独自の多角的な層別化によりDBS術後アウトカム因子を明らかにし、DBS治療戦略の個別化を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度はパーキンソン病(PD)患者における脳深部刺激療法(DBS)の最適化を目的として、大脳基底核の電気生理学的解明及びPD患者の層別化を目的としたウェアラブルデバイスを用いたPD患者の状態把握に関する研究を行った。ヒトの淡蒼球内節に相当するラットの脚内核で単一ニューロンの自発的な神経電気活動及び運動野皮質の電気刺激に対する応答を測定した。自発活動においてはスパイク間間隔の変動係数が対照群と比較してPDモデル、ジスキネジアモデル、5型代謝性グルタミン酸受容体阻害薬(MTEP)を投与してジスキネジアを治療したモデルで有意に高値であった。皮質刺激に対する応答では対照群で早期興奮-抑制-後期興奮から成る3相の応答を認めた。しかし、PD群では抑制相が消失し、ジスキネジア群で軽度回復したが、MTEPを投与した群では再度消失した。ジスキネジア群では後期興奮の減弱を認めた。MTEPのスキネジアに対する治療および予防効果が行動実験によって示され、電気生理学的に証明された。現在は局所フィールド電位(LFP)がPDの状態を反映する電気生理学的バイオマーカーとして主流であるが、固縮や無動など一部の運動症状のみを反映することが問題である。単一ニューロン電位ではより詳細にPDの運動症状を反映する指標となり得ることを示した(H Kamo, et al, J Neurosci Res. 2024)。また、ウェアラブルデバイスはPDの振戦やジスキネジアの検知に対して有用であるが、無動と安静の区別が困難であることが問題である。PD患者に腕時計型のウェアラブルデバイスを装着し、脈拍数と活動量を測定した結果、脈拍数や活動量単体ではPDの運動症状を反映するバイオマーカーとならなかったが、脈拍数/活動量はオフ時の無動を反映する可能性を示した(H kamo, et al, Front Neurol. 2024)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は順天堂PDレジストリから解析対象となるコホートを抽出すること、遺伝的背景を解明するために抽出した患者の血液バイオバンクから、網羅的遺伝子解析を行うことを目標とした。レジストリ及び、DBSデータベースで遺伝子変異の検索を行った結果、GBA1変異を有したPD患者21例を特定し得た。既報ではGBA1変異を有するPD患者はDBS術後に認知機能低下を来すことが報告されているが、本研究においてはGBA1変異の有無はDBS術後の認知機能低下に影響しない可能性を示し、学会にて発表を行った(第63回定位機能外科学会.札幌.2024)。また、アウトカム規定因子として患者の状態を層別化する必要があり、様々な角度からPDの状態を分類する方法として電気生理学的手法やデジタルデバイスを用いた解析を行った。電気生理学的手法としては単一ニューロン応答を用いたPDの運動症状の分類(H Kamo, et al, J Neurosci Res. 2024)や、LFPを用いた状態の把握(MDS.Copemhagen.2023)、またデジタルデバイスを用いた患者状態の判別方法(H kamo, et al, Front Neurol. 2024)を発見し、学会報告を行った(IAPRD.Chicago.2023), (第64回日本神経学会総会.千葉.2023), (第53回日本神経精神薬理学会.東京.2023), (第41回神経治療学会.東京.2023)。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の目標としては順天堂PDレジストリを用いた認知・精神症状などの臨床症状に加えて、神経画像評価として術前に行った頭部MRI検査、脳血流シンチグラフィ検査、ドパミントランスポーターシンチグラフィ、心筋シンチグラフィ検査を解析し、脳各部位の容積や脳血流、Specific Binding Ratio (SBR)の定量化を図る。Adaptive DBSが使用されている患者においては、DBS電極からLFPを収集し、経時的な電気生理学的変化を解析する。さらに、術前にウェアラブルデジタルバイオマーカーを測定している患者100例(Oyama G, Kamo H(14番目), et al,. Sci Rep. 2023)について、人工知能モデルによって算出したヴァーチャル運動スコアとの関連を評価する。得られたデータをもとにDBS術後患者をアウトカム(治療効果)で分類し、層別化されたDBS術後患者および非DBS群において遡及的な統計解析を行う。術後転帰に影響する因子を患者層ごとに分析し、個人に応じた最適なDBS治療法を確立するとともに高い治療効果が得られる場合の分子機構について評価解析を行い、明らかにする。
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Report
(1 results)
Research Products
(11 results)