Project/Area Number |
23K19420
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0801:Pharmaceutical sciences and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森下 陽平 東北大学, 薬学研究科, 助教 (90978719)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 嫌気性糸状菌 / 反芻動物 / ルーメン / 天然物探索 / ゲノムマイニング / 生合成 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、反芻動物のルーメンに生息する嫌気性糸状菌のゲノム情報を基に、新規の生物活性物質を探索するものである。反芻動物のルーメンには多様な微生物が生息しており、特に嫌気性糸状菌は未開拓の探索資源として注目されている。本研究では、まず、公開データベースや自ら採取する嫌気性糸状菌のゲノム情報を解析し、標的とする生合成遺伝子クラスターを選定する。その後、麹菌を利用した発現系を構築し、新規天然物の単離を目指す。本研究により、新しい医薬シーズの発掘や、反芻動物のルーメン環境下での微生物の役割に関する新しい知見が得られることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、反芻動物のルーメンに棲息する嫌気性糸状菌のゲノム情報を活用する新規天然物の探索を目的とした。初年度では、独自のゲノム資源を取得するために、反芻動物由来の嫌気性糸状菌の分離に取り組んだ。当研究室ではこれまでに厳密な嫌気条件を要する微生物を単離・培養した経験やノウハウがなかった。そこでまず、嫌気性条件における微生物の培養系を確立するために、入手が容易な市販のビフィズス菌を用いて条件検討を行った。その結果、酸素吸収・炭酸ガス発生剤であるアネロパック・ケンキを用いて寒天培地上で培養することでビフィズス菌コロニーの生育を確認した。また、嫌気性微生物の分離方法として最も一般的に用いられているロールチューブ法に必要な器具や嫌気培養ジャーシステムを導入し、嫌気性糸状菌の培養環境を整備した。 次に、反芻動物由来の嫌気性糸状菌の単離に取り組んだ。まず、仙台市八木山動物公園のご協力のもと、嫌気性糸状菌の単離源となる反芻動物の糞を採集した。具体的には、キリン、ラマ、ヤギ、ヒツジ、ラクダの新鮮な糞 (排泄後12時間以内) を採集した。糞を加えた液体培地を嫌気性条件下で数日間培養したのち、ロールチューブ法を用いて嫌気性糸状菌の分離培養を試みた。しかし、いずれの反芻動物の試料からも、嫌気性糸状菌の生育は確認されなかった。そこで次に糞試料のメタゲノムアンプリコン解析を行ったところ、いくつかの糞試料中に、嫌気性糸状菌の存在を示唆する結果を得た。今後、培養条件をより詳細に検討することで、嫌気性糸状菌の分離培養を試みる予定である。また、ゲノムマイニングにより見出した新規なドメイン構造を有するHR-PKSの人工合成遺伝子を用いた異種発現解析にも着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究室ではこれまでに嫌気性糸状菌の培養条件の設備やノウハウがなかったが、初年度のうちに必要な器具や試薬を整え、ビフィズス菌を用いて予備検討により、嫌気性条件下での微生物の培養に成功した。また、八木山動物公園の方々のご協力の下、嫌気性糸状菌の分離源となる反芻動物 (ラマ、キリン、羊、ヤギ、ラクダ)の糞を採取することができた。現状、嫌気性糸状菌の単離には至っていないものの、糞試料から抽出したメタゲノムを用いてアンプリコン解析を行うことで、複数の糞試料中に嫌気性糸状菌のゲノムが含まれていることが明らかとなった。すなわち、嫌気性糸状菌が糞中に含まれていることが強く示唆する結果を得た。以上は、今後独自のゲノム資源を取得し、ゲノム情報に基づく天然物探索の礎を築くための重要な結果であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1嫌気性糸状菌の分離培養 初年度の実験により、八木山動物公園より採取した反芻動物由来の糞試料の中に、嫌気性糸状菌が生息していることが示唆された。そこで次年度は、嫌気性条件下での培養条件を検討することで、嫌気性糸状菌の分離培養を目指す。具体的には、嫌気性糸状菌を含む限られた炭素源を用いた培養を用いて濃縮培養することで、バクテリアなどの目的外の微生物を排除して、嫌気性糸状菌を分離する。また、培養液中に、生育の早いバクテリアの生育を阻害するための抗生物質カクテルを高濃度で加えることで、目的の嫌気性糸状菌を優先的に生育させる。以上のような培地を用いて複数回、純化培養を行う。嫌気性糸状菌が得られた場合、液体培地を用いて培養した後、そのゲノムを解読する。 2嫌気性糸状菌のゲノム上にコードされる高還元型ポリケタイド合成酵素の異種発現 NCBIなどの公開データベースを用いた解析により、これまでに知られているドメイン構成とは異なる高還元型ポリケタイド合成酵素を見出している。そこで、それらの人工合成遺伝子を用いて異種発現系を構築する。異種ホストとしては、当研究室で用いている麹菌を活用する。嫌気性糸状菌由来の遺伝子を導入した麹菌を培養し、その代謝プロファイルを遺伝子非導入株と比較することで、導入した遺伝子に由来する代謝物を特定し、単離・精製、構造決定に取り組んでいく。
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