Project/Area Number |
23K19493
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0901:Oncology and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 美桜 (山口美桜) 東北大学, 大学病院, 助教 (60982402)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 乳癌 / 細胞外小胞 / 腫瘍随伴マクロファージ / TIM1 / TIM4 / マクロファージ |
Outline of Research at the Start |
腫瘍随伴マクロファージ (TAMs) は乳癌の化学療法耐性の獲得に寄与する。細胞外小胞(EV)は細胞間情報伝達において重要な役割を果たし、TAMsの腫瘍促進作用の誘導に関与する。本研究で着目するT cell immunoglobulin and mucin domain (TIM) はEV表面のホスファチジルセリンと結合する受容体で、我々は化学療法耐性を獲得した乳癌細胞の分泌するEVにTIMが豊富に含まれることを発見した。そこで、EVにより送達されるTIMが、TAMsのEVの取り込みおよび乳癌の化学療法耐性に与える影響を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
乳癌組織におけるTIM1およびTIM4の発現:ヒト乳癌組織116例を用いてTIM4に対する免疫染色を行い、乳癌におけるTIM4の発現意義を解析した。TIM4陽性の間質細胞の浸潤は悪性度の高い癌との関連が認められ、予後不良因子であった。興味深いことに、TIM4陽性細胞はリンパ球浸潤領域に頻繁に認められ、腫瘍免疫と関連する可能性が推察された。一方、筆者らは同一症例を用いて乳癌細胞におけるTIM1の発現が予後不良因子であることを見出していたが、間質細胞におけるTIM1の発現は弱く、癌細胞のTIM1の発現が重要であると考えられた。 乳癌組織におけるTIM4陽性間質細胞の精査:乳癌組織におけるTIM4陽性細胞を同定するために、乳癌組織を用いてTIM4および種々の細胞表面マーカーに対する蛍光免疫二重染色を施行した。TIM4はCD68, CD80およびCD11cと強い共局在と認め、乳癌組織においてマクロファージおよび樹状細胞に高発現することが示唆された。 乳癌培養細胞におけるTIM1の機能解析:ヒト乳癌培養細胞株を用いてTIM1の機能解析を行った。TIM1過剰発現ベクターを導入し、TIM1の過剰発現によりMDA-MB-231の増殖が亢進する一方で、MCF-7の増殖は抑制された。遊走能試験の結果、TIM1の発現は遊走能に影響を与えなかった。また、サイトカインの発現への影響を定量PCRによって調べた結果、MDA-MB-231においてTIM1過剰発現によりTGF-βの発現が増加した。続いて、細胞外小胞(EV)添加実験を行うために、当分野で樹立されたエピルビシン (EPI) 耐性を獲得した乳癌細胞の培養上清からEVを単離した。TIM1過剰発現細胞にEPI耐性株または親株由来のEVを添加し、増殖能、遊走能およびサイトカイン発現への影響を調べた結果、TIM1の機能とEVの曝露に関連は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、乳癌組織におけるTIM1およびTIM4の発現意義を明らかにした。当初はマクロファージにおけるTIM1、TIM4にのみに着目する予定だったが、それぞれの分子の乳癌組織における発現分布を精査した結果、乳癌細胞におけるTIM1およびマクロファージにおけるTIM4の役割に着目することとした。本年度に予定していたTIM1の機能解析の結果、TIM1は乳癌細胞の増殖能やサイトカイン発現を制御するが、EVの受容はそれらの作用に影響を及ぼさなかった。 一方で、TIM4過剰発現マクロファージの樹立が難航していることから、本年度予定していたTIM4の機能解析に遅れが生じている。ヒト単球系白血病細胞株THP-1およびマウスマクロファージ細胞株RAW264.7へのトランスフェクションを試みており、TIM4過剰発現プラスミドの再構築やトランスフェクション試薬の検討を重ね、ウェスタンブロットおよび蛍光免疫染色法で発現を解析しているが、発現増加が確認できていない。また、乳癌組織の免疫染色によりTIM4陽性マクロファージが腫瘍免疫に関連する可能性が示唆されたことから、培養細胞では周囲の細胞と相互作用するTIM4の機能を完全には解明できないことが推察される。そのため、マウスモデルによるアプローチに変更することを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
TIM1過剰発現乳癌細胞へのEV添加実験の結果、乳癌の進展においてTIM1のEV受容体としての影響は認められなかったものの、TIM1が乳癌細胞の増殖能やサイトカイン発現を制御することが明らかになった。このことから、TIM1がEVに内包されて周囲の乳癌細胞に送達されることで、同様の機能が発揮される可能性が考えられる。そのため、当初の予定通り、TIM1過剰発現細胞の分泌するTIM1含有EVを乳癌細胞に添加し、TIM1の発現量やその局在、そして増殖や遊走、サイトカインプロファイルなど乳癌細胞の機能に及ぼす影響を調べていく。 一方で、マクロファージにおけるTIM4の機能解析はTIM4過剰発現細胞の作製に難航しているため、受託も視野に入れながら引き続き樹立に取り組みつつ、同時進行で2年次後半に予定していたマウスモデルを用いたアプローチを主軸とすることを考えている。まずはマウスに乳癌細胞とともにマウスTIM4中和抗体を接種し、TIM4が乳癌の進展に与える影響を確認するとともに、EV分泌阻害剤の投与を組み合わせることでEV受容体としてのTIM4の機能を調べる。ただし、この実験はマウス宿主由来のTIM陽性マクロファージが存在することが前提となるため、まずは乳癌モデルマウスの組織を用いてTIM4の免疫染色を行い、TIM4陽性細胞が認められることを確認する。マクロファージにおけるTIM4の機能解析ののちに、TIM4含有EVの送達の意義を検討していく。
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