Project/Area Number |
23K19617
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0903:Organ-based internal medicine and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 誠太郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (90717836)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 皮膚 / アトピー性皮膚炎 / 脂質関連遺伝子 / 新規予防法の確立 / 皮膚細菌叢 |
Outline of Research at the Start |
アトピー性皮膚炎は日本国民の小児の20%が罹患し、成人においても5%の方が罹患する、アレルギー性疾患を代表する国民病です。近年の研究にて、小児アトピー性皮膚炎の発症に、皮膚表面の細菌叢の乱れが関与することが明らかになってきました。特に、病原性を持った黄色ブドウ球菌がアトピー性皮膚炎未発症の小児に定着した場合、将来アトピー性皮膚炎を発症する確率が高くなることが明らかとなり注目を集めています。当研究では、黄色ブドウ球菌が小児の皮膚にどのようなメカニズムで定着するのかを、黄色ブドウ球菌の脂質関連遺伝子に着目して探求し、アトピー性皮膚炎の新規予防法の確立を目指します。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、黄色ブドウ球菌が脂質を中心とした皮膚バリアを克服し、新生児の皮膚に定着する際に重要な役割を果たしている遺伝子を特定し、アトピー性皮膚炎の新規予防法確立への新規創薬ターゲットを同定することである。以下に三つの小項目に分けた研究実績の報告を行う。 ①単一遺伝子変異株を用いた、黄色ブドウ球菌脂質関連遺伝子の重要性の確認 申請者は米国ミシガン大学より、黄色ブドウ球菌トランスポゾン変異ライブラリにて同定した脂質代謝関連遺伝子の単一遺伝子変異株を輸入し、大阪大学医学部動物実験施設において皮膚表面の病原性を評価した。具体的には我々のグループが確立した黄色ブドウ球菌表皮感染マウスモデルを用いて、黄色ブドウ球菌の野生型株と各単一遺伝子変異株による皮膚炎の程度を比較した。その結果、中性脂肪から脂肪酸を切り出すリパーゼの遺伝子変異株と、脂肪酸を代謝して長鎖から短差脂肪酸に分解するβ酸化に関する遺伝子の変異株において、野生型株と比較して有意に皮膚炎が抑制されることを突き止めた。 ②単一遺伝子変異株を用いた、病原性発揮のメカニズムの探索 次に、上記遺伝子がどのように皮膚炎の惹起に関わっているのかを調べる目的で、黄色ブドウ球菌と皮膚に存在する代表的な中性脂肪であるトリオレイン酸を共培養しその上清でマクロファージを刺激する実験を行った。その結果、野生型株とトリオレイン酸を共培養した上清による刺激ではマクロファージからIL-6の産生が誘導されたのに対して、リパーゼ変異株とトリオレイン酸を共培養した上清による刺激では誘導されないことがわかった。この結果から、黄色ブドウ球菌はリパーゼによりトリオレイン酸をオレイン酸とグリセリンに分解することによって、マクロファージから炎症性サイトカインの産生を誘導することを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では当初予定した計画以上に進展していると判断できる結果を得ることができている。その理由としてまず第一に、黄色ブドウ球菌の脂質代謝関連遺伝子の単一遺伝子変異株を用いたマウスモデルの実験にて、当初予想した通り、リパーゼとβ酸化に関わる複数の遺伝子が、皮膚表面に黄色ブドウ球菌を感染させた時の病原性に寄与していることを突き止められた。そして第二に、脂質代謝関連遺伝子の病原性メカニズムを探求するin vitroの実験を行い、皮膚に多く存在する中性脂肪であるトリオレイン酸を黄色ブドウ球菌が分解することによってマクロファージから炎症性サイトカインの産生を誘導することを突き止められたことが挙げられる。 特に後者においては、黄色ブドウ球菌の野生型株のみの上清による刺激ではマクロファージからの炎症性サイトカインの酸性が起こらないこと、黄色ブドウ球菌の代表的な病原因子であるagr欠損株とトリオレイン酸を共培養した場合でもマクロファージからのサイトカイン産生が見られたことを合わせると、脂質関連遺伝子は宿主の脂質を代謝することを通じて皮膚炎の惹起に関わっており、この機序は従来我々が同定し現在世界中で研究されている病原性遺伝子であるagrとは全く異なることを突き止められたことの意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として大きく二つのことを進める必要がある。 第一に、病原性メカニズムがいまだに明らかにできていないβ酸化に関連する遺伝子がどのように皮膚における病原性に関わっているのかを突き止める必要がある。エネルギーとして脂肪酸を利用することによって皮膚炎に寄与しているのか、β酸化によって脂肪酸の長さを短くすることによって宿主の炎症を惹起したり自己への毒性を下げているのか、またβ酸化の下流の遺伝子の働きが重要なのか、そのターゲットを絞って実験計画を組んでいく必要がある。 第二に、ミシガン大学のSunny准教授から譲り受ける新規確立脂腺ノックアウトマウスを用いて、黄色ブドウ球菌に対する防御として、脂腺由来の脂質がどのような働きをしているのかを突き止めることが挙げられる。野生型株による野生型マウスと脂腺ノックアウトマウスに対する病原性の違いと、変異方株による野生型マウスと脂腺ノックアウトマウスに対する病原性の違いを検証することによって、黄色ブドウ球菌が宿主由来のどの脂質と相互作用し、皮膚炎を惹起するのかを突き止められる。 以上の2点を中心に2024年度の研究を進める。
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