小胞体ストレスを介した2型糖尿病による歯周病の増悪制御法の開発
Project/Area Number |
23K19722
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0907:Oral science and related fields
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 千華子 九州大学, 歯学研究院, 助教 (70979377)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 小胞体ストレス / 2型糖尿病 / 歯周炎 / microRNA |
Outline of Research at the Start |
2型糖尿病患者は、歯周炎の発症率や進行度が高く治療に抵抗性である。先行研究では、miR-1260bが小胞体(ER)ストレス応答蛋白であるATF6βの発現制御 を介して歯槽骨吸収抑制効果を示すことを世界に先駆けて発見した。歯周炎モデルマウスではERストレスが誘導されるが、2型糖尿病の原因である肥満もERストレスを誘導し、インスリン抵抗性を惹起する。しかし、ATF6βがインスリン抵抗性を介して歯周炎の病態に影響を及ぼすか否かは不明である。
本研究では、①ATF6βの2型糖尿病患者における歯周炎増悪への関与を検討し、②miR-1260bのERストレス制御による2型糖尿病性歯周炎への治癒効果を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病患者は、歯周炎の発症率や進行度が高く、治療に抵抗性がある。歯周炎モデルマウスでは歯周炎歯肉組織において小胞体ストレス応答遺伝子群の発現が誘導されるが、2型糖尿病の原因である肥満もERストレスを誘導し、インスリン抵抗性を惹起することが知られている。しかし、小胞体ストレスが実際にインスリン抵抗性を介して歯周炎の病態に影響を及ぼすか否かは不明である。私たちは歯根膜細胞においてmiR-1260bが小胞体ストレス関連ATF6βを抑制し、RANKLを制御することで歯周炎歯槽骨吸収を抑制することを過去に発表した。本研究では、歯根膜細胞に限らず、その他歯周炎歯肉組織に存在する細胞に対して小胞体ストレスの制御について検討することとした。 RAW264.7細胞においてsiATF6βがインスリン抵抗性を惹起することが報告されているIRE-1の遺伝子発現を抑制することを明らかにした。RAW264.7細胞において破骨細胞分化誘導因子であるRANKLを刺激するとATF6βの遺伝子発現が誘導されることを確認した。この結果は、歯槽骨吸収と小胞体ストレスが相互関係を示す可能性を明らかにした。これらの結果は歯槽骨吸収を促進させる小胞体ストレスがインスリン抵抗性を惹起し、一方で歯槽骨吸収誘導により小胞体ストレスが誘導される可能性が示唆された。 また、RAW264.7細胞において高血糖処理を行った場合、行っていない場合に対して小胞体ストレス誘導ツニカマイシン刺激によるATF6βの遺伝子発現誘導については明らかではなかったが、siATF6βトランスフェクションによるATF6βの発現抑制が弱まることが確認された。 今後は実際の2型糖尿病患者を想定し、糖尿病マウスモデルを用いた連関について検証を進める必要がある。また、マクロファージ以外の細胞での発現変動や炎症との関連も検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度ではまず、学会参加し、情報収集に努めた。小胞体ストレスを誘導する酸化ストレスと全身性炎症疾患との関連についての情報を得ることができた。また、糖尿病との連関が報告されているNLRP3インフラマソームについてmiR-1260bによる発現制御について国際歯研究学会ニューオーリンズ大会にて報告した。 実験についてはまず、in vitroで慢性歯周炎が小胞体ストレスを介してインスリン抵抗性を惹起させるかどうか、反対に、2型糖尿病を想定した細胞の高血糖状態で小胞体ストレス関連遺伝子が誘導されるか否かについて検証することとした。 RAW264.7マクロファージ細胞を用いてRANKLとATF6βとの相互関係の可能性を示唆した研究結果を示した。ATF6βを介したインスリン抵抗性とも関連報告があるIRE-1の発現制御についても明らかにした。RAW264.7細胞において小胞体ストレス誘導ツニカマイシン刺激により誘導されるIRE-1の遺伝子発現がATF6βノックダウンにより抑制されることを明らかにした。さらにRAW264.7細胞において高血糖状態でATF6βノックダウン効果が弱まる効果は明らかにしたが、高血糖状態において低血糖状態と比べてATF6β遺伝子発現誘導を示す結果を示すことができなかった。マクロファージ以外の細胞における検証を行うか、その他の小胞体ストレス関連遺伝子に着目するか、もしくはATF6βの発現ではなく活性化について検証する必要がある。 in vitroの検証が不十分であったため、糖尿病モデルマウスを用いたin vivo実験については遂行できていない。しかし、in vivoに必要なマウス歯周炎モデル作製及び歯周炎組織への薬剤注入については別テーマの研究遂行により、手技を保っている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroでは引き続き、高血糖条件で小胞体ストレス刺激により、小胞体ストレスマーカーが変動するかを検証する。ATF6βノックダウンにより、炎症性マーカー及び破骨細胞分化促進因子の発現変動が変動するかどうかについて検証する。現在マクロファージを中心として検証を進めているが、歯根膜線維芽細胞、歯肉線維芽細胞についても検証する。 in vivoでは、2型糖尿病モデルマウスを用いた検証が必要である。高脂肪食負荷マウス及び遺伝性肥満2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスを用いる。歯周組織における小胞体ストレス関連遺伝子の発現を検証し、miR-1260b及びsiATF6βの歯周組織への局所投与により歯槽骨吸収抑制へ効果があるか否かをマイクロCTを用いて明らかにする。歯周組織における小胞体ストレス関連遺伝子発現について検証するとともに、マウス脂肪組織でも小胞体ストレス関連分子の発現を検討し、歯周組織の発現プロファイルと比較する。また、miR-1260bについては局所投与と同時に尾静脈投与も行い、2型糖尿病のインスリン抵抗性への効果も明らかにする。ブドウ糖負荷試験(GTT)、インスリン負荷試験(ITT)、空腹時血糖、随時血糖、ELISAによる血清のインスリン測定を行い、歯周炎の進行度と糖尿病の悪化度が相関するか否かを検討する。HOMA-IRを算出しインスリン抵抗性を評価する。 in vivoで得られた結果をもとにin vitroの培養条件で歯周組織関連細胞における高血糖条件におけるLPS刺激により小胞体ストレスが誘導されるかを再検証し、インスリン抵抗性との関連を明らかにする。また、in vivo実験でマウス脂肪組織における小胞体ストレス細胞の変動がみられれば、肥満を想定し、培養脂肪細胞にてTLR-4の内因性リガンドとしての遊離脂肪酸による刺激でも同様の観察をする。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)