Project/Area Number |
23K20032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
1101:Environmental analyses and evaluation, environmental conservation measure and related fields
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 洋太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), ポストドクトラル研究員 (80978825)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 山岳氷河 / インド / アジア高山域 / デブリ氷河 / 水文モデル / リモートセンシング / インドヒマラヤ |
Outline of Research at the Start |
近年世界の氷河は縮小傾向にあるが、中でもヒマラヤ地域における山岳氷河は水資源として非常に貴重な存在である。しかし、ヒマラヤ地域には表面が岩や土砂で覆われたデブリ氷河が多く分布しており、このデブリ氷河特有の複雑な融解過程が山岳域からの流出量の推定に大きな不確実性をもたらしている。本研究ではインドヒマラヤの氷河域を対象として、現地観測・衛星リモートセンシング・氷河融解モデルを組み合わせることにより、既存の手法を発展させることで、高精度にデブリ氷河の融解量を推定する。そして最終的にデブリ氷河を含む対象流域からの流出プロセスを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
ヒマラヤ地域には表面が岩や土砂で覆われた「デブリ氷河」が多く分布しており、このデブリ氷河特有の複雑な融解過程が山岳域からの流出量の推定に大きな不確実性をもたらしている。本研究ではインドヒマラヤの氷河域を対象として、現地観測・衛星リモートセンシング・氷河融解モデルを組み合わせることにより、既存の手法を発展させることで、高精度にデブリ氷河の融解量を推定することを目的とした研究である。 2023年度の8月末から本課題が開始し、年度の後半には主に現地観測データの取得と氷河質量収支モデル、衛星リモートセンシングにおける解析手法の確立に取り組んだ。 現地データの取得のため9月の下旬にインド西部、チャンドラ流域のデブリに覆われたBatal氷河を訪問し、カウンターパート機関であるインド国立極地研究所の研究者とともに現地観測を実施した。その際には氷河上に堆積したデブリ層の中に地温センサーを複数設置することで、デブリ層内の熱伝導過程を調査した。また、氷河上の標高4200-4400mの2箇所に気温計、湿度計、風速計を新たに設置し、簡易的な気象観測を実施した。これらの測器は現在氷河に残置してデータを取得し続けており、2024年度の現地訪問で回収する予定である。 また、現地調査を終えた後には衛星リモートセンシングと質量収支モデルを用いて、デブリ氷河の質量収支の推定にも取り組んだ。Sentinel-2の衛星画像を用いてデブリ氷河の表面流速を10m解像度で算出し、表面標高変化に関するデータと組み合わせることにより質量収支を推定した。そして再解析気象データを入力としてモデル推定した氷河質量収支と、前述のリモートセンシングより推定した質量収支との比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は初めて調査対象地域に訪問したため、ロジスティクス面で課題があったものの、気象測器やデブリ層の温度計など必要最低限の測器を設置することができたと考える。これらの測器は現在もデータを取得し続けているため、2024年度に再度訪問し通年に渡るデータを取得することができれば、氷河融解モデルの入力値や計算過程をより現実の環境に近いものに補正することが可能となる。そして、現地ではカウンターパートであるインド局地研究所の研究者たちとも交流し、対象地域の特性や今後の研究方針などに関して議論をすることもできた。 また、リモートセンシングによる質量収支推定のパートに関しても、本課題の解析対象地域や空間分解能に適した計算コードを構築することが出来た。2024年度には高解像度のデジタル標高モデルを購入することで、より精緻な質量収支計算を行うことができる。そして、デブリ氷河の融解モデルに関しても、再解析気象データ(ERA5)を入力として使用し、対象領域内の氷河融解量と流出量を推定することに成功した。 以上の理由により、本課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
観測データの取得に関しては、2024年度の6月に再度現地を訪問し、昨年度Batal氷河に設置したデブリ層内の温度分布や気象要素の観測データを回収する予定である。また、2024年度は長波・短波放射、風向風速計等の測定項目を追加した自動気象計を氷河上に設置する。そして、デブリ層内には追加の地温計と土壌水分計を設置することで、デブリ層の熱伝導特性とデブリの含水の関係を調査し、デブリ氷河融解モデルに組み込む予定である。 リモートセンシングによる氷河質量収支の推定に関しては、Pleiades-1の高解像度衛星より得られたデジタル標高モデル(DEM)を購入し使用することで、より精緻な氷河流動速度分布と標高変化速度を推定する。その結果より、Batal氷河のデブリ域における融解分布を2m解像度で推定する予定である。 デブリ氷河融解モデルに関しては、現地で取得したデブリ層の鉛直温度分布を参照データとして、デブリ層内の熱伝導過程の補正に取り組む予定である。そして、改良したデブリ氷河融解モデルを用いて推定した質量収支分布と、前述のリモートセンシングにより推定した質量収支分布を比較することにより、モデルの検証と補正に取り組む。また、この際には領域気象モデルWRFを用いて1km解像度にダウンスケーリングをした気象データを入力として使用する予定である。 そして、最終的には上述の補正を施した新たな「デブリ氷河融解モデル」を用いて、Batal氷河を含むチャンドラ流域からの近年の流出量とその季節性、流出特性を推定する予定である。
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