近世宮廷絵師の地方展開・関係、およびそこにみる画壇構造の解明に向けた基礎研究
Project/Area Number |
23K20069
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Project/Area Number (Other) |
20H01211 (2020-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2020-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
福田 道宏 広島女学院大学, 人間生活学部, 教授 (10469207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 真弓 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (10449556)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2020: ¥11,050,000 (Direct Cost: ¥8,500,000、Indirect Cost: ¥2,550,000)
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Keywords | 宮廷画壇 / 絵師 / 官位 / 宮廷 / 中央と地方 / 美術史 / 日本史 / 墓碑 / 絵馬 / 僧位叙任 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、宮廷画壇とその絵師たちの営為を通じ、京都とそれ以外の地方との関係性を明らかにするとともに、そこから宮廷画壇の画壇構造を探ろうとするものである。本研究で言う「関係性」とは、中央から地方への単方向ではなく、地方の絵師や絵師志望者が京都を目指し、さらに宮廷に進出し、宮廷画壇の一角を構成するにいたり、また地方の絵師が宮廷および宮廷絵師との関係を由緒に用いるなど双方向、もしくは複数の地方と中央の多方向の、交流と循環を含む、より広い意味でのそれである。本研究ではその具体相を明らかにしようとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中央と地方という視角から、宮廷画壇とその絵師たちの京都以外の地方への展開に焦点を合わせ、その関係から画壇構造を探るものである。地方は中央の絵師の作品やその作風を享受・消費するだけの場ではなく、双方向、もしくは多方向の関係としてとらえるべきと考える。それは、ひとつには宮廷画壇が京都生え抜きの絵師の集合体ではなく、絶えず京都以外の地方から新たな絵師が供給され、彼らの存在により活性化し、それが地縁を通じて再び地方に影響を波及させるという関係性で成り立っていたことが垣間見えるからである。そこで、本研究では地方に残る宮廷絵師の足跡とともに、地方にあって、宮廷絵師と師弟関係を結んだ、もしくは宮廷絵師の門弟と名乗った絵師の事績の確認を作品と史料の両面から行っている。 2021年度は、前年度に引き続き新型コロナ感染症の流行による行動制限もあって、遠隔地での実地調査は思うようにできなかったが、文献調査・情報収集の傍ら感染蔓延状況もふまえて近隣県と福岡県・大分県での調査も行った。なお、年度当初には兵庫県丹波市・丹波篠山市での調査を実施予定であったが、感染拡大を受けて県境をまたぐ移動の制限によって直前に実施を延期せざるを得なくなった。ほかにも遠隔地の実地調査準備を進めていたものもあるが、社会状況を見計らい、2022年度に実施することにせざるを得なかった。あわせて文献資料の収集に努め、これまでに調査した絵馬写真を研究分担者と共有し、情報共有を行った。 2022年度に繰り越した実地調査としては、岡山県児島市・大阪府岸和田市・兵庫県赤穂市・島根県津和野町から益田市・浜田市のかけての石見地方・岡山県津山市・広島県府中市などでの社寺・美術館・博物館などの調査を行った。ほかに出張申請を行わない予備調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実地調査が思うに任せなかった点はあるが、その分、これまでの調査成果の整理と分析を行うことができた。21年度中の実地調査では福岡県豊前市・大分県中津市で海北友倩について調査し、美術館での情報収集と神社の絵馬の調査を行った。友倩は近世初頭の海北友松後裔で幕末まで宮廷絵師として存続する海北家と同姓で、豊前での事績が知れるが京都海北家との関係は不明。中津市に代表作(寺院)や豊前市に絵馬(神社)が知られるが、前者は例年行っている一般公開を中止、後者は社頭に掲げられておらず、実作品の調査はできなかった。別の複数の神社で今後近世絵馬の調査に協力を得られることになった。また後日、帰任後、友倩作品1点(個人蔵)を調査した。近隣県では近世宮廷側史料から神職の叙任がわかる島根県津和野町の鷲原八幡宮で古記録を調査した。同社宮司は現在、町内の総霊社宮司が兼帯するが、近世の神職の家は石見地方の別の神社で存続するとご教示を受け、鷲原八幡宮拝殿の絵馬・額、境内の長崎派絵師の石碑など今後の調査をご承諾いただいた。岡山県笠岡市の市立竹喬美術館では近代画家第一世代で、近世宮廷絵師円山派・四条派の掉尾をかざる幸野楳嶺門下の谷口香キョウの100年ぶりの回顧展で宮廷絵師の終焉を確認した。 22年度は広島県府中市金龍寺で、同地で数代にわたって宮廷絵師鶴沢家門弟として僧位に叙され、阿部家の御用もつとめた片山家歴代の墓所の3Dスキャナ・拓本での実地調査を行い、住職と今後の調査協力を約した。岡山県児島市では藩主池田家とともに備後阿部家ともかかわりがあった野崎家の資料館で岸駒や阿部家藩儒菅茶山の作品を実見できた。また親藩である岡山県津山市では、京都以上にもう一つの中央である江戸との強い関係を確認できた。 文献調査も継続し、国会図書館で各地の文化財調査報告書を閲覧するとともに、21・22年度の実地調査を行った古記録の翻刻なども行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は21年度までに実施できず繰り越しにしたものも含め、実地調査を行うことが出来たものもある一方で、すでに準備を進めていながら実施できていないもの、22年度に実施するつもりで準備していたが、21年度分を優先したために22年度中に実施できなかった実地調査もある。また、これまでの実地調査で一度の限られた日数の調査ではすべて調査することが出来ず、継続の必要のあるものもある。 そこで残り2箇年度で成果をあげるために、或る程度優先順位をつけて実地調査を行うこととしたい。具体的には、実地調査先について、予備調査や既に行った実地調査の継続などで調査についての承諾を得られているもの、成果の見込まれるところを優先し、未調査の調査先についてはこれまで以上にあらかじめ精査してから実施する。なお、現地に行ってから初めて追加調査の必要がわかる場合もあり、遠方で取り漏らしのないように余裕を持った日程を組むことにする。 また、墓碑などの3Dスキャン・拓本や、赤外線カメラでの調査の場合、同行する調査協力者がいないと作業困難な調査条件であることも多いため、アルバイト雇用を行うなどして作業効率を上げることも行っていきたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)