Provenance study of pottery used for salt processing, excavated from Japanese ancient capitals
Project/Area Number |
23K20121
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Project/Area Number (Other) |
20H01364 (2020-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2020-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
神野 恵 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 室長 (60332194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 明大 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 上席研究員 (20290934)
森川 実 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (30393375)
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部考古室, 室長 (40280531)
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 主任研究員 (70416410)
若杉 智宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70511020)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥15,730,000 (Direct Cost: ¥12,100,000、Indirect Cost: ¥3,630,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2020: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
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Keywords | 製塩土器 / 奈良時代 / 律令制度 / 焼塩 / 苦汁 / XRF / 生産地推定 / 赤穂コールドロン / 律令期 / 変質火山岩 / 全資料型蛍光X線分析装置 / 焼塩土器 / 胎土分析 / 岩石鉱物 / プレパラート / 岩石鉱物学 / 飛鳥時代 / 産地推定 / 租庸調 / 古代史 / 古代の土器 |
Outline of Research at the Start |
四方を海で囲まれた日本列島の人々は、海水から塩を作り、利用してきた。人々の生活や家畜の飼育などに、塩は欠かせない必需品であり、その生産と流通の管理は支配階級にとっても死活問題であった。本研究の目的は、律令制下での塩流通の実態を、木簡と製塩土器の両側面から検討するためのデータを得ることである。10万人とも言われる人口を抱えた巨大都市平城京は、海のない奈良盆地に築かれた。都市民の生活を支えた塩は、どのような塩で、どこから、どのように運ばれ、どのように使われたのか。この解題には日本列島の人々の生存をかけた知恵と工夫から古代国家の形成に至るまでの壮大なヒントが隠されていると言える。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は平城京西大寺食堂院出土製塩土器資料について、考古学的手法による肉眼観察から、芸予地方で出土した製塩土器と比較検討をおこなうとともに、製塩土器に関する検討会を開いた。その結果、芸予地方のものと確実に言えるものは少ないものの、可能性は否定できないことや、周防灘周辺に流通する六連島式の製塩土器が一定量、宮都に流通していることがわかった。岩石鉱物学的な手法による生産地推定では、播磨国の布勢駅家跡である兵庫県小犬丸遺跡の製塩土器について、兵庫県立考古博物館の協力を得て、プレパラートを作成し、分析をおこなった。その結果、西大寺食堂院資料のなかでもきわめて厚手で大型の砲弾形タイプのⅠ-a類に近似することが明らかとなった。このⅠ-a類によく似たタイプの製塩土器は、兵庫県下でもあまり見つかっておらず。これらの製塩土器が西播磨地域産である可能性が高まったといえる。一方で、赤穂コールドロン由来の可能性を考えた変質火山岩類を多く含むⅠ-e類については、小犬丸遺跡資料との近似性が確認できなかったため、さらに候補範囲を広げた検討が必要となった。 また、西大寺の製塩土器に付着する白色物質について、全資料型蛍光X線分析装置を用いた元素マッピングをおこなった。その結果、白色物質の分布と整合的な分布を示す元素としてCaとSが挙げられることがわかった。海から生成される塩は、一定の苦汁成分を含むことから、白色物質は苦汁由来の硫酸カルシウムの可能性が推察される 。これまで製塩遺跡などで確認される膜状の白色物質については、不溶性の炭酸カルシウムと推定されてきた。この西大寺製塩土器資料についても、水漬け状態の埋蔵環境であったことを考慮すると、難溶性の硫酸カルシウムが土中に残りえるのか?といった疑問も残る。今後はX線回折をおこなうなど、追究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで考古学的観察による分類(Ⅰ-aからⅠ-f、Ⅱ-aからⅡ-gの13グループ)の製塩土器のうち、出土量が多い主要な8グループについて、岩石鉱物学的分析結果と照合した結果、おおむね整合的であることが確認された。整合的でない資料については、考古学的分類では同じグループ(Ⅱ-d類)としているものの、様々な生産地のものが一括りになっていることなどが明らかとなった。このことは、地質学的には異なる地域で、同じような形の製塩土器を作っていることを示す点でも興味深い成果であるといえる。さらに、Ⅰ-a類についても岩石鉱物学的分析からは西播磨地域の可能性が高いことを明らかにすることができた。このグループについては、平城京で出ているような大型品は、当該地域ではほとんど出土していないため、考古学的観察からは強く推定することが難しかったが、岩石鉱物学的データとは矛盾がないことが確かめられたことがもつ意義は大きい。平城京に向けた製塩土器は法量が大きかったことを示すと言える。また、製塩土器の形は違うが、胎土が似ている製塩土器については、岩石鉱物学的分析結果から系譜的に連続性があることが確認できた。これは墾田永年私財法施工後の塩生産の変質が塩を運ぶ運搬具としての製塩土器の形態の変質をもたらしたことも論じることができる基礎データを得ることができたといえる。このように岩石鉱物学的分析結果を、考古学的分析にフィードバックした製塩土器研究が着実に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、変質火山岩類を多く含むⅠ-e類と赤穂コールドロンとの関係性をさらに追究したい。製塩土器の内型作りが、北部九州から瀬戸内海沿岸地域のどのあたりまで波及していたのか?という問題と関わるためである。Ⅱ-dは大阪湾沿岸地域の生産地を推定していたが、岩石鉱物学的にはグループ内のバラツキが大きいことが指摘されたことから、再び考古学的観察による分類を再検討し、難波宮など摂河泉の資料や淡路島を中心に資料収集をおこない、再検討を進める必要がある。 さらに、焼塩実験などをおこない、海から生成した塩の潮解や土器による運搬、焼塩などの各工程が考古資料に与える影響を予測し、その視点を考古資料の観察に還元していきたい。塩や苦汁、製塩土器は当時の人々にとっては、重要な栄養素であり、さまざまな局面で利用されるマテリアルであったと考えられる。例えば、製塩土器胎土中に苦汁成分に由来する可能性が高い化学物質が残存していることは、今後の製塩土器および苦汁の利用に関する研究の幅を広ける内容であると考える。具体的には、製塩土器の下半分がほとんど出土しない点について、苦汁や砂礫を含む製塩土器を版築などをおこなう際に、建築資材として再利用した可能性を検証できる可能性が浮上したといえる。この点については、古代寺院の版築剥ぎ取り資料などをターゲットに、全資料型蛍光X線分析装置を用いたさらなる研究に進展させていきたい。
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Report
(4 results)
Research Products
(6 results)