日本植民地統治下台湾における教育の「植民地性」再考―共時的・通時的比較分析
Project/Area Number |
23K20171
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Project/Area Number (Other) |
20H01627 (2020-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2020-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
駒込 武 京都大学, 教育学研究科, 教授 (80221977)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 植民地 / 教育 / 台湾 / 沖縄 / 奄美 / 朝鮮 / 学校教育 / 職業選択 / 知識人 / 日本 / 中国 / 学校 / 南洋 / 琉球弧 |
Outline of Research at the Start |
近代日本において一般的に「植民地」あるいは「外地」とされるのは、台湾、朝鮮、樺太、関東州、南洋群島である。ただ、植民地主義的な施策は、微妙なグラディエーションをはらみながら「内地」と呼ばれた地域にも浸透していたと考えられる。「内地」と「外地」における統治構造の違いをリアルにふまえながら、「内地」の辺境にも通底する問題として「植民地性」をどのように捉え、記述すべきなのか?また、日本植民地支配に後続する中華民国支配下の台湾はどのような意味で「植民地性」をそなえていたといえるのか? 教育歴による社会的上昇移動の制限というる観点を中心として「植民地(性)」を再定義することが、本研究の課題である。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては、日本植民地統治下台湾における「植民地性」を同時代の奄美・沖縄・台湾・朝鮮などと比較史的に分析するための研究会および資料調査を下記のように開催した。なお、新型コロナ感染症への対応のために、年度当初に予定していた台湾調査については実施を見送った。 ・第1回 2022年5月22日に京都大学で開催。基本的にオンラインで行ったが、研究協力者の鳥山淳氏(琉球大学教授)は大阪での資料調査のご予定もあったので京都に招へい、京都大学で研究会にご参加いただいた。 ・第2回 2022年7月3日に京都大学で開催。基本的にオンラインで行ったが、鳥山淳氏は大阪での資料調査のご予定もあったので京都に招へい、京都大学で研究会にご参加いただいた。 ・第3回 2022年9月23日・24日に奄美図書館で資料調査を実施。1920年代から1930年代の奄美における政治・社会状況と教育問題を考えるための基本的な資料である月刊『奄美』を調査する作業を鳥山淳氏とともに行った。これらの調査から奄美出身者で植民地統治下の台湾で高級官僚としてのキャリアを築いた者が少なくないことを確認、今後、これらの人物のデータベース化の作業を進める必要性を認識した。 ・第4回 2023年3月5日に京都大学で開催。鳥山淳氏のほか小川正人氏(北海道博物館・研究部長兼アイヌ民族文化研究センター長)を招へい、京都在住の冨山一郎氏(同志社大学教授)、板垣竜太氏(同志社大学教授)らを招いて研究会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症拡大により本研究計画において必須の意味をもつ現地調査が困難となったために、資料調査は予定よりも遅れ気味である。他方、地域を越えた比較研究のための分析概念の整理は進捗しつつある。 分析概念としては、「知識人」という言葉の重要性が浮かび上がった。エドワード・サイードは「公衆に向けて、公衆になりかわって、メッセージなり、思想なり、姿勢なり、哲学なり、意見なりを表象=代弁したり、肉付けしたり、明確に言語化できる能力にめぐまれた人間」というように定義している。この定義は有効であるものの、教育経験との関係をどう考えるかという点が曖昧である。 「知識人」は同年齢集団の中で相対的に高学歴であることが一般的である。だが、台湾共産党のリーダーとなった謝雪紅(1901-1970)のように、幼少時に文字を学ぶ機会を奪われていた女性も存在する。サイードは権力による人権侵害に対して断固として抗議し、勇気を持って闘うことを「知識人」の特徴として重視しているが、抵抗との関係の中で教育経験の持つ意味は両義的であり、一方で抵抗のための言語能力を付与すると同時に、他方で権力に従順とするための規律・訓練をもたらしもする。 職業との関連という点では、教師、医師、記者、弁護士などの専門職にある者が「知識人」の予備軍を構成する。だが、教師や医師が常に「知識人」として行動するわけではなく、逆に台湾議会設置請願運動を領導した林獻堂(1881~1956)のように地主という社会的な地位で知識人として行動した者もいる。それでも全体としては教育機会の拡大と、専門職の増大が、「知識人」予備軍の裾野を徐々に広げていったといえるだろう。今後はさまざまな地域の多様なケースに即して「知識人」の存在形態と、行政とのかかわりを追及していくこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、次のような研究会の開催を予定している。 ・6月および11月にアイヌ史の専門家である小川正人氏(北海道博物館・研究部長兼アイヌ民族文化研究センター長)と鳥山淳氏(琉球大学教授)を京都に招へいして研究会を開催する。 ・7月に台湾史の専門家である呉叡人氏(台湾大学台湾史研究所副研究員)を京都に招へいして公開の講演会とシンポジウムを開催する。講演会においては、台湾における知識人の思想的な伝統について、連温卿(1894~1957)と史明(1918~2019)という2人の人物に着目してご講演いただく予定である。連温卿はエスペランティストであり、台湾民族主義者であり、社会主義者でもあった人物、史明は連温卿の同志を父として生まれ、中国大陸における社会主義革命に参加したものの、中国革命への幻滅から台湾独立運動に転じて『台湾人四百年史』を著したことで知られる。この2人の足跡をつないでみることで、台湾における「知識人」のあり方と、台湾をめぐる「植民地性」がどのように関係しているかを考える機会としたい。シンポジウムにおいては、集団的(民族的)な自己決定権という概念を手がかりとして、台湾における「植民地性」と沖縄における「植民地性」をつなげて論じることのできる場を設けたい。 ・9月に奄美大島において奄美出身で台湾・朝鮮などの植民地において官僚としてのキャリアを築いた人物にかかわる資料調査を行う。 ・12月に韓国から植民地朝鮮教育史の専門家である呉成哲氏(ソウル師範大学教授)を招いて台湾と朝鮮との比較にかかわる研究会を開催する。
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Report
(3 results)
Research Products
(2 results)
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[Book] 台湾研究入門2020
Author(s)
駒込武
Total Pages
360
Publisher
東京大学出版会
ISBN
9784130362771
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