Project/Area Number |
23K20283
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Project/Area Number (Other) |
20H02917 (2020-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2020-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38030:Applied biochemistry-related
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
稲葉 靖子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (80400191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 光彦 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 研究員 (30783013)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,550,000 (Direct Cost: ¥13,500,000、Indirect Cost: ¥4,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2020: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
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Keywords | 発熱植物 / 環境シグナル / シアン耐性呼吸酵素 / ミトコンドリア / 適応進化 |
Outline of Research at the Start |
発熱植物は、短期・長期的な2つの機構を働かせることで細胞呼吸を活発化させ、発熱を誘導する。短期的機構は、環境の変化を認識してAOXを介して呼吸量の増加を促す早い機構であり、環境シグナルの受容・情報伝達、ミトコンドリア呼吸鎖が重要な役割を担う。長期的機構は、花へと分化する始原細胞がその成長過程で発熱ポテンシャルの高い細胞を作り上げるための機構であり、AOXの高発現、ミトコンドリアの量的効果、細胞質オルガネラ密度の上昇などは、この長期的機構による。本研究では、発熱植物の代表種であるソテツとサトイモ科植物を用いて、植物の発熱を誘導する短期・長期的機構の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、植物熱生産を誘発する環境シグナル受容・伝達機構(短期的機構)と適応進化プロセス(長期的機構)の解明を目指すものである。4年目の当該年度においては、短期的機構と長期的機構の各々について、重量な成果を得ることができた。 ●短期的機構に関する実績 ザゼンソウ(Symplocarpus renifolius)では、花序の発熱ステージと雄しべの発生学的変化には密接な関係がある。本研究では、熱発生時に発現上昇する糖輸送体SrSTP1とSrSTP14に注目した。両STPは、花序の中の雄しべで発現が高く、ヘキソースを輸送した。また、両STPは主に細胞膜に局在して、in situハイブリダイゼーションによりSrSTP14のmRNAは発熱期花序の葯内の小胞子で観察された。これらの結果から、SrSTP14が花粉前駆細胞へのヘキソース取り込みを介して花粉の発生に関与する可能性を示唆した(Physiol Plant, 2023)。 ●長期的機構に関する実績 ザゼンソウ属には、発熱性S. renifoliusと非発熱性S. nipponicusが存在する。仮に、ザゼンソウ属の花の発熱が寒冷適応に寄与しているとすれば、氷河期には発熱種は非発熱種よりも生育域が広くなり、現在の個体群の遺伝的多様性が高まることが予想される。これを検証するため、過去の環境における分布、遺伝的多様性、葉緑体およびゲノムの集団構造を、2つの植物で比較した。その結果、最終氷期には、S. renifoliusの分布は拡大して、S. nipponicusの分布は減少して、S. renifoliusの遺伝的多様性はS. nipponicusよりも高かった。このことから、Symplocarpusの花の発熱が、氷河期における分布拡大に寄与して、寒冷適応による遺伝的多様性の増大をもたらしたことを示唆した(Ecol Evol, 2023)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該科研費の研究期間当初は、コロナ禍により、発熱植物であるザゼンソウやソテツの調査・サンプリングを実施できない期間が続いたため、研究の進捗に大きな遅れが生じた。しかしなら、その後、研究代表者、分担者、および当該研究に関係するメンバー全員による精力的な研究/調査活動により、ザゼンソウとその近縁属種およびソテツのゲノム解読とRNA-seq解析に関して十分なデータを積み上げることができ、また、当該研究の目標を達成するうえで必要な生化学的・分子生物学的・形態学的解析の基礎技術を確立することができた。したがって、現在までの進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
5年目の今年度は、本科研費の最終年度に当たる。昨年度までに、ザゼンソウ(Symplocarpus renifolius)の全ゲノム、近縁属2種、およびソテツのドラフトゲノム解析をほぼ完了するとともに、ザゼンソウ属やソテツ科の植物を用いたRNA-seq解析により発熱期やステージで発現変動する主要遺伝子の同定にも成功した。併せて、サトイモ科植物の葉や花序からプロトプラストを単離して一過的遺伝子発現による遺伝子機能解析系の確立を行い、当該プロトプラストや植物や酵母のモデル系を用いた遺伝子機能解析を行った。当該内容を踏まえ、今年度は、以下の内容について、精力的に研究を行い、本プロジェクトの取りまとめと論文化を進める。 ①ザゼンソウのRNA-seq解析により、低温に応答して発現変動が明らかとなった遺伝子群について、Gene ontologyおよびPathway等の解析を行い、論文化を目指す。 ②ソテツ小胞子葉(発熱組織)と小胞子のう(非発熱組織)の比較プロテオーム解析により、小胞子葉で蓄積レベルが高かった複数タンパク質の機能解析を行い、論文化を目指す。 ③ザゼンソウおよび近縁種間のゲノム構造比較により、ザゼンソウ属の発熱性と非発熱性に関与する配列を明らかとして、論文化を目指す。
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