Project/Area Number |
23K20519
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Project/Area Number (Other) |
21H00597 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
吉村 作治 東日本国際大学, 経済経営学部, 総長 (80201052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢澤 健 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (10454191)
高橋 寿光 金沢大学, 新学術創成研究機構, 研究協力員 (30506332)
柏木 裕之 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (60277762)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
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Keywords | 古代エジプト / メンフィス・ネクロポリス / 考古編年 / テーベ・ネクロポリス / ダハシュール北遺跡 / 新王国時代 / 墓 / 遺構 / テーベ / アンフォラ / ポスト・アマルナ |
Outline of Research at the Start |
古代エジプトの最盛期の新王国時代には上エジプトのテーベと下エジプトのメンフィスという2つの中心があった。当時の歴史の包括的な理解にはこれら2地域の関係を知ることが重要だが、メンフィス地域の資料は少なく、膨大な資料のあるテーベ地域の情報に偏っている。 本研究は第1に、こうした偏重を解消するために新王国時代のメンフィス地域の考古編年を構築する。第2に、その成果をテーベ地域と比較し、両地域の共通性・差異を明確にした上で、その傾向が生み出された背景について考察を加える。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、欠落していた新王国時代のメンフィス地域の墓地出土資料による考古編年を構築し、テーベ地域との比較を通して両者の異同を明らかにし、その違いを生み出した原因を探ることである。 メンフィス地域の考古編年の構築では、新王国時代を通じて使用された墓地ダハシュール北遺跡の資料を対象にして実施される。計画の3年目にあたる2023年度には、アンフォラを中心とした土器編年の構築、墓の遺構のタイプ分類とその通時的変遷の分析、木棺、シャブティの編年のための分析が継続して実施された。特に進展があったのは墓の遺構の分析に関してである。新王国時代第18王朝では竪穴の長軸方向、部屋の掘削する方向に関してばらつきがあったが、第19王朝後期以降では、竪穴の長軸は東西方向で、西側の部屋を指向する傾向が看取された。地下2層の墓の場合、第18王朝では2層目を1層目の地下室から掘削するが、19王朝後期以降では1つの竪穴から上下2層の部屋が掘削されていた。竪穴の長軸方向について、同じメンフィス地域に属するサッカラ遺跡の傾向を調べたところ、同様にラムセス朝期(19、20王朝)は東西方向が圧倒的に多いことがわかり、メンフィス地域に共通した傾向である可能性が示唆された。そして、東西軸、西部屋が指向された背景として想定されたのは、ラムセス朝期の王墓に見られる変化である。19王朝後半以降の王家の谷の王墓は直線的な構造であり、墓の主軸が太陽の通り道を象徴することが、壁面装飾の構成から指摘されている。この場合、埋葬室は象徴的西=日没の方向・冥界とされ、入口は象徴的東=日の出の方向・現世であり、被葬者である王は太陽と同一化され、日没=死と日の出=再生のサイクルを永遠に繰り返す存在として表現される。この死と再生の概念が、当時の貴族にも共有され、メンフィス地域に持ち込まれ、墓の構成に影響を与えていたことが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はエジプト北部の行政の中心であるメンフィス地域の墓地出土資料を用いて考古編年を構築し、それを宗教的中心だったテーベ地域と比較して、当時の社会や来世観の変化を読み解くことが最終的な目的である。本年度は墓の遺構の通時的変化を提示しただけでなく、その背後にある宗教観の変化について、テーベ地域の王墓からの影響が想定されたことは、重要な成果と言える。墓の遺構は考古編年のコアとなる土器、木棺、シャブティなどの共伴関係を明らかにするものでもあり、今後分析を進めていく上で重要な基礎が作られた。この成果については2023年度の日本西アジア考古学会において発表された。 一方で、本年度1月から3月に予定されていたダハシュール北遺跡での発掘調査は、エジプト政府からの許可が降りず、実施することができなかった。そのため急遽、日本隊によって実施されていたギザ台地西部墓地の発掘調査に参加し、比較として古王国時代のマスタバに付随するシャフト墓の調査を実施した。この過程で、墓の遺構の全天球カメラと通常のカメラを併用した写真測量を実施し、高解像度でシャフト墓の3Dデータを作成する手法が確立された。さらに、Googleが公開しているライブラリmodel-viewerを用いて3Dデータをウェブブラウザを利用して簡便に表示する仕組みを取り入れた。これによってシャフト墓の3DデータをWEB上でインタラクティブな形で提示することができるため、今後の研究成果の情報公開における活用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の最終年度では、ダハシュール北遺跡の資料を用いた編年について、墓の遺構、土器、棺、シャブティなど遺物の種類ごとにまとめ、査読誌への投稿を実施する。査読結果のフィードバックを受けて、編年の議論を深化させていく。また2023年度に実施することができなかったダハシュール北遺跡の調査を夏期に実施する。例年通り2月前後にも実施し、資料の充実を図る。ただし、これらはエジプト観光・考古省からの許可次第であるため、許可が下りなかった場合は現状の資料でまとめ考察により時間をかける方策をとる。最後に、メンフィス地域の編年とテーベの資料を基礎にした既存の遺物編年研究との比較を行う。二大拠点地域の遺構・遺物にみられる通時的変化の関係から、当時の社会状況や来世観の変遷について考察する。これらの成果をまとめ、次年度に本研究の最終的な成果を研究発表、論文によって公開する。
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