Project/Area Number |
23K20648
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Project/Area Number (Other) |
21H00782 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
阿部 利洋 大谷大学, 社会学部, 教授 (90410969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 素二 総合地球環境学研究所, 研究部, 特任教授 (50173852)
坂部 晶子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (60433372)
クロス 京子 京都産業大学, 国際関係学部, 教授 (40734645)
松浦 雄介 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (10363516)
近森 高明 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (10411125)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥15,210,000 (Direct Cost: ¥11,700,000、Indirect Cost: ¥3,510,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
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Keywords | グローバルジャスティス / 集合的なニーズ / グローバル正義 / 比較社会学 / グローバルな正義 |
Outline of Research at the Start |
冷戦後の世界では、グローバルな正義の制度的実践がますます要請されるようになっている。これまで主に、政治学・政治哲学の分野で「普遍的なルール策定の根拠を提供する理論研究」が、人類学・地域研究の分野で「グローバル規範に対するローカルの反応を相対主義的な立場から考察する実証研究」が、それぞれ蓄積されてきた。それらに対し、本研究では①集合的なニーズや権利に関わる文脈でグローバルな正義が要請される複数事例の比較検討を通じて、②グローバルな正義の社会的機能を説明する理論モデルを構築し、学際的な議論の深化に貢献するとともに、制度設計の新たな方向性を提示することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、紛争後、民主化後、ポストコロニアル、改革期の社会主義、テロとの闘いの前景化といった文脈を有する社会の事例を取り上げ、「グローバルな正義の制度的実践が、どのような社会的影響を及ぼすか」という問いを課題として設定している。とりわけ集合的なニーズと権利が関わる制度・規範に焦点をあて、①「普遍主義的なルールや意味が公式の目的とは異なる形で社会に及ぼす影響」、その下で②「正義の制度的実践が社会変容に対して果たす機能」、その過程に生じる③「社会内部における制度的実践に伴う連鎖的反応」の観点から各調査地で具体的なデータを収集する。これらを機能・集合・期待・伝播といった社会学的な分析概念を用いて比較検討し、関連分野の認識とは異なる理論モデルを提出することを目的とする。 2023年度は、南アフリカ(有用植物に関する知的所有権・コイ民族団体における利益配分プロセスの実態、2月)、カンボジア(7月総選挙に関する選挙活動の諸側面、8月)ケニア(グローバル正義に関する制度の社会的影響、8月)、フランス・イギリス(文化財返還、8月)、フィリピン(アテネオ大学・人権侵害被害者記憶委員会・英雄記念館、1月)のにおける現地調査を実施した。中国における1940-50年代生まれのライフヒストリー調査はオンラインで行った。 また、7月と12月の国内研究会では、それぞれ、立命館大学の足立研幾氏から「グローバルな規範とローカルな論理―人間の安全保障規範の伝播、普及、形骸化を事例として」、東京外国語大学の青山弘之氏から「シリア内戦をめぐる多元的正義」というタイトルで報告をいただき、本研究会のテーマに関して、グローバルな正義を主導する西側先進国の思惑とは異なるポリティクスの実態について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで3年間の継続調査を通じて、班員各自の担当地域における質的データは一定程度の蓄積をみている。また、外部講師の専門領域を通じた関連トピックの共有により、本研究会の理論的フレームワークが以下のように明確化されてきた。 冷戦終結後の国際秩序はグローバル正義という視点によって方向づけられてきたが、昨今の国際情勢には、その方向性に変化の兆しをうかがうことができる、という認識が本研究会における比較研究の出発点である。そのうえで、おおよそ2010年代半ばまでに現れた、南北間の平等や人権保護、紛争をめぐる正義の実現を取り上げ、その規範的普遍性を提示しようとする政治学・政治哲学的な研究、さらには2010年代以降提起されてきた、実質的には欧米諸国が主導するグローバル正義を批判的に捉え、その規範・制度が実施される現場の実態に焦点をあてる地域研究・人類学的な研究に対して、独自の視点・アプローチを提示する必要がある。(後者については、とりわけ、「グローバル正義が適用される(主に「南」の)国々では、それは個々の文脈のなかで様々に改変され、(主に「北」側が期待する)当初の目的から逸脱する事例も散見される」点に着目できる)。 本研究会において現在までに共有されつつある理論的な接点が「これまでグローバル正義を適用されてきた側が、グローバル正義の変容・再構築に働きかける」メカニズムである。この視点の重要性は、上記の地域研究・人類学的研究においても断片的に指摘されていたが、実証的な事例分析とともに提示する研究はほぼ手つかずであったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、各フィールド(南アフリカ、ケニア、中国、フィリピン、フランス、イギリス)における短期的な補足調査(8月)を踏まえて、成果公開へ向けた論文執筆に従事する。 上述の通り、「これまでグローバル正義を適用されてきた側が、グローバル正義の変容・再構築に働きかける」メカニズムの実態把握と比較検討が共通の課題であるが、そこにグローバルサウスという観点・概念を加えることが可能であるかどうか、という視点にも理論的な関心を置いている。この概念に関しては、グローバルサウスの声サミット(2023年1月)で開催国インドのモディ首相がグローバルサウスの牽引役を自認し、同年に、中国の習近平主席も「中国は他の発展途上国と一蓮托生である」と明言、その後2024年1月から拡大BRICSが始まるなど、新興国・途上国同士が関係を強化し、政治的アクターとして国際社会に影響を及ぼそうとする動きは徐々に可視化されつつある一方で、当該枠組みに含められる国々の間にみられる種々の不一致や、BRICS諸国がその概念に対して示す政治的な振る舞いから、用語の使用に反対する意見を引きだすなど論争を呼んでいる。このように、一連の調査地域に対してグローバルサウスという位置づけが妥当であるかどうかについては依然として検討が必要であるものの、今後のグローバル秩序の帰趨を見定めるうえで、新興国・途上国の側からグローバル正義の再編をもくろむ積極的な働きかけは、十分に示唆的である。国内研究会を通じて、これらの課題に関する一定の認識を醸成する計画である。
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