Project/Area Number |
23K20674
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Project/Area Number (Other) |
21H00817 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野田 正利 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 名誉教授 (60169349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園山 大祐 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (80315308)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥11,700,000 (Direct Cost: ¥9,000,000、Indirect Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
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Keywords | 保護者対応 / 事例研究 / トラブル / クレーム対応 / 紛争解決 / 保護者対応トラブル / 苦情解決 / 学校紛争 / ハードクレーム / 困難なトラブル |
Outline of Research at the Start |
今日のわが国において「保護者対応トラブル」は、最大の教育課題の一つとなった。初期対応のミスが学校側にあったとか、保護者との対話が不足していた、という単純な問題ではなく、最初から解決が困難となっているケースが全国各地で多発している。本研究は、学校現場を直接に訪問しての聴き取りや相談活動(コンサルテーション)を通して、「深刻で対応困難な保護者対応トラブル」の具体的なケーススタディを多数おこなうことによって、トラブル要因や背景分析の手法を確立し、トラブルを紛争状態に拡大させないための方策に関する新たな知見を提供することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
1.本研究は、学校と保護者の間に、時として発生する対応困難なトラブルの個別事例に関して、その発生場所である学校現場に直接に赴いての、臨床的な調査と分析を通して、トラブルを紛争状態に拡大させないメカニズムや効果的な対処法の理論を構築することを目的としている。その中間段階のまとめとして、今年度は『保護者対応トラブルが(は)なぜ難しいか~わが国の「教育問題」へのラインナップ』(B5版、28頁)、『対応が極めて難しくなる保護者対応トラブルのケース~こころの不安定さや生きづらさを抱えている場合』(B5版、28頁)、『心折れてもいい。倒れないで教師を続けよう!~困難な保護者対応事象への究極のアドバイス』(B5版、16頁)と題した3冊の小冊子を作成した。これらを3万冊以上印刷して、各地の教職員らに無償頒布した。 2.全国各地の学校から「保護者対応トラブルで学校全体が疲弊しているという悲鳴」があがり、研究代表者のもとに「助言を請いたい」という連絡がひっきりなしに寄せられてきた。研究代表者は、下記の「現在までの進捗状況」欄に示すように、約40の地域の60校以上の学校を直接に訪問し、校長や教頭といった管理職だけでなく、渦中にいる担任教師あるいは過去の事情を知る教師たちと1対1での個別面接を重ねながら、まる一日あるいは数日かけて、その困難なトラブル事例の分析をおこない原因の考察を通して、トラブル拡大を防ぐための学術的なアドバイスを重ねてきた。 3.そういう中で、9割以上の学校においてトラブルが収束あるいは解消へと向かっていった。このような地道で丁寧な手法こそが、複雑になっている保護者対応トラブルの構造分析にとって最も有効な方法であることを確信できた。但し、現実は当初の予想よりも極めて厳しくなっている。一言であらわせば、保護者の知識と行動力が、教師の力量をはるかに上回るスピードで進んでいる事実である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.研究の初年度であった2021年は、コロナ禍の影響で、学校や教育委員会の現場を直接に訪問しての調査研究に大きな制約があったため、文献調査で補足せざるをえなかった。しかし2022年度はおおむね順調というよりは、むしろ予想以上に全国各地からの研究調査活動の要請があり、相当数の学校現場に直接に出向くことで研究課題の遂行を前進させることができた。 2.具体的な学校名を挙げることは特定化のおそれがあるため、直接に訪問調査をした市町村名だけ列記する。青森県平内町、高知市、大阪府八尾市、沖縄県島尻地区、兵庫県川西市、高知県中土佐町、神戸市、仙台市、神奈川県大和市、石川県白山市、広島県福山市、愛媛県新居浜市、三重県いなべ市、大阪府東大阪市、東京都稲城市、大阪府内の私立高校、長野県松本市、長崎県佐世保市、岐阜市、大阪府豊中市、福井市、青森県五所川原市、岐阜県神戸町、岐阜県大垣市、兵庫県姫路市、大阪府箕面市、兵庫県姫路市、静岡県沼津市、高知県南国市、高知県香美市。学校数では60校を超える。 3.訪問後も電話や電子メールあるいはリモート通信を使用して、その後の経過報告を受けたり、具体的な研究情報収集をおこなうことも続けた。 4.また研究にあたって集めた関連書籍群を読破しながら、調査研究活動をおこなったが、当初の予想以上に、全国各地の学校現場では、ますます対応困難となる保護者対応トラブルが頻発し、それゆえに教職員は疲労の度を濃くしている。普通の常識では考えられないような(※それゆえここでは詳述できない)トラブル事案が多くなり、丁寧な事実調査手法が極めて大事なってきていることを実感している。 5.上記の研究の実績を社会に還元する必要性から、これまで50本以上の論文を雑誌等に発表したほか、「研究実績の概要」欄で示した小冊子(学校讃歌ブックレット号外)を印刷し、合計で3万冊以上を関係する教職員に配布してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.3年目となる2023年度も、メインとなる研究方法は、臨床的事例研究の手法であり、個別事例について詳細な情報収集をおこない、事例の特徴や時系列的な変化、学校側の対応行動の有効性や問題点などの分析・評価をおこなう。また従来からもおこなってきたが、研究成果をまとめて分かりやすく解説した20頁ほどの小冊子(学校讃歌ブックレット号外)を送付・持参し、トラブルの拡大防止のための説明をしながら、直面している教職員との面接調査に重点を置いていきたいと考えている。 2.研究代表者が担っている国内調査研究では、前年度までに訪問した学校において、トラブルが解決にいたらずに長引いているケースもあり、引き続きの訪問調査を当該校から求められている。また新規の訪問要請も、すでに一定数ある。 3.研究分担者が主におこなう国外調査については、コロナ禍の影響がようやく弱まってきたため、主としてフランスへの出張調査を通して、他国でも存在している類似現象にどのように向き合おうとしているのかについて研究を継続する。 4.対応が極めて難しい保護者対応トラブルは、もはや単独の学校の教職員の人的資源をフルに活用しても、困難状況の打開へとは結び付くことは少なく、より外部の専門家(スクール・カウンセラー(SC)、スクール・ソーシャル・ワーカー(SSW)、スクール・ロイヤー(SL))などからの支援が必要である。しかしSC、SSW、SLにも能力的な限界があり、結局は教育委員会を中心とした組織体制を同時に強固にしない限りは、困難なトラブルの鎮静化には対応できないのではないかと考えている。 5.あと2年の研究期間だけでは、現実の学校が直面している「対応が極めて難しい保護者対応トラブル」の特質の究明は困難である。それほど事態はひっ迫しているため、新たに「学校や教師が疲弊しない向き合い方」を研究課題とした新たな科研費の申請を考え始めている。
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