Project/Area Number |
23K20807
|
Project/Area Number (Other) |
21H00995 (2021-2023)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 12020:Mathematical analysis-related
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
俣野 博 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 研究推進員(客員研究員) (40126165)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
Budget Amount *help |
¥16,380,000 (Direct Cost: ¥12,600,000、Indirect Cost: ¥3,780,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
|
Keywords | 非線形偏微分方程式 / 拡散方程式 / 波面の伝播 / 解のダイナミクス / 特異極限問題 / 反応拡散系 / 進行波 / 感染症モデル / 特異性 / 自由境界問題 / 反応拡散方程式 / 界面運動 / 移流拡散方程式 / 特異極限 / 方程式の縮約 / イオンの運動 |
Outline of Research at the Start |
非線形放物型方程式,とくに反応拡散系や曲率流方程式などの解の性質を「ダイナミクス」と「波面伝播」という二つのキーワードを軸に研究する.対象は偏微分方程式に限らず,曲線短縮流方程式も扱う.また,方程式内のパラメータをゼロに近づけた特異極限下で起こる現象の研究も行う.具体的には,反応拡散方程式の平面波が穴の開いた壁を透過できるかどうかを論じる問題や,非線形拡散方程式の特異極限問題,反応拡散系における広がり波面の研究,空間周期的な係数をもつ感染症モデルなどを研究する.
|
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 【金属腐食(corrosion)の数理モデルの研究】フランス原子力・代替エネルギー庁の F. Rouillard氏らと共同で進めていた金属腐食の数理モデルに関する研究の第一段階が完成し,論文が掲載された.これは,水溶液中のイオンの運動を記述するPoisson-Nernst-Planck系(一種の移流拡散方程式)に非線形境界条件を課した自由境界問題であり,この分野の文献に数多く見られる電気的中性条件と無電荷状態を混同した誤りを指摘し,正しいモデルの導出と効果的な数値シミュレーションの手法について解説した. (2)【波状境界をもつ帯状領域における界面運動の研究】空間周期的な波状境界をもつ無限帯状領域における曲線の運動に関して,以前から森龍之介氏と進めていた研究が完成し,論文執筆が最終段階に入った.この研究では特異性を発生させながら進む進行波の存在を初めて証明するとともに,境界の凸凹が密集している方が疎らな場合より進行速度が大きくなるという一見逆説的な現象の存在を明らかにした. (3)【感染症伝播および関連モデルの研究】フランスのQ. Griette氏と進めていた感染症モデルの研究は,昨年度に基本的な部分が完成していたが,新たな結果がその後次々と得られたため,論文の構成を大幅に見直し,2編に分割する形で執筆を進めている.最初の論文は突然変異する病原体が介在する感染症モデルに焦点を絞り,進行波の存在や,感染の広がり速度を詳しく調べた.また,左方向と右方向の進行波の速度が異なる例を初めて発見した.次の論文は,より一般的な視点から,協調系と競争系が混在する反応拡散系の性質を詳しく論じている.いずれの論文も2024年度の前半期に投稿する予定である. (4)【穴の空いた壁を透過する平面波の研究】フランスのH. Berestycki氏らと書き進めていた論文が完成し,投稿準備を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記(1)の金属腐食(corrosion)に関する論文は既に専門誌に発表し,(2),(3),(4)のテーマに関する論文も,当初の予定より時間がかかったものの,満足いく形で問題を解決し,論文を完成あるいはほぼ完成させることができた.(3)の論文の完成に時間がかかった理由は,内容が増えて論文の構成を大幅に見直し,2編に分けたからである. (2)の帯状領域における界面運動の研究は,特異点を発生させながら進む進行波という前例のないテーマを扱っており,技術的に難しい点がいくつかあった.運動する曲線上に特異点が発生する時刻が離散的であるかどうかが解析の重要なポイントとなるが,交点数非増大原理をうまく適用することにより,特異点の離散性を示すことができた.今回の研究では,中心線に関して左右対称な帯状領域に的を絞ったが,より一般の形の帯状領域に対しても同様の結果が成り立つかどうかを調べるのが次の研究テーマである. (4)の壁を透過する平面波の研究は,これも前例のない全く新しい研究テーマであり,一般論を一から構築する必要があった.最終的には,最大値原理,変分法,除去可能特異点の理論,相対等周不等式などを駆使して壁の穴が空間周期的に分布している場合と有界な範囲に局在している場合の両方について,平面波がブロックされる十分条件と透過できる十分条件を詳しく論じることができた.壁の穴が非周期的に分布する場合は,今後の研究課題である. 2023年度は,従来から進めていたこれらのテーマに加えて,距離グラフ上の双安定型反応拡散方程式における波面伝播の研究を北海道大学の神保秀一氏と共同で新たに開始した.すでに数多くの問題を解決することができたので,夏頃には論文執筆に取りかかりたいと考えている. 従来からの研究がほぼ完成し,さらに新しく始めた研究も大きく進展したので,全体的にはおおむね順調に研究が進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
当面は,(A)【穴の空いた壁を透過する平面波】,(B)【波状境界をもつ帯状領域における界面運動】,(C)【距離グラフ上の波面伝播の研究】を中心に研究を進め,時間的余裕があれば,(D)【多次元空間における波面の広がり現象】の研究の完成をめざす. このうち(A)については,壁の穴が周期的に分布している場合と穴が有界な範囲に局在している場合は研究が完成している.今後の当面の目標として,壁の穴が非周期的に分布している場合に,ブロッキングが起こる条件と伝播が起こる条件を研究する.壁の穴が十分小さいとブロッキングが起こることは直観的にも予想され,今回完成した論文では変分的手法を用いてバリヤーを構成してこの予想を証明しているが,壁の穴が非周期的に分布している場合は解のエネルギーの定義が難しく,変分的手法が容易に適用できない.この問題の解決をめざす.将来的には,穴の大きさと穴どうしの間隔を同時に限りなく小さくした均質化極限について研究を進める. (B)のテーマについては,今回の研究では境界の形状が比較的単純な場合(先端部分が凸の突起が周期的に並んだ状況)を扱ったが,今後は境界の形状がより複雑な場合や,帯状領域内に障害物が多数ある場合を研究する.このような状況では,特異性が発生する時刻が離散的でない可能性もあり.この問題をさまざまな角度から検討する. (C)のテーマは,すでに理論的な部分は解決しており,論文の早期完成をめざす. (D)のテーマは,オーストラリアのY. Du氏と数年前から進めていた研究であり,非線形項が非常に一般の場合について,解の初期値がコンパクトな台を持てば解の形状は次第に球状テラス解と呼ばれるものに近づくことを示すのが目標である.定常解 u=0 が安定な場合はすでに研究が完成しており,u=0 が不安定な場合に未解決の技術的問題が一つ残っているだけである.この問題の解決をめざす.
|