Project/Area Number |
23K20869
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Project/Area Number (Other) |
21H01132 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
高橋 労太 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (40513453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅村 雅之 筑波大学, 計算科学研究センター, 特命教授 (70183754)
大須賀 健 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (90386508)
朝比奈 雄太 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (00783771)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥15,210,000 (Direct Cost: ¥11,700,000、Indirect Cost: ¥3,510,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | 巨大ブラックホール / 一般相対論 / 輻射輸送 / ボルツマン方程式 / 光子多重散乱 / ブラックホール / 一般相対論的輻射輸送 / 湾曲時空 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、ブラックホール時空において一般相対論的光子ボルツマン方程式を数値的に正確に解く手法を開発し、ブラックホール時空中の現象を研究することを目的としている。これまで、ブラックホール時空中での空間2次元と空間3次元の一般相対論的輻射輸送シミュレーションを実行可能な数値計算コードを開発した。このコードは、光学的に厚い場合の光子分布関数の情報を正確に解くことができないことから、多重散乱光子の集団的振舞いを厳密に記述する確率密度関数の解析解を構築し、解析解を数値計算コードに実装することで任意の光学的厚さにおいて正確な計算が可能な一般相対論的輻射輸送数値計算コードを開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、湾曲時空にある流体中における光子の放射・吸収・散乱を考慮した光子ボルツマン方程式(輻射輸送方程式)を数値的に正確に解く手法を開発することを目的とする。このため、研究代表者と分担者が過去に開発した一般相対論的輻射輸送方程式ソルバーARTISTを拡張し、これを実現する。過去のARTISTコードは、光子の放射と吸収、更に、湾曲時空中での光の自由伝搬を正確に解くことができ、一般相対論的レイ・トレーシング法の計算結果などを再現する。一方で、回転ブラックホール時空中の赤道面(空間2次元)に限定された数値計算コードであったことから、これを空間3次元に拡張した(M. Takahashi et al, 2022, MNRAS)。この際、数値計算コードを空間3次元へ拡張した他、数値計算の際に光子数が数値的に保存される数値アルゴリズムに改良し、このコードをCARTOONコードと名付けた。CARTOONコードにより、空間3次元で光子数が保存される輻射輸送計算が可能となったが、光子の多重散乱を正確に解くことができない。相対論的拡散の問題は、100年程度未解決の問題であり、難問として知られている。本研究では、光子に対する相対論的拡散問題に対し、光学的に薄い状態から光学的に厚い状態までの任意の状態での散乱光子の確率密度関数を解析的に解く方向でアプローチし、解析解を発見した(Takahashi et al. 2024, ApJL)。この解は、相対論的モンテカルロ計算の結果を正確に再現し、任意の平均自由行程の散乱に適用できる解である。一方で、この解は空間3次元中の散乱光子の存在確率を記述する確率密度関数を与える解であるが、数値計算では光子数フラックスの他、運動量空間も考慮に入れた位相空間中の確率密度関数が必要となる。分担者との議論の結果、位相空間中の解も計算できるようになった(論文執筆中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般相対論的光子ボルツマン方程式の数値シミュレーションを実行する際の課題として以下の課題がある。【課題1】因果律を保つ状態で、多重散乱光子を記述する方法が存在しない(相対論的拡散問題)。【課題2】従来のARTISTコードの数値アルゴリズムでは、光子数が保存されていない。更に、空間2次元に限定されていた。【課題3】光子ボルツマン方程式を数値的に解く際に必要な光子数密度4元フラックスが知られていない【課題4】輻射テンソル等の計算に必要な位相空間中での分布関数が知られていない。【課題5】光子数密度4元フラックスの解を数値計算に組み込むための方法が確立していない。 現状、【課題1】については、等方弾性散乱の場合の任意の平均自由行程に対応した散乱光子の存在確率を記述する4次元時空中の確率密度関数の解析解を発見した(Takahashi et al. 2024, ApJL)。【課題2】では、光子数が保存されるアルゴリズムを開発し、回転ブラックホール時空中の空間3次元の数値計算を実行した(M. Takahashi et al. 2022, MNRAS)【課題3】は、課題1と同時に解決され、光子数密度4元フラックスの解析解を公表した(Takahashi et al. 2024)。【課題4】については、研究分担者と検討し、位相空間中の分布関数の解を求めることに成功した(論文執筆中)。【課題5】は、現在、検討中である。これらの課題と並行して、宇宙物理学の問題への応用も予定している。応用の際のインパクトが大きいと考えられる超相対論的高エネルギー宇宙線伝搬に適用し、現在、論文を執筆中である。当初の予定より応用研究が遅れている面もあるが、【課題1】の相対論的拡散問題(100年間、未解決だった問題)の解決につながる解の発見もあったことから、現在の状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で記載した課題4(輻射テンソル等の計算に必要な位相空間中での分布関数が知られていない)および、課題5(光子数密度4元フラックスの解を数値計算に組み込むための方法が確立していない)の解決を目指す。課題4、課題5ともに一般相対論的数値シミュレーションの経験を豊富に有している研究分担者との議論を元に進める。課題4に関しては、現時点で位相空間中の分布関数の解の計算アルゴリズムの確立、計算の実行、相対論的モンテカルロ計算との比較などが終了しているので、今年度、論文としてまとめる。課題5については、数値シミュレーションの空間格子の光子境界面を通過する光子数密度フラックスを解析解を元に計算し、数値計算に実装すること等が検討されている。現実的なメモリの範囲内で現実的な計算速度を実現するアルゴリズムの開発、数値計算コードへの実装などの問題に取り組む予定である。この数値計算コードが完成すれば、湾曲時空中における光子の放射・吸収・散乱を考慮した数値シミュレーションを実行可能な数値計算コードが完成する。 平行して、一般相対論的輻射輸送計算の応用研究も進める。ブラックホール時空中での計算は、上記の数値計算コードの開発と同時に進められる予定である。一方、計算可能な応用研究として、超相対論的宇宙線伝搬の問題の計算を進める。ガンマ線観測により天体から放出される超相対論的宇宙線の空間分布の観測結果が得られている。現状の理論モデルでは、粒子の拡散を仮定したモデル、弾丸的(ballistic)伝搬を仮定したモデルを仮定した解釈が行われており、理論的解釈が未決定である。本研究で発見された解(Takahashi et al. 2024)は、拡散と弾丸的伝搬の両者を矛盾なく記述する初めての解であることから、超相対論的宇宙線伝搬問題の新しい解を与え、この問題の解が与えられる可能性があると考えている。
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