Effects of quantum fluctuation and dissipation in exciton, electron, and proton transfer systems: Hierarchical equations of motion
Project/Area Number |
23K21098
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Project/Area Number (Other) |
21H01884 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷村 吉隆 京都大学, 理学研究科, 教授 (20270465)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
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Keywords | 開放系の量子力学 / 多次元振動分光 / 量子熱力学 / 非平衡熱力学 / ゲージ不変性 / 多次元磁気共鳴分光 / 2次元赤外分光 / 量子カルノーサイクル / 励起子移動 / 電子移動 / プロトン移動 / 電荷移動結合プロトン移動 / 電荷移動錯体 / ホルンスタイン・ハバードモデル |
Outline of Research at the Start |
光合成系や太陽電池や燃料電池、有機デバイスなど、分子科学が対象とする物質の多くは電子移動、励起子移動やプロトン移動、光励起過程などを司る分子系(主系)と、その周りの溶媒やたんぱく質、結晶(マトリックス)など反応を促進・制御する熱的環境(熱浴)が一体となることで機能を示す。近年の非線形分光や分子ナノデバイスなどの研究により、これらの系では主系が、熱的環境の分子内・分子間振動特有のゆらぎと、量子力学的に一体となり、ユニークな特性を持つことが理解されてきた。本研究は、複雑で現実的な系をその環境まで含めて機械学習によりモデル化すると同時に、HEOMを大規模な計算に対応できるように拡張しその本質を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
2年目である22年度は①太陽電池の素材としても注目されているPerylene bisimides H会合体をモデル化し、階層方程式(HEOM)を用いて時間ゲート蛍光スペクトルを計算し解析、②熱浴系と相互作用している系の熱平衡状態を効率よく計算する虚時間HEOMの開発、③非平衡過程から準静的過程について、HEOMを用いて量子熱浴系を厳密にシミュレーションすることによる量子熱力学の基礎理論の検証、④非線形多モード量子ブラウン運動モデルによる水のモデル化と2次元赤外スペクトル、二次元赤外・ラマン分光スペクトルの計算と解析、の4つのテーマについて研究を行い、6本の論文を出版した。特に③において出版した2本の論文のうち、2本目の量子カルノーサイクルの厳密な数値シミュレーションは、量子力学においても熱力学第二法則が完全に満たされることを示しており、量子領域では熱力学則破れるという議論は、熱浴との相互作用を正しく考慮してないことから来る、アーティファクトであることを明快に示した。また年度末に出版した④の2本についても、これまで量子的な計算が不可能であった水の分子内・分子間のモード結合の効果を、4モードをすべて含むモデルを構築し、それを用いて2次元赤外スペクトル、さらに我々が新たに提唱した2次元赤外・ラマンスペクトルを計算することに成功した。この方法論は量子散逸効果を含めて厳密であり、パソコンレベルの計算機において数時間内に計算を可能にしており、JCPのエディター推薦に選ばれるなど、出版直後から高い評価を得ている。このプログラムのソースコードも論文とともに公開している。 これらの研究成果については、スウェーデンで行われた多次元分光に関するノーベルシンポジュムでの招待講演、年度末にインディアナポリスで行われたアメリカ化学会で2件の招待講演を行った他、UCバークレーでもセミナーを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
量子熱力学は、近年のナノテクノロジーの進歩により物理や物理化学を中心に実験的にも理論的にも精力的に研究が進んでいる分野である。我々が昨夏に出版した量子カルノーサイクルの厳密な数値シミュレーションの研究は、量子力学においても熱力学第二法則が満たされることを一点の曇りなく証明し、「量子領域では熱力学則が破れるかもしれない」と非平衡統計力学で長年の問題になっていた論争に終止符を打つものであり、申請時点での大きな課題を2年目にして解決した。また年度末に出版した非線形多モードブラウン運動モデルによる2次元赤外分光の解析についても、これまで理論的な計算が不可能であった水の分子内・分子間の全てのモード結合を含めた2次元赤外、赤外・ラマンスペクトルを、量子散逸効果を含めて厳密に、かつ、パソコンレベルの計算機において数時間内に計算を可能にしており、この分野のブレークスルーとなっている。 なお、本研究の基礎となっているHEOMについては、2020年に執筆したHEOMのJCPのperspectiveが、Web of Scienceにおける引用数で、全化学分野のTop 1%の文献に選ばれたことが示すように、世界的に注目されている手法である。
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Strategy for Future Research Activity |
量子熱力学の研究については、熱力学が成立すると一般に考えられている準静的状態で成立することを証明できたので、さらに発展させ非平衡領域でも熱力学が構成できるかを調べる。我々の強みは、申請者が開発した階層方程式(HEOM)を用い、準静的であろうがなかろうが、数値的に厳密なシミュレーションが可能であり、実証的に熱力学理論を構築できるところにある。 2次元分光に関して、現時点で開発したコードは、数値コストの問題から、モード間の結合は同時には2モードしか考慮できないが、同時に3モードが扱えるようにプログラムをGPUを用いて拡張・高速化する。これにより、分子内から分子間モードへのエネルギー移動をシミュレーションし2次元IRスペクトルや、2次元IR―Ramanスペクトルでどのように観測されるかを探求する。 電子、励起子、プロトン移動系に関しては、これまでホルンスタイン・パイエルスモデル、ホルンスタイン・ハバードモデルなどにHEOMの適用範囲を広げて研究してきたが、これをさらにBCS型の超伝導の基本ハミルトニアンである、フローリッヒ・ハミルトニアンにも適用して研究を行う。このハミルトニアンは電弱相互作用のハミルトニアンと類似形をしており、そこへの拡張も検討する。
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Report
(2 results)
Research Products
(23 results)