Project/Area Number |
23K21101
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Project/Area Number (Other) |
21H01893 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中谷 直輝 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00723529)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
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Keywords | 量子化学 / X線吸収スペクトル / 遷移金属錯体 / 触媒化学 / 反応解析 / XANESスペクトル / 時間依存DFT法 / CASPT2法 / 構造解析 |
Outline of Research at the Start |
量子化学計算は実験では観測できない化学反応の中間体や遷移状態の構造を解析・予測するツールとして現在広く利用されているが、計算モデルと実際の実験条件との間には大きな差異があり、反応エネルギーや活性化エネルギーの計算結果を実験結果と直接比較することはできない。本研究では、時間依存DFT法に基づくK端・L端XANESスペクトルの高度解析手法を開発し、これを触媒活性種の溶液中XANESスペクトルへ応用することで、反応解析における計算結果と実験結果のギャップを埋め、高度な反応解析手法を確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、遷移金属錯体の溶液中XANESスペクトルの計算解析をベースに、従来的な反応・物性の計算解析手法を組み合わせ、触媒活性種の同定や分子物性の解明に取り組んでいる。2023年度の研究実績は以下の通りである。 本年度は、計算解析が難しいとされるFe、Ni、Cuなどの3d遷移金属元素を含む錯体触媒の反応解析および溶液中K端XANESスペクトルの計算解析を行った。まず、クロスカップリング反応の触媒として報告のあるFe錯体およびCu錯体について、DFT法および高精度電子状態理論の1つであるCASSCF/CASPT2法を利用した反応機構の計算解析を行った。Cu錯体による反応では、酸化的付加によって生じるCu(III)種において電子相関効果の寄与が大きくなり、DFT法では酸化的付加過程の活性障壁を過大評価する傾向が見られたものの、定性的にはCASSCF/CASPT2法と矛盾しない結果となった。一方で、Fe錯体による反応では、前駆錯体や反応中間体におけるスピン状態やそのエネルギー準位に顕著な差が見られた。また、当初、酸化的付加過程と考えられていた反応素過程においてFe中心の酸化状態が変化していないことを明らかにし、Feと相互作用している対アニオンからの電子移動がこれを補償することで反応が進行していることを明らかにした。さらに、アルケン重合触媒としても利用される常磁性Ni錯体について、反応解析と溶液中XANESスペクトル解析を進めており、TDDFT法を利用した前駆錯体の溶液中K端XANESスペクトルの解析を行った。 計画最終年度である2024年度では、これら3d遷移金属錯体のXANESスペクトルの計算解析をさらに進め、反応素過程の計算解析と合わせてハイブリッド反応解析の実例として成果をまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初から目標にしていた3d遷移金属錯体のXANESスペクトル計算解析について、TDDFT法による計算解析に一定の有効性が認められたことから、反応素過程とスペクトルの計算解析を合わせて実験結果を系統的に検証するという本研究課題のコンセプトが立証されつつあり、これまで計算解析が困難とされてきた3d遷移金属錯体の触媒反応の基礎研究に一石を投じる成果が得られている。一方で、L端XANESスペクトルについては計算解析手法の確立に苦戦しており、L端XANESスペクトルの解析については進捗が遅れているものの、実践的な反応解析手法の確立という本研究課題の目的に照らせば、概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画最終年度となる2024年度は、L端XANESスペクトルの計算解析手法の確立に取り組むとともに、これまでの研究成果についてまとめ学術誌等で公開する。 K端XANESスペクトルについては、TDDFT法の計算解析の有効性が示されたことで、高精度電子状態理論による反応解析と組み合わせて、3d遷移金属錯体の反応解析を系統的に行う実践的手法として提案し、学術誌や国内外の学会等で広く公開する。 L端XANESスペクトルについては、遷移金属錯体系において実践的な計算解析手法の確立が現状では難しいことから、その前段階として、原子やモデル錯体系での高精度計算解析を行い、DFT法による計算解析の課題を明確にすることで将来的な研究分野の開拓に繋げたい。
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