Project/Area Number |
23K21801
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Project/Area Number (Other) |
21H03697 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
鈴木 玲治 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (60378825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 善久 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (20230287)
大石 高典 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30528724)
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 名誉教授 (80153419)
河野 元子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携准教授 (80552017)
島上 宗子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 教授 (90447988)
増田 和也 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90573733)
野間 直彦 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80305557)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥16,900,000 (Direct Cost: ¥13,000,000、Indirect Cost: ¥3,900,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
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Keywords | 環境調和型農林水産 / 在来知 / 地域ブランド化 / 森林資源活用 / 環境調和型農林水産業 / 森林資源利用 / 生態学 / 人類学 / 農学 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、農山村に眠る地域資源の活用により食・森・地域を有機的に繋ぎ、新たな地域資源を創出する手段として、焼畑の果たしうる役割を実証的に検証する。申請者らは過去10年間の実践型の地域研究に基づき、滋賀県長浜市余呉町の焼畑に受け継がれる在来知を体系化し、焼畑を核にした地域発展モデルを提示してきた。また、近年は、焼畑による在来作物保全、里山再生、地域振興等を目標に掲げた焼畑復活の動きが日本各地で活発化している。本研究では、地域間比較により各地の焼畑実践の固有性と普遍性を抽出し、焼畑の広域展開の可能性を論じ、焼畑を核にした地域資源創出モデルを構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は滋賀県余呉町中河内で2018年に焼畑を実施した4年目の休閑地を伐開・火入れし、ヤマカブラの栽培を行った。伐採前の主な植生はタニウツギなどの低木やススキであり、火入れには前年度に伐採したスギの枝葉も活用した。なお、今年度の火入れ・播種は予定通り8月第1週に行ったものの、渇水のためヤマカブラの発芽が大幅に遅れた上、コオロギやメイガの幼虫の食害により、カブの収量が大きく低下した。 スギ残材の焼畑利用の有用性検証のため、スギ枝葉を用いた火入れが土壌養分動態やヤマカブラの初期成長に与える影響を調査するポット試験を実施した。火入れ後は、焼土効果によるアンモニウム態窒素の増加及び灰の添加による交換性塩類の増加が認められたが、ヤマカブラの初期成長には灰の添加の影響の方が大きく、特にカリウム、リンの寄与が大きいことが示唆された。また、焼畑地での現地試験では、火入れによるヤマカブラの発芽促進効果が確認された。これらの結果から、スギの枝葉の焼畑利用の有用性が確認できた。 また、スギの有効活用法検討のため、心材色別にスギ原木の品質評価を行った。スギは心材色により黒心材と赤心材に分類され、黒心材は含水率が高く乾燥に手間がかかることなどから市場価値が低い。原木市場などのスギ原木169本を対象に調査を行った結果、赤心材は黒心材に比べて有意に強度が高いことが確認され、強度と年輪幅の間には有意な負の相関が認められた。年輪幅の狭い赤心材は構造材のような強度が必要な用途での利用が推奨される。一方、含水率が高く低品質な黒心材は、ウッドロケットストーブへの加工が推奨され、その燃焼性能や安全性能は赤心材と遜色ないことが確認された。 2024年3月には「第4回 焼畑フォーラム」を余呉町で開催し、焼畑による食・森・地域の再生や次世代への継承などをテーマに、日本各地の焼畑実践団体による活発な議論が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
余呉町での焼畑実践は毎年順調に行われており、休閑地の植生回復状況や火入れがもたらす土壌養分動態への効果、ヤマカブラの初期成長に与える火入れの効果など、在来知の検証に必要な科学的データの蓄積も進んでいる。焼畑による放置人工林の再生については、立地別や心材色別のスギの強度試験やスギ丸太を加工したウッドロケットストーブの燃焼試験によるデータが蓄積できており、スギの品質に応じた利用法の検討が進んでいる。また、スギ枝葉を用いた火入れの効果も確認できている。在来作物の地域ブランド化については、ヤマカブラの食感・食味試験や機能性成分の分析、調理方法の検討などを進めており、他のカブと比較したヤマカブラの特長が抽出されつつある。また、今年度は3月に第3回焼畑フォーラムを開催し、焼畑実践団体間の活発な意見交換を行っており、各地域の焼畑復活の核となった地域固有の要因や普遍的要因の抽出を進めている。以上より、交付申請書に記載した計画に沿って、概ね順調な調査研究活動を展開中であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、農山村に眠る地域資源の活用により食・森・地域を有機的に繋ぎ、新たな地域資源を創出する有効な手段として、焼畑の果たしうる役割を実証的に検証することを最終的な目的としている。 今後も余呉での焼畑実践を継続しながら、特に放置植林地のスギの活用とヤマカブラの地域ブランド化に力点をおいた調査研究活動を展開したい。また、日本各地で営まれる焼畑地で聞き取り調査や参与観察を行い、各々の地域の生態環境に応じた作物栽培や火入れのあり方、温暖化に伴う極端気象への対応法、焼畑運営の社会経済的な存続要因や次世代への継承に向けた課題、現状での利点や問題点を整理する予定である。2026年3月には、日本各地の焼畑実践団体間の情報交換と日本の焼畑の将来像に関する議論を深めるため、新潟県村上市山北地区において第5回焼畑フォーラムを開催する予定である。
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