Project/Area Number |
23K21829
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Project/Area Number (Other) |
21H03741 (2021-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2021-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80040:Quantum beam science-related
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
熊田 高之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (00343939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元川 竜平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (50414579)
岩田 高広 山形大学, 理学部, 教授 (70211761)
廣井 孝介 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究副主幹 (70813715)
稲村 泰弘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究副主幹 (80343937)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2021: ¥8,580,000 (Direct Cost: ¥6,600,000、Indirect Cost: ¥1,980,000)
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Keywords | 核偏極 / 偏極中性子 / 小角散乱 / 反射率 / 回折 / スピンコントラスト変調 / 中性子小角散乱 / 氷晶成長 / 糖溶液 / 凍結保存 / 偏極中性子小角散乱 / 時分割測定 / ナノ構造 |
Outline of Research at the Start |
スピンコントラスト変調中性子小角散乱法 (SCV-SANS)は、中性子の軽水素核に対する散乱能が互いのスピン方向に強く依存する性質を用いた複合材料の構造解析手法である。今回、この手法に時間分解能を与えることでより高度なナノ構造情報を引き出す時間分解SCV-SANSを開発する。従来のSCV-SANSでは試料内の水素核偏極度が最大値に達した状態で散乱を測定していたが、時間分解SCV-SANSでは核偏極度が成長途中の偏極度に対する散乱曲線の連続的な変化を追えるようにする。これにより、従来法では判断が難しい構造の多分散性、低次元性、凝集性などを判別できるようにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
液体窒素に滴下することで急速凍結した濃厚グルコース溶液試料のスピンコントラスト変調中性子小角散乱実験を行ったところ、試料中の水素核偏極度とともに非相似的に変化する偏極中性子小角散乱曲線が得られた。散乱信号の非相似的変化は、複数の散乱成分が一つの散乱曲線に含まれていることを示す。しかしながら、当初その散乱体を特定する手法が無かった。そこで、水素核の偏極度が立ち上がる最中に中性子散乱測定を連続測定した後、データを5分ごとに切り分けたところ、各時刻の水素核偏極度に対して連続的に変化する散乱曲線を得ることに成功した。解析の結果、散乱成分の一つは水素核偏極度13%で消失する、つまりこの偏極度において2つの成分間の散乱長密度(体積当たりの原子からの干渉性散乱長の和)が厳密に一致する状態になることを突き止めた。様々な状態を仮定しながら成分ごとの散乱長密度の計算を繰り返した結果、本散乱成分はガラス状濃厚糖溶液中に生成する氷晶からのものであることを突き止めた。本散乱成分の強度は波数の自乗に反比例しながら減少することから、氷晶は厚さがわずか1nmの平面体を形成していることを突き止めた。この厚みは、過冷却水中に生じる氷晶の臨界半径の計算値とほとんど等しい。このことから、過冷却水中で氷晶が生成後、特定の軸方向に氷晶はほとんど成長しないことを示している。グルコース分子がどのようにしてその成長を抑制したのか?当該分野の研究に一石を投じるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スピンコントラスト変調中性子小角散乱実験を時間分解測定することにより、従来法では多くの労力と困難を伴うコントラストの連続変調を非常に簡単にできることを実証できたことが一番の理由である。上述の研究結果は現在論文執筆をほとんど終えて近日中に原著論文として投稿する予定である。急冷溶液中における氷晶成長の抑制は、食品や細胞などの凍結保存技術を高度化する上で欠かせない。糖は生物に対する毒性を持たない氷晶成長抑制物質の一つとして注目されている。これまで、急冷濃厚糖溶液中に生成する氷晶の研究は顕微鏡法を用いて多く行われていたが、顕微鏡の空間分解能の問題で結晶がマイクロメーターサイズまで成長してからでないと観測できないという問題や、顕微鏡測定に用いる基板によって氷晶がエピタキシャル成長するなど困難が多かった。それに対し、我々の手法ではバルク中に生成するナノサイズの氷晶を観測できた点が新しい。研究計画初期にもかかわらずインパクトの大きな成果が得られたと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の手法で作成した氷晶のX線もしくは中性子回折実験を行い、各散乱ピークの線幅の拡がりから生成した氷晶の低次元性を評価して昨年度のスピンコントラスト変調中性子小角散乱実験の結果と比較する。また、トレハロースやスクロースなど多種の糖溶液で同実験を展開して、氷晶成長に対する各糖の影響の違いを評価する。現在研究を遂行する上で問題となっているのは、電気代の高騰によるJ-PARC MLFの中性子散乱実験のマシンタイムの確保が厳しいことである。外に問題解決を訴えると同時に、我々としては測定試料を厳選することで限られたマシンタイムの実験に対処する所存である。
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