Project/Area Number |
23K21957
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Project/Area Number (Other) |
22H00685 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03010:Historical studies in general-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐野 真由子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (50410519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有賀 暢迪 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (90710921)
市川 文彦 長野大学, 企業情報学部, 教授 (00203092)
飯田 豊 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90461285)
井上 さつき 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 名誉教授 (10184251)
牧原 出 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00238891)
君島 彩子 和光大学, 表現学部, 講師 (90875296)
辻 泰岳 筑波大学, 芸術系, 助教 (10749203)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
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Keywords | 万国博覧会資料 / 戦後世界史 / 国際博覧会条約 / 冷戦 / 脱植民地化 / 発展途上国 / 対等 / 植民地 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、研究史の空隙となっている第二次大戦後の万国博覧会史に取り組むものであり、時期的対象は、万博を統括する政府間組織BIE(在パリ、1931年発足)が大戦終結を受けて活動を再開した1945年から、植民地独立を主要因とする国際社会の変容を背景に、今日も有効な万博の新定義を打ち出すに至った1994年までである。 その目的は、催事としての万博それ自体を詳解することではなく、万博史研究というレンズを通じて、国際情勢から開催・参加各国内の政局、関係業界の動向、関係者個々人のミクロな経験までを途切れなく見通し、かつ、自ずと世界の多様な視点に立脚する、新たな戦後世界史叙述の可能性を提示することにある。
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Outline of Annual Research Achievements |
第2年度も初年度に引き続き、約3ヵ月に一度の研究会をペースメーカーとして進捗を報告し合い、 議論を重ねた。 本研究の目的は、万博史研究をレンズとして用いることで、国際情勢から開催・参加各国内の政局、関係業界の動向、関係者個々人のミクロな経験までを途切れなく見通し、かつ、自ずと世界の多様な視点に立脚した新たな戦後世界史叙述の可能性を提示することにあり、研究期間全体として、①学際的な顔合わせのもと、メンバー各自が専門的な調査能力を持つ分野の万博関係資料収集を通時的に行い、分析する、②研究対象とする第二次大戦後の時代を7つの主要万博で区切り、多領域の資料(①)を互いに接続することで、各時代の「世界を輪切りにする」像を描く、という縦横の軸を持って進めることとしている。各自が①を中心に着手し、徐々に②へと展開した初年度の活動を基盤に、第2年度は②の軸をさらに具体化することに努めた。 その際とくに、万博史が冷戦の諸相を明るみに出すレンズとなることを仮定し、これを共通の年間テーマとして、メンバーや研究協力者の多角的な知見を持ち寄り、集中的な検討を行った。これは、初年度の共通テーマとして国際社会の脱植民地化過程に着眼し、議論を重ねるなかから、それと密接に連関し、補完する視角として導き出されたものである。結果として、「万博と冷戦」をめぐる5点の原著論文が生まれた。本研究の前半2年間を総合して、国際的に研究史の空隙となっていた第二次大戦後の万国博覧会史に取り組む意義を、新規性の高い、特徴ある形で示すことができたと言える。 また、本科研費補助金の支援により、研究成果を広く社会に発信する媒体『万博学/Expo-logy』を初年度中に創刊したが、これを順調に継続・展開し、2023年12月に第2号を刊行した。上記の5論考はここに収録されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上欄の研究軸①②を交差させながら、前年度の成果から抽出された「万博と冷戦」という年間テーマを共有し、着実に研究を進捗させることができた。年間テーマに直接関係する論考として、研究協力者によるものを含め、「一九六七年モントリオール万博に見る科学技術国家の自画像―大阪万博との比較を通じて」(有賀暢迪)、「アメリカ対外情報政策の延長線上の大阪万博」(森口由香)、「対峙と売込み―冷戦期万博における東側陣営の二重戦略」(市川文彦)、「モーリス・タックマンのNew Arts (辻泰岳)、「冷戦と脱植民地化の接点としての万国博覧会研究」(池田亮)が生まれ、これらは本補助事業の一環として初年度に創刊した査読付きジャーナル『万博学/Expo-logy』に特集として収録された。 なお、同誌は学際領域における匿名査読の限界を打ち破る試みとして、新しい「徹底討論型」の査読を採用し、2年度目も初年度の課題を改善しながら継続した。この査読法は本研究が後世に残す成果の一部になるものと考えている。 加えて、本研究のペースメーカーとしている年4回の研究会合では、同じく研究協力者によるものを含め、「展示デザインから見たモントリオール万博」(執行昭彦)、「高松宮と万博」(牧原出)、「70 年大阪万博における海外広報―日本万国博覧会協会による活動と影響」(加畑杏理)、「EU にとっての万博―ブリュッセル、モントリオール、大阪万博を中心に」(能勢和宏)、「沖縄国際海洋博覧会と平和祈念公園の成立―大濱信泉の活動を中心に」(君島彩子)、「カナダ史と万博―モントリオールと大阪を中心に」(鈴木健司)の各口頭発表を得、万博史をレンズとした戦後史叙述の可能性について、歴史上の具体的な場面を取り上げながら議論を深めた。 さらに、申請時に予定したとおり、研究期間終了後に報告論集を刊行することとし、その構成等に関する検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究期間前半と同様、約3ヵ月に1回の研究会合をペースメーカーとして進める。そこに隣接諸領域の研究者や博覧会実務の関係者らを招き、ネットワークの拡大・深化を図る想定にも変更はない。ジャーナル『万博学/Expo-logy』も継続的に刊行し、研究成果をタイムリーに社会に還元していく。 上欄に記した①②の研究軸は、第3年度以降もつねに念頭に置いて進める。①に関しては、研究開始当時と比較して構成員各自が、「万博」と明示された各国の公的報告書等、基本資料にとどまらず、官民のあらゆる業界に事実上の「万博資料」 を見出し、十全に活用していく研究スタンスをすでに確立したことから、これをさらに推し進めていく。一方、②については、初年度の「植民地なき世界の万博」、第2年度の「万博と冷戦」の経験を踏まえ、共通テーマを立てて互いの知見を効果的に参照し合う方針を引き継ぐ。第3年度のテーマは「大阪万博前後の世界」とし、(1970年大阪万博自体ではなく)複数の万博に跨って連続的に世相の展開を把握する研究の進め方をとくに意識する。これを上記のジャーナル『万博学/Expo-logy』第3号の特集として世に問う予定である。 同時に、研究期間終了後に刊行する報告論集の準備を加速する。その一環として、2025年度12月をめどに、3年間の成果をいったん整理し、公開での議論に供するシンポジウムの実施を計画する。シンポジウムは申請時の予定には含まれていなかったが、ここまでの進捗を踏まえ、成果を広く共有することに意味があり、またそこでの議論から得られたものを最終年度の研究方針に反映して、より高次の到達点をめざしたいと構想するようになった。併せて、2025年大阪・関西万博に向かう世相にも照らし、この時期における本研究の対外発信にはとくに社会的意義があると考える。
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