人権・環境ガバナンスにおける「共感」メカニズムの解明
Project/Area Number |
23K22089
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Project/Area Number (Other) |
22H00817 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 06020:International relations-related
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Research Institution | Kinjo Gakuin University (2024) Nagoya University (2022-2023) |
Principal Investigator |
山田 高敬 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (00247602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 智明 福岡工業大学, 社会環境学部, 教授 (00404088)
宇治 梓紗 京都大学, 法学研究科, 准教授 (00829591)
赤星 聖 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (20795380)
政所 大輔 北九州市立大学, 外国語学部, 准教授 (30734264)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,030,000 (Direct Cost: ¥13,100,000、Indirect Cost: ¥3,930,000)
Fiscal Year 2025: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
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Keywords | グローバル・ガバナンス / 地球環境政治 / 人道支援 / 共感メカニズム / 国際機関 / 国際制度 / 人権 / 環境 |
Outline of Research at the Start |
従来の国際関係理論は方法論上の配慮から国際協調を説明する際に国家を利己的な合理主体と仮定してきた。けれども、環境や人権の問題領域などでは、そういった前提では説明しきれない逸脱現象が多く見受けられるようになっている。そこで本研究では、人権分野と環境分野の研究者を糾合し、従来重視されてこなかったアクター間の「共感」に着目し、テキストマイニングやサーベイ実験といった分析手法を駆使しながら、その創出過程と、共感がもたらすアクターのアイデンティティや集合行為への影響を解明する。本研究で得られる知見は、人権や環境ガバナンスへの示唆を多く含むことから持続可能な社会の実現に貢献することが大いに期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には、本プロジェクトを構成する環境グループ及び人権グループのそれぞれにおいてサーベイ実験を設計・実施し、共感のレベルと国際協調のレベルとの間にどの程度の因果関係があるかを検証した。環境に関しては、環境投資における共感の作用を見るために日本人とドイツ人に対して同実験を実施した。日本人に対しては共感が環境投資を促す一方、ドイツ人にとって自尊心が環境投資を後押するという結果が得られた。人権グループの方も同様に、日本人の難民支援をめぐる共感の作用を解明すべくサーベイ実験を実施した。その結果、共感は、日本人が難民に対して根本的に抱いている偏見を和らげる方向にはたらくことがわかった。環境投資に関する実験結果をまとめた論文は現在国際雑誌による査読中である。難民支援に関しては現在論文を執筆している段階であり、2024年度中に国際雑誌に掲載することを目指している。なお、2024年度には、両グループの研究において得られた知見を比較検討し、環境と人権において共感メカニズムのはたらきかたにどのような共通点及び相違点があるのかをメンバー間で検討する予定である。 これらのサーベイ実験と並行して、廃棄物・化学物質に関する多国間環境条約締結と批准速度との相関関係を手掛かりに、共感に影響を与える諸要素に関するデータの収集に着手するとともに、環境問題における国家間の共感の希薄化の可能性についても検討した。さらに上記のサーベイ実験の結果を「現実社会」の文脈で理解するために、気候変動ガバナンスの有効性を高める情報開示レジームの形成過程について、金融機関のネットワーク分析を通じて明らかにした。その結果は、日本国際政治学会の季刊誌『国際政治』に掲載が予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、人権グループは当初の計画通り、難民危機に対する国際人道支援に関して共感メカニズムの作用について信頼性の高いサーベイ実験を実施することができた。そして環境グループの方も、当初の計画通り、気候変動問題などを想定して、ESG投資における共感メカニズムの作用について、人権の場合と同様に、信頼性の高いサーベイ実験を実施し、その結果を論文として執筆し、国際ジャーナルに投稿することができた。サーベイ実験の実施が本研究課題において重要な位置を占めることを鑑みると、本研究課題は順調に遂行できていると言ってよいであろう。また各自の事例分析の進捗状況には若干のばらつきは見られるものの、概ね事例選択は完了しており、それぞれの事例において、a. どの程度先進国と途上国の間で「不均衡な相互主義」が観察されるのか(資金援助、物的・人的支援、義務の差異化など)、b. その「不均衡な相互主義」が、どの程度国際規範や規則によって制度化されているのか、などに関して分析が進んでいる。具体的には、共感が廃棄物・化学物質に関する多国間環境条約の批准や国家による難民の受け入れに与える影響などについて実証的な分析が進んでいる。特に後者に関しては、ロシアによるウクライナ侵攻に伴って発生した難民の日本国による受け入れに関する分析が進んでいる。また気候変動ガバナンスにおける民間投資機関のネットワーク形成への共感の効果についても検討が進められているところである。ただ、後述するように、本課題で予定されていた異なる分析レベルのアクター(国際機関、各国政府機関、専門家集団、NGO、企業・経済団体など)に関する、テキストマイニングの手法を使った定量的な言説分析は実施に至っていない。後述するように、2024年度以降は、サーベイ実験の結果を踏まえて、定量的な言説分析を実施していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
共感には、少なくとも認知と感情という二つの側面があるため(Zappile et al. 2017)、各関連アクターの特定文書において、それぞれの側面に関する語彙の使用頻度や使用頻度が比較的高い語彙間の関係に関して定量的な言説分析を実施したい。「認知」の側面に関しては、他国における人権侵害や自然災害などに関する語彙がどの程度の頻度で登場するのか、また「感情」の側面に関しては、その文章記述においてどの程度「痛ましい」とか「凄惨な」といった形容詞が使用されているのか、それぞれ測定したい。その上で、共感とアクターの協調的な行動、そして両者の仲介変数として想定されるアイデンティティとの関連性を測定したい。アイデンティティに関しては、その同一性を暗示する社会的責任といった倫理性を示す語彙がどの程度出現しているかを測定することとする。そして、これらの言説分析と昨年度実施したサーベイ実験の結果を踏まえて、人権領域と環境領域における共感の生成過程とその効果を比較したい。 研究成果の公表については、すでに環境投資と共感レベルとの関係に関しては、論文を国際ジャーナルに投稿済みであるが、今後人道支援と共感レベルとの関係に関する論文についても、国際ジャーナルに投稿したい。 そしてこれらの活動目的を実施すべく、研究会を定期的に開催し、人権グループと環境グループとの間で人権ガバナンスと環境ガバナンスに共通する統一的な理論仮説の可能性についても意見交換を行うないたいと考えている。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)