薬害HIV感染被害者のライフストーリーから社会・心理的支援を構築する
Project/Area Number |
23K22193
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Project/Area Number (Other) |
22H00922 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics (2024) Matsuyama University (2022-2023) |
Principal Investigator |
山田 富秋 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (30166722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 恵子 北九州市立大学, 文学部, 准教授 (10636690)
種田 博之 産業医科大学, 医学部, 講師 (80330976)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 薬害HIV感染被害者 / ライフストーリー / 社会・心理的支援 / 薬害エイズ事件 |
Outline of Research at the Start |
薬害HIV感染被害者は、1980~90年代の薬害エイズ事件を経験したことによって、医療に対する根源的な不信感や無力感にさいなまれたり、さらにはHIV感染というスティグマの露見による差別を恐れたパッシング(身元隠し)によって、日常的なコミュニケーションに強い不安を抱えるたりすることで、慢性的な「生きづらさ」に直面している。本研究の第一の意義は、この「生きづらさ」を薬害被害者の当事者の視点に立って理解することであり、この内側からの理解が、薬害被害者の効果的な社会・心理的支援にダイレクトに結びつく社会・心理的支援を構築する上で大いに役立つと考えられる。
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Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2022年度においては、研究協力者の早坂典生氏を対象にしたインタビューを実施した。インタビュー内容にもとづいて、2022年5月28-29日に研究代表者が実行委員長となって開催した第48回日本保健医療社会学会大会において、大会記念シンポジウムの登壇者として、研究分担者の種田博之氏と協力者の早坂典生氏が本研究のテーマである「生きづらさ」について報告した。すなわち「ウィズコロナをどう生きるか―感染症のスティグマを乗り越える」という全体テーマの下、「血友病HIV感染被害者の抱える問題―「病い」にまつわる生きづらさと苦心惨憺―」という題目で、この二人が共同報告を行った。その概要として、生きづらさのただなかにある人の場合は、HIV感染が露見した場合の差別を恐れて、人間関係が限定的になる。この場合は他者や社会への不信感が支配的である。つまり「安心」を得ようとするがゆえに、より生きづらくなっていると言えよう。よって、感染者や支援者以外と関わることができないため、公的な支援制度などを利用できない。ところがHIV感染被害者の一人である早坂典生氏は、和解後に「いつまでも被害者として生きられない」という意識が芽生え「被害者仲間で会社を設立し社会参加を目指した」。そこが互いに「支え合う場所、安心して話せる場所」となり、居場所が形成された。その後、感染者支援組織である「りょうちゃんず」に参加し、そこで性感染者の人たちや支援者と出会い、世界が大きく広がると同時に、新しい価値観と出会った。それはHIV感染を特別視せず受け入れられる社会をともに作っていく活動と言える。この発表をもとにして、11月18-20日に浜松で開催された第36回日本エイズ学会学術集会・総会において、早坂典生氏が「薬害HIV感染被害者のかかえる「生きづらさ」に折り合いをつける-当事者の語りから-」と題して口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、まだ新型コロナウイルスの影響が大きかったために、対面でのインタビューは大幅に限られることになった。そのため、当初からの研究協力者であるNPOりょうちゃんず代表の早坂典生氏にインタビューを実施し、そこからHIV感染というスティグマに由来する「生きづらさ」と折り合いをつける実際の生き方を分析的に取り出した。これは感染被害者のライフストーリーの解読から得られた研究成果であると評価できる。特に2022年の日本保健医療社会学会大会と日本エイズ学会学術集会・総会での報告を経て、HIV感染に由来する「生きづらさ」の問題をCOVID-19も含めた感染症のスティグマの問題として広く捉える方向性が出てきた。この方向性については、今年の6月末にメルボルンで開催される国際社会学会において報告する予定である。つまり、両方とも感染予防の重要性が強く宣伝されるものの、もし罹ってしまった場合の感染後の具体的な病状、あるいは生活状況が正確に伝えられないために、根拠の薄い恐怖感だけが一般に広まっていくという問題を抱えている。ここで必要なことは、たとえ罹ったとしても、治療が可能であるということを信頼できる情報として伝えていくことであろう。特にHIV感染の場合は、U=U運動が示しているように、治療を継続することを通して、HIVの検出限界に達し、その状態においては、他者に感染させることはありえないという事実を、もっと世に知らしめるべきであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は新型コロナウィルスの影響を、ほとんど考慮しなくても良い状態になると考えられるので、過去に厚労科研において蓄積した25例のライフストーリーインタビュー対象者について、最初のインタビューからかなり時間が経ったので、その後のQOLの変化に焦点を当てたインタビューを再開していくことを決めた。その中でも、2022年の日本保健医療社会学会大会と日本エイズ学会学術集会・総会において、ライフストーリーから「生きづらさ」と折り合いをつける道を示した早坂典生氏が、他のライフストーリーを分析するためのモデルとなるだろう。その際には、いかにして被害者カテゴリーから距離を取っていくかというのが大きな転換点となるだろう。 インタビュー対象者は北海道から九州まで居住しているので、研究分担者と協力者で調査チームを作って、それぞれの対象者を動じ並行的にインタビューしていく。インタビューしたトランスクリプトについては、本人の使用許諾を経て、それぞれの生活状況に即した「生きづらさ」を抽出していきたい。また、本研究の成果の一部は、今年の第37回日本エイズ学会学術集会・総会において報告予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)