Project/Area Number |
23K22344
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Project/Area Number (Other) |
22H01073 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10010:Social psychology-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
唐沢 穣 名古屋大学, 情報学研究科, 特任教授 (90261031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲増 一憲 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10582041)
笹原 和俊 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (60415172)
北村 英哉 東洋大学, 社会学部, 教授 (70234284)
上野 泰治 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (20748967)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,030,000 (Direct Cost: ¥13,100,000、Indirect Cost: ¥3,930,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | 道徳判断 / 動機に基づく推論 / イデオロギー / 政治的認知 / ソーシャルメディア |
Outline of Research at the Start |
異なる価値観の衝突が、現代社会の様々な分野で分断を生じさせている。悪意ではなくむしろ善意に基づいた世界観・公正観であっても、それが暴発すると分断の原因となるという可能性を、社会心理学と計算社会科学の方法を用いて検証する。認知・感情・動機過程といった個人レベルの心理過程を実験や調査で明らかにする一方、ソーシャルメディア分析に基づくマクロレベルでの対立・排斥の分析を併用して包括的な理解を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
- イデオロギー的な意見の相違を道徳的観点で捉える「道徳的確信」が、社会的分断の主要素となることを検証するため、一連の調査研究を実施した。結果は、多党制の政治体制を持つ日本社会においても「与党支持」と「野党支持」の陣営間に分極化が生じ、それを道徳的確信が増幅させることを明らかにした。同様の効果は、コロナ禍のもとでの感染予防マナーをめぐる感情的対立についても示された。一方、一般的・経済的システム正当化傾向や社会的支配志向性と政治的態度との関係を調整する要因として政治的洗練性の影響を明らかにした。また「自粛警察」をはじめとする、違反行為に対する感情的反応の規定要因として公正世界信念や権威主義、さらには「空気信仰」「事なかれ主義」などの文化的要因についても分析を行った。 - 道徳的属性に関するステレオタイプ形成過程を調べるために、累積的文化進化パラダイムを用いた実験研究を行った。結果は、道徳的ステレオタイプが世代から世代へと伝達される時に淘汰圧として働き、他者の外見と道徳属性との関連性知識が固定的・斉一的になっていくことを示した。一方、異なる独特的基盤特徴をもつ成員間での情報伝達が行われる場合に淘汰圧が弱まることも示された。 -「食の道徳化」と分断の実態を調査するために、代替肉に関する日英のキーワードを含むTwitterのデータを収集した。テキスト分析の結果、代替肉の味など知覚カテゴリーの出現頻度は減少傾向に、逆に道徳語の出現頻度は増加傾向にあり、日英共に代替肉に関する道徳的関心の高まりが捉えられた。さらに、代替肉を植物肉、培養肉、昆虫肉の3種類に分け、これらの製品の購買意欲と道徳の関係についてオンライン調査を行い、道徳的意識のあり方とエシカル消費と分断に関する示唆を得た。消費行動分野での道徳的価値をめぐる分断については、実験・調査による試行研究も並行して実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理学実験、社会調査、ソーシャルメディア分析の各研究班において、いずれもほぼ当初の見込みどおりに研究が進捗している。研究成果をすでに学会発表などによって発信し始めており、初年度としては順調な進展と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
- 道徳的信念に基づく対立および排斥傾向の、現象面での一般化を目指して、ささいな「迷惑行為」のレベルから社会的少数者への排除・攻撃行動などに至る、広範な領域へと射程の範囲を広げることを目指す。道徳的確信の効果に関する分析においても、感情的分極化だけでなく社会的距離や攻撃行動などへの波及過程について検証する。一方、それらの広範な現象に共通する心理的基礎過程に関するさらに詳細な分析のために、属性推論過程や非人間化と正当化の過程などについても、理論と実証の両面から精緻化を試みる。 - 累積的文化進化パラダイムによる実験研究では、次世代データをさらに蓄積し、道徳的基盤属性に関する文化の累積的進化過程をさらに詳細に解明する。また、コンピューター・シミュレーションを用いて、その形成過程とメカニズムを検討する。 - イデオロギーと政治的認知・行動の関連に関する検証では新たに、安全保障・経済・文化領域における日本の有権者の争点態度の違いを説明する上で有効な心理学的変数の特定を目指して、大規模調査研究を実施する。 - ソーシャル・メディア分析では引き続き、代替肉に関する忌避と道徳的分断の仕組みについて検討を進める。代替肉を植物肉、培養肉、昆虫肉の3種類に分け、これらの製品の購買意欲と道徳基盤や道徳的意識との関係性について、ソーシャルメディア分析とオンライン調査の手法によって検討を進める。 - これまで班に分かれて個別テーマのもとで行なってきた研究の成果をもとに、プロジェクト間での情報交換をさらに促進し、さらに分野横断的な視点の獲得、理論的枠組みの構築、そして実証研究の立案が可能となる環境を整備する。また、海外渡航の可能性が回復する機会を活用して、海外との共同研究や成果の公表への取り組みを続ける。
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